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のだめカンタービレ5

301 名前:「喪失」・267[sage]:2005/09/12(月) 01:30:24 ID:moD4yY5T
「ふぉぉぉぉ〜!!のだめ、こっから落ちたんデスか〜……。」

目の前には大きな大きな白樫の木。口をあんぐりと開けたまま、私は茫然とその木を見上げていた。

「オレもおまえが落ちた場所は、初めて見たけど……。」

千秋先輩が同じ様に、私の隣で木を見上げながら呟いた。
よく見ると白樫の枝が一箇所途中で裂けていて、中の生木の部分が剥き出しになっている。おそらくあそこから私は落下したのだろう。

「のだめ、本当によく無事でしたね〜……。」
「ああ……。っていうか、多分あの下の茂みが、落下時にクッション代わりになったから、おまえ大した怪我がなかったんだろな。
 ほら見ろよ。あそこが“のだめ型”になってンぞ!」
そう言って千秋先輩が指し示す先には、しっちゃかめっちゃかに私の身体の形に押し潰された、見るも無残なブッドレアの木があった。
「はぅぅぅ〜……。ごめんなサイ。」
私は“のだめ型”にくり貫かれてしまった可哀相なブッドレアの前にしゃがみ込むと、頭を下げて心からお詫びをした。

「そう言えば、山口先生から落木した場所をおまえに見せるなって言われてたけど……。まぁ、もう大丈夫だよな?」
「山口…センセ??」
「おまえの主治医の先生。すっげー世話になったンだぞ?」
「はぅっ!のだめ、この10日間、本当に全然記憶がないんですヨ!!」

今朝目が醒めたら、いつの間にか時間が一週間以上も経過していた。
私の中では、今日朝一の飛行機に乗って、福岡から横浜の三善さんちに行く筈だったのだけど……。
けれど実際には……私はすでに三善さんちにいるこの不可思議さ―――先輩から何度説明を聞いてもやっぱり理解できない。

「さっき先生に電話したら、検査したいから早く病院に来るようにってさ。
 おまえの記憶が戻ったって聞いて、先生すっげー驚いてたけどね。」
「そですか……。山口先生…山口先生…やっぱりのだめ、全然思い出せないデス……。」
「今度はおまえ、記憶を失ってた事を忘れるなんて、な……。」

千秋先輩は物憂げな表情で、遠くの方を見つめている。
私は立ち上がると先輩の隣に寄り添って、その眼差しと同じ方向に視線をやる。
私達の間を、一陣の朝の爽やかな風が通り抜けていった。
すると、流れてきた風にのってきた甘い芳香が、私の鼻腔をくすぐった。

「むむん!何かいい香りがしマス!!」
いい匂いがする方へ鼻をクンクンとさせながら、わたしは歩いて行く。
「おまえ…犬みたい。」
呆れた様に苦笑しながら、千秋先輩は私の後についてきた。
「あっ!!先輩!!この香り!!この花の香りですヨ!!」

私の目の前には、すっと伸びた花茎の先に、ピンクがかった紫色の小花が、密集して咲いている植物があった。
それらがあたり一面に群生していて、ガーデンを華やかに彩っている。

「綺麗なお花ですネ!すっごく甘くていい香りがしマス!」
「ああ。ヘリオトロープか……。ここ、千代さん自慢のハーブガーデンだからな。」
「ヘリオトロープ?」
「ん。別名香水草って言ってな。その名の通り、このバニラにも似た甘く強い芳香から、香水がとれるんだ。」
「ふぉぉぉぉ〜!!香水!千秋先輩って物知りですネー!薀蓄王?」
「いや、オレも千代さんから聞いた話。しかし…近くだと、胸につくほど甘ったるい香りだな。」
「千秋先輩!この甘い香りといい…花の色といい…このヘリオトロープってターニャ!って気がしまセン!?」
「タ、ターニャ!?」
先輩は私が言った言葉に一瞬目を丸くするが、次の瞬間大笑いした。

302 名前:「喪失」・268[sage]:2005/09/12(月) 01:31:39 ID:moD4yY5T
「はははははっ!おまえうまい事言うなー!確かにターニャ!!」
「でショー?でも、お菓子みたいに甘くて良い香りですよネ〜コレ。」
私は少し屈むと、可愛い小花に鼻をクンクンとさせながら、思いきりその匂いを吸い込んだ。
「ん〜〜!のだめ、このお花好きデス!」
そう言って私の真横で花を見ていた先輩に顔を向けると、いきなりちゅ!と唇を奪われた。
「!!」
「……何?」

一瞬先輩から何をされたのか分からなくて、私はとてもアホっぽい顔をしてしまった。
頭がキスされたのだと理解した瞬間、自分の間抜け顔がかぁぁぁ…と真っ赤になる。
とにかくそんな自分が情けなくて恥ずかしくて、私は白目で千秋先輩に猛抗議した。

「んもぅっ!先輩はいつもどうしてのだめに、いきなりちゅーするんデスかっ!!」
「え?」
「これからは、不意打ちちゅーは禁止!!デスっ!!のだめがイイって言わない限り、もうちゅーしちゃイケマセン!!」
「は?何で?」
「ムキャーー!!先輩は女心を全然分かっていまセン!!のだめ今、ものすご〜くお間抜けな顔してましたヨ!!」
私は先輩から顔をふんっと逸らすと、ふくれっ面でぼやいた。

「……女の子だったら可愛い顔をして、好きな人からちゅーされたいんデス。」
「よくわかんねーけど、要するにキスの前に予告すればいいんだろ?」
喉の奥をくつくつとならして、先輩は笑っていた。
「じゃあ、のだめ。今からキスしてもいい?」
「……はぅっ!?」
先輩は私の頬にそっと手を添えて自分の方へ向かすと、頤を軽く持って私の顔を上を向かせた。

「……じゃあ、今からキスするぞー?」
そう言って私の至近距離まで顔を寄せてくると、悪戯っ子なような表情をして楽しそうに笑っている。
「せ、先輩……チョ、チョト!!」
「了解とってキスしろって言ったの、おまえだろ?」
「そ、そですケド……。」
「ほら、早く可愛い顔しろよ。」
「ムキャーーーー!!」

先輩に促されるように瞼を閉じると、私はキスの形に唇を尖らせ、一生懸命可愛い顔をした(つもりだった)。
甘い吐息がふわっと顔にかかったと思うと、先輩の優しくて熱い口付けがゆっくりと降りてくる。

「…ん…んん……。」

上唇をやわやわと食まれながら、上の歯列を先輩の甘い舌でゆっくりとなぞられる。
私がおずおずと舌を出すと、先輩は待ってたとばかりにそれを絡めとリ、思いきり吸い込んだ。

朝から…それもこんな外で熱烈なちゅーをされた事のなかった私は、少し引き気味になってしまう。
けれども、先輩はそんな私にお構いなしに、上から覆いかぶさるようにして、どんどん深いキスをしてくる。
情けない事に私は途中から腰が抜けてしまい、先輩の腕で崩れ落ちる寸前だった身体を、慌てて支えてもらった。

303 名前:「喪失」・269[sage]:2005/09/12(月) 01:33:16 ID:moD4yY5T
「あへ〜〜……。」
「くっくっく。のだめ、腰抜かすほどよかったんだ?」
「ムキーーーー!!千秋先輩のスケベ!カズオ!!朝からこんなちゅーは、反則デス!!」
「何だよ。おまえの言うとおり、ちゃんと了解とってしただろ?」
「バっ…バカぁ!!!」
「ははは!」
私が真っ赤になって怒っても、先輩はどこ吹く風だった。

「じゃあこれからは、今からするのがフレンチかディープか、キスする前に予告するか?」
「むきゃーーーー!!えっち!」
「……だって了解とれって言ったのおま」
「もうっイイです!!も、もう……のだめの了解をとらないでいいデス…から。」
どう見てもこのちゅーの駆け引きは、先輩の勝ちだった。私は素直に降参した。

「ちゅーされる前にそんなコト言われたら、のだめの心臓が幾つあっても持ちませんヨ……。」
「……そう?」
私の頬っぺたにちゅ!と音をたててキスをすると、先輩は満足げにニヤリと笑った。
「……さ、もうそろそろみんなも帰って来る頃だし、病院に行く準備をしないと。オレも付き添うから。」

私達は自然に手を取り合うと、お互いにしっかりと指を絡めてつないだ。
そうして裏のハーブガーデンの小道を散策しながら、ゆっくりと玄関に向けて歩き出す。

「でものだめ……。何か損した気分デス。」
「損?」
「だって、松田さんと先輩の競演、すっごく楽しみにしてたのに……聴けなかった。」
「でもおまえ、ちゃんと聴いてンだぞ?」
「記憶になかったら、意味ないじゃないデスか……。」
私が頬を膨らませながら呟くと、何故か先輩が嬉しそうに一人でくすくす笑っている。
「千秋先輩?何が可笑しいんデスか?」
「いや…オレは得したなーと思って。」
「得?何がデスか?」
「だってほら…おまえの“初めて”、二回も貰っちゃったし?」
「ぎゃぼーーーーー!!」

その発言に私は手を離すと、先輩の前に仁王立ちになった。

304 名前:「喪失」・270[sage]:2005/09/12(月) 01:35:17 ID:moD4yY5T
「先輩のどスケベ!!えっち!!カズオーー!!」
「昨夜ののだめ、オレのベッドの中で初々しく恥らったりして可愛かったなー。そのくせすっげーやらしかったし?」
「ムキャーーーー!!」
先輩のセクハラな暴言に、私の頭はプツンと切れた。

「千秋先輩のエロ親父!!先輩って、ただの処女好きだったんデスね!!」
「っは?しょ、処女好き……?」
「だってそうでショ!!先輩、今までの彼女で、“初めて”じゃなかった人、いましたかっ!?」
「あ。」
「ムキーーーー!!やっぱりそうなんデスねっ!?とんだバージン・キラーの毒牙に、のだめはかかっちゃいましたヨ!!」
「バ、バ、バージン・キラー……?」
「千秋先輩は、のだめの“初めて”が目的だったんデスね!!」
「っな……!!ンな訳ないだろーがっ!!」
「どうせのだめは“初めて”でしたよっ!!経験豊富な千秋先輩と違って、のだめは先輩しかしりませんヨ!!」

怒りで全身を震わしながらそう絶叫すると、先輩は何とか私を宥めすかそうと思ったのか、私を抱きしめようと腕を伸ばした。
私はその手をバシッ!と、はたいた。

「痛っ!」
「のだめ、今は先輩しか知りませんけどっ!!この先はわからないんですからネっ!!」
「おい、こら、ちょっと待て!!それはどういう意味だーー?」
「それにっ!!自惚れないで下さいネ!!ちゅーまで自分がのだめの“初めて”の相手だと思ってるなら、大間違いですヨ!!」
「えっ!?な、何だって?」

私は先輩に『いーーっだ!』と言いながら舌を出すと、玄関に向かって猛スピードで走り出した。

「っちょ!のだめ!待てって!今の話、どーゆー事だよ!…って、おい聞けって!」
先輩が慌てて後ろから追いかけてくるが、私は振り向きもせずにそのまま走り続けた。
「おいっ!のだめっ!そんなに急に走ったらっ…身体に良くないだろーがっ!!!」

先輩が後ろで何やら大声で叫んでいたが、私は完全に無視をした。
私達はしばらくの間、三善さんちの広い庭中を、二人で追いかけごっこをして息を切らしていた。

**********

305 名前:「喪失」・271[sage]:2005/09/12(月) 01:35:53 ID:moD4yY5T
のだめの検査が終わるまで、オレは病院のロビーの一箇所にある待合室で、手持ち無沙汰で過ごしていた。
一応テレビの方へ視線は向けるが、朝のワイドショー関係の番組らしく、あまり興味もなかったので、ただぼんやりと見ていた。

     
     『のだめちゃんの記憶が戻ったーーー!?』

オレ達が走り回って玄関の前へ出ると、ちょうど竹叔父さんや母さん達がタクシーから降りる所だった。
どうやらみんなのだめの事が心配で、朝食も取らずに朝一でタクシーをかっ飛ばして帰って来たらしい。

     『本当なのっ?のだめちゃん!記憶が戻ったって!!』
     
     『えと、ハイ。そうみたいデス。』
     
     『うえーーーーん!!のだめちゃん!!良かったよぉーーーー!!』

由衣子が大声で泣きじゃくりながら、のだめにしがみついた。のだめは少し困ったような顔をして、由衣子を抱き締めていた。
竹叔父さんも母さんも面食らった顔をして、お互いを見合っていた。

     『その代わり、記憶がなかった間の事を忘れてんだ、こいつ。』
     
     『ええっ!?そうなの?のだめちゃん!怪我した事、忘れちゃったのぉーー??』
     
     『全然憶えていないんデス。朝起きたらのだめ…いつの間にか三善さんちに居たんデス。』

のだめは困惑した表情で、母さん達に状況を説明しているが、みんなあっけに取られたまま固まっていた。
オレも先程まで同じ気持ちだったから、母さん達の心理状態が手に取るように理解できた。

     『でも……。何で、のだめちゃんの記憶が、今朝になって急に戻ったのかしら?』

母さんの鋭い質問に、オレはドキリ!とし、冷や汗が背中をつつつ…とつたった。
“セックスしたら次の日、のだめの記憶が戻っていました。”とは、口が避けても……絶対に言えない。
流石に今、オレのベッドシーツやカバーを丸洗いしてるから、千代さんにバレてるのは間違いないけれど……。
でも自分の家族に…しかも年頃の俊彦や由衣子にそういうのが知られるのは、非常に気まずいし教育上良くない事は明らかだ。

     『きっと昨日の真兄ちゃまの公演を聴いたからじゃないっ!?きっとそうよっ!!』

その時、由衣子が上手い事を言ってくれた。オレは小さな彼女のその発言に感謝しつつ、加勢するように付け加えた。

     『思えば昨夜、のだめの体調が悪くなったのも、この予兆だったのかもしれないな。』
     
     『……のだめは憶えていないから、よ、よく分からないんですケド。』

のだめは顔を真っ赤にさせながら、俯いて呟いた。瞬間、オレはしまったと思ったが、もう後の祭りだった。
こいつの表情にピン!ときたのか、竹叔父さんと俊彦が真っ赤になって、オレ達から目を逸らした。
母さんといえば……物凄いジト目で、オレを凝視していた。

     『ま、そ、そういう訳だからっ!今から病院に、こいつの検査に行って来るから……。』
     
     『あ、そ、そうなんだ。気をつけてね、真兄。』
     
     『わ、私達は…まだ朝食をとっていないから……。久しぶりにみんなで朝ごはんをた、食べるか……。』
     
     『きゃーーー!由衣子、今日学校お休みして得しちゃった!のだめちゃんも記憶が戻ったし!!』

306 名前:「喪失」・272[sage]:2005/09/12(月) 01:36:27 ID:moD4yY5T
これから朝食にすると言う母さん達と玄関で別れ、オレ達は簡単に準備をすませると、病院に向けて三善の家を後にしたのだった。

―――あー……由衣子には気がつかれてないのが救いだけど……
―――竹叔父さんや母さん、それに俊彦にまで知られるとは…情けねー……。

オレが待合室のソファに座りながら、赤くなったり青くなったりと百面相していると、後ろから看護士に声を掛けられた。

「千秋さん。山口が、のだめちゃんの検査が済んだので診察室へお入り下さい、と申しておりますが。」
「あ、そうですか?すみません。今行きます。」

オレは慌てて腰をあげると、山口先生の診察室に向かった。
ドアを軽く三回ノックすると、『どうぞ、お入り下さい。』という、山口先生の穏やかな声が扉の向こうから聞こえた。

「おはようございます、山口先生。」
「おはようございます、千秋さん。公演が終わったばかりでお疲れの所、朝早くから、無理を言って申し訳ありませんでした。」
「いえ、そんな事は!こちらこそ、先生にはご迷惑をおかけしてばっかりで…本当に申し訳ありません。」
山口先生から『どうぞ、お掛け下さい。』と勧められた椅子の隣にはのだめが座っていて、オレをニコニコと笑いながら見上げていた。

「失礼します。のだめ、検査は無事に済んだのか?」
「ハイ!もう終わりましたヨ〜!」
オレ達の他愛もない会話を聞きながら、先生は机の上に置いてあった書類をまとめると、封筒の中に入れている。

「検査の結果、やはり今の所、のだめちゃんには特に異常等は見受けられませんでした。ご安心なさって下さい。」
「そうですか……。それは良かったです。先生には何とお礼を申したらいいか…本当にありがとうございます。
 ほら、のだめっ!おまえからもちゃんと先生にご挨拶しろっ!」
「あ、ありがとうございましタ。や、山口先生。」

のだめはおずおずと、お礼の言葉を先生に伝えている。
しかしのだめには山口先生との記憶がないから、正直何の事だかさっぱり分からない…と言うのが本音のようだった。

「ふふふ。いいんですよ。でもせっかく千秋さんがいらっしゃるから、ちょっと最後の確認をしてみましょうか?」
先生は肩を竦めながら微笑すると、のだめの方へ向き直った。
「最後の…確認デスか?」
「ええ。のだめちゃんリラックスして、今から私がする簡単な質問に答えて下さいね。」
「えと、ハイ!」
「ではまず、のだめちゃんは今、どちらに留学されていますか?」
「のだめですか?パリのコンセルヴァトワールって所ですヨ?」
「そこで、何の勉強をされているのですか?」
「のだめはピアノの勉強デス!」
「お一人で留学されているのですか?」
「いいえ、違いますよ〜!隣にいる、千秋先輩と一緒に、デス。ぎゃはぁっ!」
のだめは頬を紅潮させるともじもじして、照れたようにオレを見上げた。

「では、千秋さんとのだめさんのご関係を教えて下さいますか?」
「むきゃ!!のだめは千秋先輩の妻、デス!!先輩のかわゆ〜い愛妻デス!!」
「えっ!?妻っ!?」
「あの先生……こいつ、変態で妄想癖があるんで、適当に流してくれませんか……?」
オレがそう言うと、先生は吃驚した顔をして、次の瞬間盛大に笑い出した。
「あはははは!有り難うございました。のだめちゃん、もう結構ですよ?」
山口先生はクスクス笑いながら、先程から整理していた封筒をオレの前にすっと差し出した。

307 名前:「喪失」・273[sage]:2005/09/12(月) 01:37:02 ID:moD4yY5T
「これを……。一応のだめちゃんの今回の事故後の病状の経緯や、処方した薬等をフランス語で書いておきました。」
「えっ?」
「脳の障害は、時間が経過してから後遺症が現われる事も多いので、最低半年は様子を見て下さい。
 何かありましたらすぐに、病院で受診される事をお薦め致します。この書類はその時にでも御活用頂ければ……。」
「……すみません。山口先生、本当にありがとうございます。」
オレは先生に深く頭を下げながら、その封筒を受け取った。

「それより、今度は私がのだめちゃんに忘れられちゃうとは……。残念ですね。」
山口先生は悪戯っぽい眼差しで、のだめの顔を覗き込んだ。
「ぎゃぼっ!!ごめんなサイ!」
「いいんですよー?私はのだめちゃんの事、しっかり憶えていますからねー。
 あなたが私に弾いて下さったあのピアノ……一生忘れません。」
先生はそう言いながらのだめの手を取ると、大きな手で柔らかく包み込んでぎゅっと握った。
「本当にありがとうございました、のだめちゃん。」
「ふぉぉぉぉ〜!のだめ、先生にピアノを弾いてあげたんデスか?」
「ええ。とっても素敵なリストを、ね?」
先生はオレに思わせぶりに目配せした。

「むーーーー!のだめちっとも思いだせないですヨ……。リスト…リスト……。」
「はぁ……。ったく、日本に帰ってから、ずっとおまえに振り回されっぱなしだった……。最悪だ。」

オレがそうぼやくと、山口先生がのだめにヒソヒソ声で耳打ちしている。

「そうそう、のだめちゃん。のだめちゃんが記憶を失っている間ですけどね……?」
「むきゃ……?何デスか……?」
「千秋さんはそれはそれは、とろける様にのだめちゃんに甘々でしたよ〜?いつもそうなんですか?」
「ええええっ!?この隣に座っているカズオがデスかっ!?」
「おい、こら、誰がカズオだーーーー!!」
「ぎゃぼーーーー!!」

先生の目の前では、オレがのだめの頭をはたくと、のだめが白目になって抗議する…といういつものパターンが繰り広げられていた。

「またのだめ……記憶なくしちゃおっかな……。」
「あーーーー?おまえ、ふざけてンのか!!冗談じゃねぇっ!!絞め殺すぞっ!!」
「ぎゃぼーーーー!何ですカ!それがカズオだって言うんですヨ!!」
「どこがカズオ!!大体、おまえがややこしい事になるから、オレがどれだけ大変だったか!少しは反省しろっ!!」
「ムキーーーー!!先生は先輩はのだめに甘々だったって言うけど、ハッキリ言って、それは何かの勘違いですネ!!」
「何だとっ!?」
「ふふふ。お二人はいつもこうだったんですねー?」

山口先生はオレ達の会話を聞いて、お腹を抱えて笑っていた。
確かにこれは他人からみたら、いちゃついたカップルの痴話喧嘩みたいに、聞こえなくも無い……。

308 名前:「喪失」・274[sage]:2005/09/12(月) 01:37:54 ID:moD4yY5T
「すみません。最後までお騒がせして……。」
「いいんですよ?今まで通りが一番良いのですからねー?」
オレは恥ずかしいやらみっともないやらで、先生の前で大いに恐縮した。

「そういえば、千秋さんとのだめちゃんは、もう明日にはパリへ戻られるのですか?」
「はい。のだめの事を考えたら、もう少し日本でゆっくりした方が良いのですが……。僕も向こうで大事な仕事が控えていまして。」
「先生?先輩は飛行機が苦手なんデス。だから、長時間のフライトはのだめなしだと乗れない、甘えんぼさん♪なんデス!!」
「へー!そうなんですか、千秋さん!」
「……飛行機が苦手なのは本当ですが……。別に一人でも大丈夫です……。」
「うきゅきゅ〜♪またまた先輩、強がり言っちゃってー!!この前のだめにしがみついて、子犬のように震えてたのは誰ですカー?」
「ばっ…馬鹿野郎!!ンな事、先生に言うんじゃねーーーー!!」
「ぎゃぼーーーー!!」

結局オレ達の会話は最後までこんな調子で、先生を笑わせてばかりだった。

「先生、本当にお世話になりました。」
「あ、ありがとうございましタ。」
「いえ、私は医師として、職務を全うしただけの事です。お二人のこれからの益々のご活躍を、心からお祈り申し上げております。」

山口先生がオレに手を差し出してきたので、オレは先生の暖かい手をぎゅっと握り返した。
続いてのだめも、先生としっかりと握手をしている。

「では先生。失礼します。」
「山口先生。またね!」
「ええ、またね!のだめちゃん!」

優しく手を振って見送ってくれた先生を残して、オレ達は診察室を後にした。

*****

次の患者の準備をしながら、山口は看護士の持ってきたファイルを、診察順にきちんと並べていた。
ふと、窓の外へ視線をやると、千秋とのだめが、病院のカーポートをぐるっと回って、駅の方向へ歩いて行く後姿が見える。
二人の手はしっかりと…俗に言う“恋人つなぎ”をしていて、遠くから見ても分かる位、甘い恋人達の雰囲気を醸し出していた。

―――千秋さん、のだめちゃん。良かったですね……!

山口は心の中で呟いた。のだめに自分を忘れられた事は悲しかったが、二人のこんな睦まじい姿を見れたなら、それも本望だった。
彼は二人のシルエットに、自分自身の思い出を重ねつつ、医師としての充足感をひしひしと感じていた。

―――私はこれからも…脳神経外科医として職務を果たしていければ……!

新たな誓いを胸に、彼は受付の看護士に声を掛けた。

「次の患者さんを呼んで下さい。」

**********

309 名前:「喪失」・275[sage]:2005/09/12(月) 01:38:36 ID:moD4yY5T
千秋はのんびりと歩いていたつもりだったが、駅まであっと言う間に着いてしまった。
駅のターミナルを抜けて改札の前に来ると、混雑する切符売り場から少し外れた所で、二人は立ち止まった。

「千秋先輩はこれからどうするんデスかー?」
「オレはこれから、R☆Sの公演終了後のミーティングがあって…それから夜は打ち上げだな。」
「ふぉぉぉぉ〜!!打ち上げ!!」
「明日パリに帰るって言ったら、オレのお別れ会も兼ねて盛大にやるって峰が張り切ってな。お別れ会って……ったく子供かよ。」
「えーーーー!!いいじゃないですか、楽しそうで!!峰くん達、きっと寂しいんですヨ!!」
「……おまえはこれからどうすンの?」
千秋が訊ねると、のだめは思案げな表情をした。

「むー!のだめ、日本に帰る前に、かおりちゃんに遊びに来てネ!って言われてたんですケド。」
「かおりさんに?」
「マラドナコンクルでのだめが借りたかおりちゃんのドレス、もう着ないからのだめにくれるらしんですヨ〜。」
「うっ!……あのヴィヴィアン・リーのかっ!?」
「いえ、アレじゃなくて、その前の予選で着たのですケド?」
「……あ、そ。」
「でも明日パリに帰るのに、荷造りとか色々準備しなくちゃいけないから……。
 のだめ、今回はかおりちゃんち行くの止めて、このまま三善さんのお家に帰りマス。」
のだめはそう言うと、目的地までの切符を買おうと案内板をじっと見上げている。

「先輩は東京の方へ行くんでショ?のだめとは反対方向だから、ここでお別れですネ?」
「あ、ああ。そうだな……。」
「のだめ、切符買ってきますネ!」
のだめは人ごみの中を歩いて行こうとしたが、ある事に気がついて歩みを止めた。
「先輩。手を離してくれないと、のだめ、切符買えないデス!!」
「あ、ああ……。」
千秋は反射的にそう言うが、相変わらずのだめの指にしっかりと自分の指を絡め、ぎゅっと握り締めたまま、一向に離そうとしない。
「千秋先輩?」
「え……?」
「んもう!だから手!ちゃんと聞いてマスか〜?のだめの話!」
「ああ、そっか……。」
千秋は口篭るがやはり手を離そうとしないので、さすがののだめも、千秋の様子を不思議に思った。
「どうしたんデスか?千秋先輩?」
「うん……。」
のだめは千秋を次の言葉を、辛抱強く待っていた。

「あのさ……。お前も一緒に来ない?」
「一緒にって……。R☆Sのミーティングと打ち上げにデスか?」
「うん。」
「ダメですヨー!のだめ、全然関係ないんですから!変に思われちゃいますヨ?」
「そ、そうだよな……。」
千秋はそれだけ言うと、気まずそうにのだめから顔を背けた。

「千秋先輩?本当にどうしちゃたんデスか?」
「……。」
「のだめに何か話したいことでも?」
「……いや、そーゆー訳じゃないンだけど……。」
「けど?」
「何かここで手を離したら…別れたら…またオレの事を忘れてしまったおまえに戻ってしまいそうで、怖くて……。」
千秋は耳まで真っ赤になって、俯いた。
「んもー!そんなコト、ある訳ないじゃないですカー!」
のだめも真っ赤になって、千秋の胸を甘えるようにトンと押す。

310 名前:「喪失」・276[sage]:2005/09/12(月) 01:39:35 ID:moD4yY5T
「千秋先輩は、時々本当に甘えんぼさんですヨ?」
「うるせー……!」
「大丈夫です。のだめ、もう千秋先輩の事、忘れたりしませんから……。」
「……本当?」
「勿論デス!」
「うん……。」
ようやく千秋は安心したのか、繋いでいたのだめの手をゆっくりと離した。

「先輩!今日は帰って来るのは何時頃になりますかー?」
「なるべく早く帰るよ。明日のフライト、早い時間だし……。11時頃までには戻れると思う。」
「そですかー!じゃあーのだめ、先輩が帰って来るまで、寝ないで待ってますネ?」
「うん。待ってろ、ちゃんと……。」

のだめが記憶をなくしてから、千秋はずっと『オレの帰りを待っていないで、早く寝ろ。』とのだめにいい続けていた。
だから今日初めて、その彼女に『待ってろ。』といえた事が、彼にはとても嬉しかった。

「先輩!また後で!」
「ああ。気をつけて帰れよ。」
「先輩こそ飲み過ぎないで下さいヨ〜?あっ!後、可愛いオケのコと、浮気は絶対にダメですからネ!!」
「……何言ってんだ。」
「それじゃー!先輩またねー!」
「ん!」

改札の中で二人は別れると、
のだめは三善の家に帰る為に左の階段を、千秋は東京方面の右の階段を降りて行った。
のだめがホームに降りると、ちょうど線路を挟んで向こう側にに、千秋が立っているのに気がついた。

「千秋先輩!!」
そうのだめが声を掛けると、千秋が“何だ?”という表情をしてこちらを見た。

     《まもなく、一番線に下り電車がまいります。白線の内側に下がって―――》

「大好きっ!!」

のだめがそう叫んで千秋が真っ赤になった瞬間、線路に電車が猛スピードで入ってきた。
のだめはすぐに電車に乗り込んで、反対側の扉へ行って向こうのホームを見る。
すると千秋がゆでだこの様に真っ赤になりながらも、怒った顔をしてこっちを睨んでいた。


「(あ・と・で・ネ!)」

少年の様な千秋の可愛い仕草に笑いを堪えながら、のだめが口だけでゆっくりと伝えると、
彼も恥ずかしそうに周りを見回しながら(あ・と・で!)と口を動かした。

そしてプシューという音と同時に扉が閉まり、電車がゆっくりと走り出す。
のだめが千秋にバイバイと手を振ると、彼は目を逸らしながらも、手を上げずに小さく二回ほどバイバイと手を振った。
照れ屋の彼なりの精一杯の愛情表現に、のだめは幸福な気持ちになった。

そうしてのだめは、そんな千秋の姿が見えなくなるまで、ずっと窓の外を見続けていた。

**********

311 名前:「喪失」・277[sage]:2005/09/12(月) 01:40:11 ID:moD4yY5T
最終ミーティングといっても、実際は打ち上げの前の軽い反省会という事だったから、
千秋はリラックスした気分で、用意されたミーティング・ルームに入った。

「よー千秋!」
部屋に入るとすぐに、彼は峰達から声を掛けられた。
「みんな、お疲れ。昨日は慰労パーティー、欠席してしまって申し訳なかった……。」
「いいっていいってー!その代わり、松田さん大活躍だったし!」
「あの千秋さま……。のだめちゃんは大丈夫だったんですか?」
「……ああ、大丈夫。ありがとう、薫にも色々世話になったな。」
「そ、そんな!!!(きゅーーーん……。)」←トキメキ中。
「けど、そういえば……人少なくないか?」

千秋はそう言いながら、辺りを見回した。
実際、見知った峰と鈴木姉妹意外は、ほかに数名程しか部屋の中には居なかった。

「ああ、ごめん。今日の最終ミーティング、無くなったんだ。」
「え?そうだったのか?何で?」
「千秋にはメールで連絡しておいたンだけど……。おまえ、見てなかったんだな。
 実は松田さんが今朝ダウンしちゃって、今、緊急入院してンだ。」
「えっ!?松田さんがっ!?」
千秋は峰の発言に動揺した。

「なんか過労らしいぜー。あの松田さんが過労とはなー。クールで飄々とした松田さんの態度で気がつきにくいけどさー、
 おまえに負けないよう、あの人はあの人なりに、色々と気苦労があったんじゃないかー?」
「そうだったのか……。オレ、昨日の慰労会も、松田さん一人に押し付けてしまって……。」
「でも入院って言っても、今日一日だけで、用心の為らしいから。
 さっき高橋くんが見舞いに行ったらしいけど、松田さん点滴を打って貰ったら、もうピンピンしてたらしいぜー?」
「え、そうなのか?」
「早速、可愛いナースの女の子つかまえて、例のキラースマイルを炸裂させてたらしい。高橋くんが怒りながらそう言ってた。」
千秋はひとまず松田の病状があまり深刻な状態でなかった事に、ホッと胸を撫で下ろした。

「わたし達、今日本当は松田さんに相談したい事があったんだけど……。」
「うん、そうなの……。」
「え?何だー?何を相談したかったんだー?」
「実は二人で新しいCDを今度出すことになって…その推薦文を松田さんに書いて貰えたらと思って……。」
「松田さんに頼めば、引き受けてくれるんじゃないか?」
「そうだそうだ!あの人なら萌と薫の頼みなら断るわけねぇ!」
「そうかな?そうだといいんだけど……。」
鈴木姉妹は峰と千秋の言葉に、嬉しそうに笑いあった。

「ま、そういう事で、松田さんいないから、してもしょうがない最終ミーティングはやめたって訳だ。
 おまえだけなら、次の打ち上げでそういった話も出来るだろ?だからみんなには、直接打ち上げ会場に行って貰ってる。」
「黒木君とか、真澄とかもか?」
「ああ。真澄ちゃんは今回のおまえのお別れ会の幹事だからな。ちなみに黒木君はその手伝いで。
 真澄ちゃん、すっげー張り切って行ったぜー?っよ!相変わらず愛されてるな!」
「……勘弁してくれ。」

千秋が嘆息しながらぼやくと、峰と鈴木姉妹は顔を見合わせて、可笑しそうに笑った。

*****

312 名前:「喪失」・278[sage]:2005/09/12(月) 01:40:49 ID:moD4yY5T
「えー、今回、ここにいる初代指揮者の千秋真一凱旋公演と銘打ったこの二日間、みんな本当にお疲れーー!!
 なんとっ!!早速アンコール公演の話がきてて、まさに大成功といっても過言ではないぜーー!!」

峰の暑苦しい冒頭の挨拶が延々と続き、オケのメンバーはビール片手に、じりじりとしていた。

「ちょっと龍ちゃん!!もうあんたの話はいいから、今日の主賓に挨拶させなさいヨっ!」
真澄が峰に突っ込むと、場の全員がそう思っていたらしく、大きな笑い声が起こった。
「っちぇ!なんだよ!わーったよ!ほら、千秋!ご指名だぞ!」
彼は拗ねたように席に下がると、一番手前の中央にいた千秋がゆっくりと立ち上がった。

「ビールの泡が消えかかってるので、なるべく手短に。みんな本当にお疲れ様、そしてありがとう。
 いい公演が出来てオレもすっげー嬉しい。
 次にこういう機会があったなら、またみんなと、楽しい音楽の時間を過ごせたらいいな…と思う。
 では、R☆Sの公演の大成功を記念して、乾杯!!」
「乾ーー杯ーー!!」
「かんぱーーーーい!!」

あちらこちらからグラスを合わせる音が鳴り響き、打ち上げは和やかなムードで始まった。

千秋は、周りをオケの可愛い女子に囲まれて、音楽談義に花を咲かせつつ、端正な表情で微笑しながらビールを飲んでいた。
指揮をしている間は鬼・千秋でも、こういう時の彼はいつも、まさに“王子様”だ。

「くそーーーー!!千秋のヤツ、相変わらずモテモテだなっ!」
峰がムカついた表情を隠しもせず、憎憎しげに吐き捨てると、黒木が宥めるように彼の肩を叩いた。
「もう結構時間経ったし……。そろそろ千秋君、こっちの席にも来て貰う?」
「そうよっ!ここで待ってたら、いつまで経ってもあのコ達、千秋さまを離しゃしないんだからっ!」
そう言いながら真澄は串揚げに、がしっと噛み付いた。
「じゃーわたし達が呼んでくるねーー!!」
「行ってきまーーす!!」
萌と薫は立ち上がると、いそいそと千秋を囲んでる女の集団の中に入って行く。
「おい、あいつら!なんか待ってましたとばかりじゃねーか?」
「仕方ないよ。千秋君、人気者だし。」
「キーーーー!萌っ!薫っ!行ったきり帰って来なかったら承知しないわよーー!!」

暫くすると、鈴木姉妹はちゃんと千秋を連れて、峰達のテーブルに戻って来た。

「みんな、お疲れ様。」
「……おい、千秋。オレ達の事なんか忘れて、おまえ鼻の下伸ばしてただろっ!」
「はぁ!?」
「まぁまぁ……。千秋君、本当にお疲れ様だったね!」
「お疲れ様です!!千秋さま!!」
「ああ、みんなも本当にお疲れー!」
そう言って6人はお互いにグラスにお酒を注ぎあうと、乾杯をした。

「しかし……。色々あったが、とにかく無事に終わって良かったぜ……。」
「うん。本当にいい演奏会だったね。ボクもすごく楽しかった。」
「千秋さまは、明日パリに帰られるんですかー?」
薫が千秋の空いたグラスに、ビールを注ぎながら訊ねた。

313 名前:「喪失」・279[sage]:2005/09/12(月) 01:41:22 ID:moD4yY5T
「ああ。明日発つ。」
「何時のフライトなんですか?」
「えっと、確か11時20分…だったかな?」
「うわぁっ!はえーな!でもオレ、明日空港まで、見送りに行くからなー?」
「いい……。来ないでくれ……。」
「何、遠慮して照れてんだよっ!親友っ!!」

峰はそう言うと、千秋の背中をバンバンッ!と叩いた。
彼はもう相当酔っ払っていた為、いつもよりも凄い力で背中を叩かれた千秋は、思わず咳き込んだ。

「げほっ!がほっ……!」
「そういえば千秋さま……あの…のだめも一緒に…明日パリに帰るんですか?」
真澄が窺うような瞳をしながら、千秋に訊ねた。
「え?のだめ?ああ、あいつも一緒に帰る。」
「そっかー。のだめちゃん、やっぱりパリへ帰るんだー……。」
真澄と鈴木姉妹がしんみりとした表情で俯きあっているのを見て、千秋は重要な事を皆に伝え忘れていた事に気がついた。

「あっ!みんなには言い忘れてたけど、あいつ、記憶が戻ったんだ。」
「えええええーーーー!!」
「っはぁ!?のだめがっ!?何だそりゃーーーー!!」
千秋以外の全員が白目をむいて、あっけにとられた表情のまま、茫然としていた。

「ごめん。うっかり言うの忘れてた。」
「そっかー。恵ちゃん、記憶が戻ったんだー……。よかったね、千秋君……。」
一番最初にこの状況から回復した黒木が、千秋に笑顔を向けた。
「いつ、のだめの記憶が戻ったんだ?」
「えっと、それが今朝なんだ。朝起きたら、あいつの記憶が戻ってて……。
 でもその代わり、記憶がなかった間の事を、今度は忘れてるンだけど。」
「えっ!?じゃあのだめちゃん、木から落ちた事も憶えていないんですか?」
「うん、そうなんだ。あいつの中じゃ、自分はまだ福岡の実家にいると思ってたらしいから。」
「キーーーー!!!あのひょっとこバカ娘ぇっ!!心配して損したわよーーーー!!」
「真澄ちゃん、どう、どう!」

例の如くハンカチを食いしばる真澄を、左右から鈴木姉妹が宥めていた。
その時、峰がすくっと立ち上がると、千秋の腕を掴んで同じように立ち上がらせた。

「峰?……な、何?」
「バカヤローーーー!!おまえ、今すぐ帰れ!!」
「はぁ?」
「のだめ、記憶が今日戻ったばかりなんだろっ!?戻ったとはいえ、色々不安なんじゃないか?
 それなのに、おまえがついていてやんなくてどうする!」
「そうだね。峰君の言う通りかも……。今日はもう早く帰って、恵ちゃんの側にいてあげなよ、千秋君。」
黒木は冷酒の入ったお猪口をぐいっと飲みほすと、千秋をじっと見詰めた。

―――く、黒木君……?またその目……?

千秋は内心動揺しながらも、峰達の好意に甘える事にした。

314 名前:「喪失」・280[sage]:2005/09/12(月) 01:41:52 ID:moD4yY5T
「いいのか?オレが先に帰っちゃって……。」
「大丈夫!大丈夫!みんなもう酔っ払ってるし、気がつかねーよ。」

千秋を店の入り口まで見送りに出た峰達に、彼は申し訳なさそうに振り向いた。

「本当にごめん。じゃ、オレ先に帰らせて貰うな。」
「のだめちゃんによろしく言っておいて下さい!」
「恵ちゃんに、またパリで会おうねって、伝えておいてね、千秋君。」
「千秋さまにこれ以上迷惑かけないようにって、私が怒ってたって、あのひょっとこバカ娘にきつく言ってやって下さい。」
「ははは。わかった、伝えておくよ。みんな本当にありがとうな。」
「あ、千秋!!」

帰りかかっていた彼を引き止めると、峰がニヤニヤして囁いた。

「本当にのだめの記憶が戻ってよかったな!」
「ああ、うん。峰にも色々迷惑かけて、すまなかったな。」
「そんなのいいって!あのさ、のだめの記憶が戻って……ほら、久しぶりに積もる話とかあるだろ?
 今まで出来なかった訳だし!」
「え?ああ…そうかもな。」
「それにさ……色々と…たまってるモンもあるだろ?たまってるモンがっ!!」
「っは!?」
「早くのだめにあって、全部スッキリしてこいよーーーー!!」
「っな、何言ってんだ!!このバカっ!!」
「ひひひひひっ!!じゃまた明日、空港でなーー!!親友!!」

自分の発言で千秋が顔を真っ赤にさせたのを見て、峰は大いに満足した。
そしてニヤニヤ顔のまま、バンバンッ!と彼の背中を叩くと、後ろにいた黒木達と店の中へ戻って行った。

―――ったく!峰のヤツ……。

千秋はブツブツと呟くが、内心峰の目の付け所の鋭さに舌を巻いていた。

―――っていうか…もうすでに昨日、スッキリしたんだが……。

千秋は自分の不埒な思考に赤面しながらも、のだめの待つ横浜へ帰路を急いだ。

**********

315 名前:「喪失」・281[sage]:2005/09/12(月) 01:42:25 ID:moD4yY5T
由衣子は自分の部屋から出ると、スタスタと客間の方に向かって歩いていた。

     『のだめちゃん!今日は最後のお風呂だし、一緒に入ろうね!』

彼女は先程、夕食の時にのだめと交わした会話を思い出していた。
 
     『昨日は一緒にお風呂に入れなかったから、のだめちゃんの背中に湿布も貼ってあげられなかったし。
      今日はちゃんと由衣子が貼ってあげるからねー?』 
     
     『えええええっ!?の、のだめ!一人でお風呂に入れますヨ!湿布も大丈夫です!』
     
     『え!?一人で平気なの?』
     
     『ほ、ほら!明日からもうパリで一人でしなくちゃいけませんから!今日から練習しておきマス!』
     
     『そう……?それならいいけどぉー?』

真っ赤な顔をして、何故か一人でお風呂に入ると、言い張るのだめが少しおかしいと思ったが……
由衣子はそんな自分の考えを頭をブンブンと振って打ち消しながら、廊下を歩いていた。
すると、客間に続く廊下の中程まで来た所で、右手前の扉がバーン!と勢いよく開いた。

「と、俊兄っ!?」
「あ、由、由衣子!」

俊彦が自分の部屋から出てくると、由衣子の腕を掴んで彼女を引き止めた。

「なぁに?俊兄!どぉ〜したの?」
「いや、その、た、たまにはボクと、い、一緒に寝ないか?」
「えぇーっ!?」

由衣子が俊彦の発言に面食らっていると、斜め先にある征子の部屋のドアも急に開いた。

「由衣子ちゃん!たまには私と一緒に寝な―――っあら!」

征子と俊彦と由衣子の3人は、お互い気まずそうに廊下で立ちつくしていた。

316 名前:「喪失」・282[sage]:2005/09/12(月) 01:43:58 ID:moD4yY5T
「……もう征子ママも、俊兄も、心配し過ぎ!!由衣子だってそんなに子供じゃないよっ!!
 今日はのだめちゃんと一緒に寝ないもん!」
「やだ、由衣子ちゃん。そういう訳じゃないのよ……?ただ本当に、たまには私と一緒に寝ないかな〜?って思って!」
「そうだよ。ボ、ボクもたまには……。」
「ウソ!!二人ともどうしてすぐ分かるウソをつくの?由衣子だってちゃんと分かるんだから!
 明日、のだめちゃん達は朝早いし、由衣子は学校だから、お別れの挨拶でちょっとお話しに行くだけだよ?」
「あら、そうだったの?」
「何だ…ははっ……。」
征子と俊彦は、先回り過ぎた自分達の思考を、気恥ずかしく思った。

「そういえば真兄は?もう10時半過ぎだけど……。まだ、帰ってきてないよね?」
「9時過ぎに千代さんに真一から電話があって、今から帰るって言ってたらしいけど。」
「じゃあ、もうすぐ真兄ちゃま帰って来るねー!由衣子、その前にのだめちゃんとお話してこよっと!」

由衣子は軽やかな足取りで、客間に向けて再び歩き出した。
そんな彼女の後姿を見ながら征子は照れ笑いをし、俊彦は頭を掻いた。

「由衣子も…その…気がついてるのかな?」
「そうだとは思わないけれど……。きっと由衣子ちゃん、真一に気を遣ってるのね?」
「そっか……。」

二人で肩を竦めて笑いあうと、征子と俊彦も自分の部屋へ戻った。

*****

317 名前:「喪失」・283[sage]:2005/09/12(月) 01:44:33 ID:moD4yY5T
トントントン……

「ハーーイ!」
客間のドアがガチャリと開いて、中からのだめがひょこっと顔を出した。
「あ、由衣子ちゃん!どしたんですか〜?」
「のだめちゃん達、明日パリへ帰っちゃうから、ちょっとお話に来たの。入ってもいい?」
「もちろんですヨ〜!ささ、どぞ〜!」
のだめは由衣子を部屋へ招き入れると、ソファに座るように勧めた。

「ごめんなサイ!いま荷造りの最中で、ちょっと部屋が散らかっていて……。」

のだめはスーツケースの中に、沢山の荷物を小さく畳んで押し込んでいる最中だった。
あちらこちらに、メッシュ製のポーチや洋服の山が散乱している。

「明日早い時間のフライトだったもんねー!のだめちゃん、大変だねー!」
「そなんですヨ〜!でも、もう後はこれを中に押し込むだけですからネ!何とか荷造り終わりそうでホッとしました!」

のだめは暢気にあはは〜と笑っていた。

「のだめちゃん、ありがとうね。」
「ハイ?」
「由衣子がお願いした事、守ってくれて……。」
「お願いした事?」
由衣子は俯いて呟いた。

「早く真兄ちゃまのこと、思い出してあげてね…って由衣子、のだめちゃんにお願いしたんだ……。」
「そだったんですか……。」
のだめは俯いたままの由衣子の前にひざまずくと、両手を柔らかく包み込んで顔を覗き込んだ。
「のだめ、由衣子ちゃんにも色々心配をかけちゃって……。ごめんなサイ。」
「ううん!元はと言えば、由衣子がいけないんだもん!のだめちゃんが木から落ちたのは、由衣子のせいだから!」
「違いますヨ〜?のだめもいけなかったんですから。ね、由衣子ちゃん、この話は終わったコトですから、もうやめましょう!」

由衣子のふわふわな頬を、のだめがむにっと押すと、ようやく彼女は顔を綻ばせた。

318 名前:「喪失」・284[sage]:2005/09/12(月) 01:45:05 ID:moD4yY5T
「由衣子は学校だし、のだめちゃんは朝早いから……。明日、挨拶できないと思うから今しておくね!
 気をつけてね、のだめちゃん!パリでピアノの勉強、頑張ってね!」
「ハイ!のだめ、頑張りマス!ありがとうございマス!由衣子ちゃんもお休みになったら、パリに遊びに来てくださいネ〜。」
「きゃー!本当?夏休みになったら、パリに行ってもいい?のだめちゃん、一緒に遊んでくれる?」
「もちろんですヨ〜!一緒に遊びましょうネ!」

由衣子が嬉しそうに抱きついてきたので、のだめはその華奢な身体を優しく抱きしめた。
どこか甘い香りのする小さな彼女を抱きしめながら、のだめは幸福な気分になっていた。

「ねーのだめちゃん!お願いがあるんだけど!」
「ハイ?何ですか?」
のだめの胸から身体を起しながら由衣子は言った。

「あの机の上にある、トイピアノ。由衣子にくれない?」
「えっ?あのおもちゃのピアノですか?」
「うん!」
「あれ、のだめのだったんデスかー!てっきり三善さんちのアンティークだとばかり……。」
「あのトイピアノ、入院中ののだめちゃんが退屈しないようにって、真兄ちゃまが買ってきたの。
 でも由衣子も、ずっとアレ可愛いなーって思ってて……ダメ?」
「いいですヨ!由衣子ちゃんに可愛がってもらえるなら、ピアノも喜びマス!」
のだめは机からトイピアノを持ってくると、由衣子に手渡した。

「ハイ!どぞ〜!」
「わぁぁ〜!本当にありがとう!のだめちゃん!」
「いえ〜!ソレ、パリにもって帰るのはチョト大変そうですしね。由衣子ちゃんが貰ってくれるなら、のだめも助かりマス。」
トイピアノを小さな両腕で大事そうに抱きかかえた由衣子を見て、のだめは嬉しそうに目を細めた。
「もうそろそろ……。由衣子部屋に戻るね?」
「あ、そですか〜?」
「のだめちゃん、本当にトイピアノありがとう!大事にするね!それじゃあーおやすみなさい!」
「おやすみなさい〜由衣子ちゃん!」
のだめは客間のドアまで由衣子を見送った。

由衣子は再び二階の廊下をスタスタと歩いていた。
先程と違うのは、胸にはのだめから貰った、アンティークのトイピアノを抱えている事だ。

「……のだめちゃんを譲ってあげたんだから、これくらいはイイよね!真兄ちゃま!」

由衣子はそう一人ごちると、自分の部屋へ戻っていった。

**********

319 名前:「喪失」・285[sage]:2005/09/12(月) 01:45:41 ID:moD4yY5T
高速道路で事故があった影響で、思った以上に三善家に帰り着くのが遅くなってしまった。

「ただいまー。」
いつもより少し大きい声で自分の帰宅を知らせると、リビングからのだめが飛び出してきた。
「おかえりなさーーーい!!」
のだめは昨日と同じ、鈴木姉妹が選んだと思われる、あのリネンの夜着を身に纏っていた。
「た、ただいま……。おまえ、まだ起きてたのか?」
「起きてマスよ!んもー!ちゃんと起きて待ってろ、ってさっき言ったのは誰ですか!」
「あ…そっか。」
オレがそのまま二階に向かって階段を上り始めると、のだめも後ろからついてくる。

「打ち上げはどうでしたか?」
「うん。楽しかったよ。」
「峰くん達、淋しがってませんでしたかー?」
「いや、明日帰国なんだから早く帰れ、って帰らされた。」
「え、そうだったんデスか?」
「うん……。」

そうして二階の階段を上りきった所で、オレ達はいったん立ち止まった。

「オレ、風呂入って寝るよ。疲れたし。」
「のだめももう寝ます。」
「明日早いからな。寝坊するなよ?」
「わかってマス!」
「じゃあな。また明日。おやすみ。」
「ハイ!おやすみなさい!」

のだめは右の客間へつながる廊下を、オレは自室のある左側の廊下を、それぞれ歩き出した。

部屋に戻って荷物を置くと、オレはすぐに風呂に入った。
昨日はシャワーで済ませたから、オレは久しぶりにゆっくりと湯船に浸かって、のんびりと長風呂を満喫した。
風呂からあがると、いつも通り缶ビールを片手に、再び自室へ戻る。

―――そういえばオレも荷造り…まだだった。

三善家にあるものも多かったので、オレの荷物は大した量ではなかった。
ビールを飲みながら、手際よく荷物をパッキングし、さっさと荷造りを済ませた。
2缶目のビールを取りに行こうかと思うが、明日のフライトの事を考えてやめておいた。
そしてオレは素直にベットにもぐりこむ。時間は深夜0時をちょっとすぎた頃―――いつもより早めの就寝だった。

320 名前:「喪失」・286[sage]:2005/09/12(月) 01:47:54 ID:moD4yY5T

…………

―――ね、寝むれねぇっ!!

オレはベットの中で、ぐるぐると悶絶していた。
よく考えたら、昨夜このベッドで、オレはあんなに激しくのだめを抱いたのだ。
目を瞑れば昨夜の…この場所で可愛く乱れるのだめの痴態がまざまざと思い浮かんできて、オレはすぐにハッと目を開けた。

―――オレは…発情期のガキかよっ……。

シーツもカバーも、洗っているはずだからそんな訳はないのだが……
何故かベッドの中にあいつの甘い残り香が漂っているような気がして、とてもじゃないけど眠れない。
かといって、ソファで眠る気もしなくて、まさに自分で自分の精神状態がよくわからない。
とにかく壁に頭を打ち付けたくなるような、そんな煩悩にオレは悩まされていた。

―――くそっ!こうなったら……。

オレはベッドを抜け出すと、自分の部屋を出た。
客間はオレの部屋からだと一番遠くにあるから、オレは足音を立てないように静かに廊下を辿っていく。
しかし中程まで来た所で、ある事に思い当たり、ピタリと足を止めた。

―――待てよ……。あいつ、いつも由衣子と寝てたよな……?もしかして、今行ったら……。

由衣子と鉢合わせ…それだけは絶対に避けたい…避けたいが、このまま自分の部屋に引き返せるか…というとそれもできない。
オレは廊下の真ん中で、一人で悶々とした結果、意を決して再び客間へ歩みを進めた。

―――もういい!由衣子がいてもいなくても……オレはのだめの顔が見たいんだ!

よく分からない開き直りをして、オレはのだめの部屋へ向かった。

*****

321 名前:「喪失」・287[sage]:2005/09/12(月) 01:50:16 ID:moD4yY5T
「ふぅー!荷造りも何とか終わったし、かおりちゃんへのお詫びのお手紙も書いたし、そろそろ寝ますか!」

便箋を封筒の中に入れ、プリごろ太のシールを貼ると、ライティングデスクをパタンと閉じ、私は椅子の上で大きく伸びをした。
時計を見ると、もう12時を過ぎている。

「あっ!もうこんな時間デス!明日早いのに、のだめ寝なくちゃ!」

私は慌ててベッドサイドのランプをつけると、部屋の照明を落とそうと、客間の入り口のスイッチまで歩いていった。

トントントン…

まさにスイッチを消そうとしたその瞬間、控えめに小さくドアをノックする音がした。

―――え?誰だろう……?由衣子ちゃん?

すぐにドアを内側に引いて廊下を見ると、そこには千秋先輩が吃驚した顔で立っていた。

「わっ……!何でそんなに早い……!」
「あれー?千秋先輩?どしたんですか〜?」
「いや…その……。なぁ、ちょっといいか?」
「……?いいですケド?どぞ〜!」
先輩は真っ赤な顔をして部屋の中に入ってくると、辺りをキョロキョロ見回していた。

「のだめの部屋が、どうかしましたか?」
「い、いや!おまえ…一人?」
「当たり前じゃないですか!のだめ以外に、誰がいるっていうんデスか!」
「あ、そ、そうだよな……。」
そうどもりながら先輩は、ソファに腰をかけた。
「おまえ、荷造りとかは終わったのか?」
「ハイ!さっきようやく全部終わって、今から寝る所でしタ。」
「そっか……。」
そう言うと千秋先輩は、何故か黙り込んでしまった。

「先輩?どうしたんですか?何かのだめに話があるんじゃないんデスかー?」
「え、あ…うん。」
先輩は私から気まずそうに顔を逸らしている。どうやらそれは先輩にとって、何か話しにくい事の様だ。
「先輩?」
「あー、うん。その…だな。」
「はい?」
「今夜オレここで…おまえと一緒に寝てもいいか?」
「ぎゃぼっ!?」
先輩は真っ赤な顔をして、潤んだ瞳で私をじっと見つめていた。

「ダメです!そんなのダメに決まってるじゃないデスかっ!」
「何で?」
「だ、だ、だって……!!ここは先輩のお母さんの実家ですヨ?俊彦くんや由衣子ちゃんだっているのに!!」
「別にオレ、そういう事はしないよ。……ただ、一緒に寝たいだけ。」
「えっちな真一くんが、えっちなしで同じベッドで寝る訳ないじゃないですかーーー!!
「……おい、それは言い過ぎだろ。」
先輩はハァと溜め息をつくと、急に立ち上がった。

322 名前:「喪失」・288[sage]:2005/09/12(月) 01:51:13 ID:moD4yY5T
「な、何デスか?」
「昨日の夜、オレ達一緒に過ごしただろ?だからもう……今夜も離れたくない。」
「へ!?」
そう思う間もなく、私は先輩にお姫様抱っこされた。
「ぎゃ、ぎゃぼ!千秋先輩!チョト!」
「だから何もしないって……。本当に……。」

先輩はベッドまでそのままお姫様抱っこで私を運ぶと、ゆっくりとベッドの上に降ろした。
そして、ベットカバーと上掛けのお布団を剥がすと、自分も横になり、私を抱き寄せるようにして、それですっぽりとくるんだ。

「あー…すっげー眠い……。」
「んもう!だったら自分の部屋のベッドで寝ればいいじゃないデスか!」
「そうしたかったけど……。昨夜のおまえのあられもない姿が思い浮かんで、あそこじゃ眠れないんだよ……。」
「ムキャーーーー!!先輩のムッツリスケベ!!」
「そんなの、とっくに知ってるだろ……。」
そう言うと先輩は、私の夜着のボタンを外し始めた。

「チョ、チョト!!何してるんデスか!!」
「え……?ボタンを外してる。」
「さっき、何もしないって言ったじゃないデスかーーーー!!」
「何もしないよ…何もしない。気分だよ、気分。」
「はぁっ!?気分?」
先輩はそう言って、私の夜着のボタンを全部外してしまうと、合わせ目を開いて私の胸元にもぐり込んだ。

「あー……。やっぱ、落ち着く……。」
「……おっぱい星人。」
「何とでも言え……!」
先輩は私の胸の谷間に顔を埋めて、幸せそうに瞼を瞑っていた。
「先輩ソレ好きですよね……。」
「……え?」
「のだめ、知ってるんですヨ。先輩、のだめのおっぱいで、二度寝するの好きでショ!」
「はぁっ!?」
「最初は偶然かと思ったんですけど……。先輩って眠りが浅いタイプだから、絶対明け方に一度起きますよね?
 すると必ずのだめを抱っこするのをやめて、今度はのだめのおっぱいを枕代わりにしてもう一度寝るんデス!」
「うっ……。」
「別にいいんですけど、のだめは!でも先輩のあの時の顔は、モノスゴク締りがなくて、ゆるゆるですヨ?」
「え…そう……か?」
「鼻の下伸び切っちゃって〜!目じりも下がりっぱなしだし〜!口はいやらしく開きっ放しで〜!ホント情けないですヨ?」
「うっ……。」
先輩は私の胸の中で、呻いていた。
「大丈夫。のだめ、誰にも言いまセン!だから、のだめ以外にしちゃダメですヨ?」
「バカっ!ンなの、当たり前だろ……。」
「うぷぷ……。」

私達はそうやって眠りの前の一時を、ベッドの中でいちゃいちゃして過ごしていた。

323 名前:「喪失」・289[sage]:2005/09/12(月) 01:52:42 ID:moD4yY5T
「なー今朝の話だけど。」
「話?」
「その……おまえの初めてのキスの相手…誰なんだ?」
「へ?」
「大学時代?……それとも、高校時代?」
「チョト千秋先輩!な、何言ってるんですか?」

先輩は顔を真っ赤にさせたまま、言い訳するようにぶつぶつと呟いていた。

「べ、別に気にしてるわけじゃないぞ!ただ…その…誰なのか…知りたいっていうか……。」
「先輩、ヤキモチやいてるんですか?その人に。」
「うるせーー!男だったら気になンだよ!そーゆーのっ!」
「うきゅきゅ♪先輩はまだまだデスね!」
「何だ……そのまだまだって……。」
不審げな視線で先輩は私を見上げていた。
「女の子のファーストキスは、大概お父さんに奪われるものなんですヨ?」
「あ……。」
「安心しました……?」
「うん……。」

本当に安堵したのか、先輩は私の胸元に、より深く甘えるようにもぐり込んできた。

「あーでも……。のだめ今回の事で学びました。」
「……学んだ?」
「千秋先輩のムッツリスケベ度は、のだめが想像してた以上に高かったという事デス!」
「はぁっ!?」
「だって先輩は、18歳のまだまだ初心なのだめを、知り合って1週間そこそこで手篭めにしたんデスからねっ!」
「なっ……!」
「見て下さい!このキスマーク!!まだ全然消えませんヨ!!」

そういって私は胸元をはだいて、先輩にそのあとを見せつけた。

324 名前:「喪失」・290[sage]:2005/09/12(月) 01:55:31 ID:moD4yY5T
「おかげでのだめ、せっかく誘ってもらったのに、由衣子ちゃんと一緒にお風呂に入れませんでしタ!」
「あー……。」
「由衣子ちゃんにこんな所を見られたら、困るのは先輩ですヨ?」
「ご、ごめん。」
「昨夜よっぽど、ねちっこ〜いえっちしたんでショ!先輩!」
「うっ。」
「先輩、いつも公演の後ってシたがりますよね?後、酔っ払った時も!」
「え!?そ、そうか……?」
「そうデスよ!何か興奮が冷めやらないのか、公演の後はいつもよりえっちが、ねちっこいんです!
 だからって、“初めて”ののだめにまで、そうするなんて……真一くんはムッツリスケベ大王です!!」
「はぁ……。わかったから、もう寝ろ。」

先輩は疲れきった様にそうぼやくと、私にちゅ!と軽くキスをして、再び胸に顔を埋めてしまった。

*****

深夜3時、のだめは目を覚ました。
先程まで千秋が自分の胸に顔を埋めていたはずなのに、
いつのまにか千秋に抱きしめられていて、のだめの方が彼の胸元に頬を寄せるようにして眠っていた。

――珍しく、先輩がすぅすぅと寝息を立てて寝ている……。

毎日R☆Sの公演のために走り回り、おまけに記憶を失った自分の面倒まで見ていたのだ。
彼がここ連日ずっと徹夜だった事を、のだめは千代から聞いていた。疲れが溜まっていて当然である。

「千秋先輩、お疲れサマ…。ゆっくりと眠って下さいネ…。」

のだめは頬を薔薇色に染めたまま囁いた。そして千秋の額にかかった、さらさらとした前髪を少し掻き上げてみる。
無防備な程に穏やかな表情で眠る千秋が、いつもより幼く見えた。
自分しか知らない彼の表情が、どうしてこんなにも満ち足りた思いにしてくれるだろう。のだめはうれしくてくすくすと笑った。

千秋はのだめの細い腰を抱きしめたまま眠っていたので、のだめが笑って少し身体が動くと、彼の身体が僅かに身じろいだ。
のだめは一瞬起こしてしまったかと焦ったが、ぐっすりと眠り込んでいる彼は一向に起きる気配はなく、
無意識にのだめの腰に回した両腕を動かして、自分に引き寄せるように強く抱きしめ直した。
 
のだめは引き寄せられるまま、千秋の胸に顔をうずめた。
そして、夢の中を旅する彼を追いかけるように、彼の胸に頬を寄せ、幸せそうに瞳を閉じた……。

**********

325 名前:??ss?{?a^?3/4?S?j??[sage]:2005/09/12(月) 01:56:52 ID:EkcAgqIH
すげ〜”エビハラ”大作でつね。

326 名前:「喪失」・エピローグ・1[sage]:2005/09/12(月) 01:58:35 ID:moD4yY5T
成田空港、朝9時半―――

「みんな、見送りまで本当にありがとう。」
「ありがとーデス!」

千秋とのだめの見送りに、峰や鈴木姉妹、真澄も来ていた。
三善家からは、征子と学校が試験休みだった俊彦の二人が、空港まで二人に付き添っていた。

「しかしのだめ。おまえ、本当に千秋に迷惑かけたんだぞ?おかげでオレ達の公演まで、ヤバい所だったんだからな!」
「うぎ!ス、スイマセン……。」
「でもよかった〜!のだめちゃんの記憶が戻って!」
「うんうん。千秋さまも嬉しそうよね。やっぱりのだめちゃんはのだめちゃんじゃないと!」
鈴木姉妹がにっこりとのだめに笑いかけた。
「萌ちゃん、薫ちゃん。のだめ、今度は絶対二人の演奏聴きますからネ!」
「ふふふ。待ってるね〜!」
その時後ろから暗黒の影が忍び寄ってきたと思うと、折り畳んだ新聞で思いきりのだめの頭をはたいた。

「ぼへーーーー!!!!」
「何、和やかに別れの挨拶してんのよぉーーーー!!このひょっとこバカ娘ぇぇーーーー!!」
「真澄ちゃん!イキナリ酷いですヨーー!うー痛い!痛いデスーー!」
「ふんっ!!あんたのその頭の痛みなんて、千秋さまのこの10日間の苦しみから比べれば、屁みたいなもんよ!」
「ぎゃぼっ!」
「言っておくけど、今度こういう事があったら、殺ス……わよ……。」(←死んじゃえ委員会再興)
「ひぃぃぃ……!」

鈴木姉妹と真澄が、のだめと盛り上がっているのを横目で見ながら、峰はすっと千秋の側に寄った。

「おい、千秋。」
「あ?」
「おまえも色々大変だったな!」
「ああ、まぁな。峰にも色々気を遣わせたみたいで、悪かった。それと…本当にありがとう。」
「いいっていいって!!オレ達親友だろっ!!っな!」
峰はそう言うと、今度はニヤニヤしながら千秋の耳元に顔を寄せた。

「……で?」
「で?」
「何だよー照れることないだろ?親友っ!!昨日の夜はどうだったんだ?スッキリしたか?」
「な、ななな何言ってんだ!このバカっ!!」
「きひひひひ。その様子だと、久しぶりに熱〜い夜を過ごしたようだな?」
「ンな訳ねーーーー!!!!」
「照れるな照れるな!!」
峰はニタニタ笑いをしながら、千秋の背中を例の如くバンバンッ!と叩いていた。

「峰くーーん!峰くんも入りませんカーー?」
鈴木姉妹がデジカメを持ってきていて、のだめ達はそれで記念写真を撮っていた。
「おー!写真か!」
峰もいそいそとのだめたちの中へ行くと、ポーズを決めている。
「千秋先輩も〜!!」
「ん。ちょっと待て。後で行くから。」
千秋は征子と俊彦の方へ顔を向けた。

327 名前:「喪失」・エピローグ・2[sage]:2005/09/12(月) 01:59:09 ID:moD4yY5T
「母さん、俊彦、朝早くからありがとうな。」
「いいのよ。気をつけて…二人とも仲良くね!」
「由衣子も来たがってたんだけど……。ボクだけでも来れてよかったよ。」
「みんなには…今回の事で色々迷惑かけて…本当にすまなかった。」
千秋は頭を下げた。
「ふふふ。真一の可愛いのだめちゃんの為ですもの。大した事ないわよ、そんな事。」
「そうそう。真兄がのだめさんにベタ惚れなのは、よぉーく分かったよ。」
「う…例えそうだとしても、あいつには言うなよ?」
「はははっ!」

「千・秋・く・ん♪」

男の声を裏声にしたような気持ちの悪い呼び方を後ろからされて、千秋は一瞬背筋がぞくりとした。

―――この嫌な感じは……。

「ひどいなー!僕が入院してるって知ってる筈なのに、お見舞いにも来ないなんて!」
「っげ!松田さん!?ど、どうして……。」
「もちろん!可愛い後輩の見送りに決まっているじゃないか。」
千秋が後ろを振り向くと、松田がポロシャツにチノパンというラフな格好でこちらに歩いてきていた。

「はぁー!僕って本当は偽悪者だからね。今回はついつい、後輩育てをしちゃったよ〜!」
「……“偽善者”の間違いじゃないですか?」
「千秋君、もうパリに帰っちゃうなんて寂しいねー。君とはゆっくりと飲みたかったのに。」
「松田さん…過労で倒れたんじゃなかったんですか……?」
「そうだよ!君が僕一人にパーティーを押し付けたりするから。」
「そ、その節は申し訳ありませんでした……。」
千秋が恐縮して松田に頭を下げると、彼は不敵な笑みを浮かべながら身を屈めて、千秋の耳元に囁いた。
「……勿論、忘れていないよな?」
「……うっ。」
「その事を君に確認させる為に、態々こんな空港にまで出向いてやったんだ。」
「……勿論です。松田さんと約束した事は絶対守ります。」
「そう?それなら、いいんだけど?」

松田は身体を起すと、すぐにいつもの飄々とした雰囲気に戻っていた。

「さて、と。そろそろ行くかな?」
「松田さん、これからどこかに行かれるんですか?」
「いやなにね、君のミューズの所へでも、ご挨拶に……。」
そう呟く松田の視線の先には、峰と楽しく談笑しているのだめがいた。

―――ヤバイ!!

千秋は冷静に状況判断すると、鈴木姉妹を呼んだ。
「おーーい!薫ーー!萌ーー!松田さんが話を聞いてくれるってさーー!」
「えーーーー?本当ですかーーーー?」
「松田さん、二人が話したい事があるんだそうです。聞いてやってくれませんか?」
「え?別にいいけど……。」
嬉しそうにやって来た鈴木姉妹に松田を押し付けると、千秋は急いでのだめの所へ行った。

328 名前:「喪失」・エピローグ・3[sage]:2005/09/12(月) 02:04:14 ID:moD4yY5T
「の、のだめ。もう行こう。」
「えっ!?まだ時間ありますよ?もうチョトみんなとお話していたいデス。」
「……免税店で、何でも好きな物買ってやるから、行こう。」
「別にのだめ、欲しい物なんてないデス!」
意外に強情なのだめに痺れを切らして、千秋は次の作戦に出た。

「オレ、もうラウンジでゆっくりしたいんだよ……。」
「ムキャーーーー!千秋先輩、飛行機に乗る前から、酔っ払うつもりデスかっ!?」
「違う……。やっぱり飛行機に乗る前だから…何だか気分が悪くて……ラウンジで横になって…休んでいたいんだ……。」
「ぎゃぼっ!?先輩、気分が悪いんですか!?大丈夫。のだめが一緒ですから心配いらないですヨ?
 じゃあ早く、ラウンジに行きましょうネ。」

千秋の“気分が悪い”作戦は功を奏し、彼はのだめと一緒に手荷物検査に向けて歩き出した。

「じゃあねーーー!!のだめちゃーーーん!!」
「今度パリに遊びに行くからなーー!!」
「千秋さまに迷惑かけるんじゃないわよっ!!」

「ハイーーー!!皆さんもお元気でーーー!!」

すると何故かのだめは急に方向転換し、ゲートに向けて歩き出している千秋の後を追いかけないで、俊彦の方に駆け出した。

「俊彦くん!俊彦くん!」
「はい?」
「昨日頼んだ、プリごろ太のフィギュア…よろしくお願いしますネ!」
「はいはい。用意が出来たら、すぐにのだめさんに送るから安心してよ。」
「むきゃーー!!絶対ですヨ?絶対の絶対ですか」
「おい!こら!いつまで待たせるんだ!!」
のだめの後ろで、千秋が仁王立ちになって怒っていた。
「もう!ほらっ、来い!行くぞっ!」
「ぎゃぼっ!?」

千秋はのだめの手を取るとしっかりと指を絡め、彼女をぐいぐいとゲートまで引っ張って歩いて行く。

「きゃーーーー!!千秋さまがのだめちゃんと手を繋いでる!!」
「おーー!すげーー!あの千秋がなぁーーーー!!」
「恋人つなぎ…恋人つなぎ…恋人つなぎ…恋人つなぎ……殺ス……。」
「あっ!!写真撮らなきゃ、写真!!」

萌がデジカメのレンズを二人に合わせると、液晶画面には手を繋いだ二人が見つめあって、睦まじくゲートに歩いていく姿が映っていた。

*****

329 名前:「喪失」・エピローグ・4[sage]:2005/09/12(月) 02:06:43 ID:moD4yY5T
…ポン!

『只今当機は、大変気流の悪いところを―――』

シートベルト着用を知らせる音とランプが、先程から何度もついたり消えたりしている。

「せ、先輩…大丈夫ですか?」
「……うぅっ。」

飛行機がユーラシア大陸の上空にさしかかると、台風の影響からか機体は常に揺れている有様で、オレはみっともない程震えていた。
もちろん隣に座っているのだめに、恥ずかしいほど、ひしとしがみ付いて……。

最近は一人でも飛行機に何とか乗れるようになったけれど……。
でもさすがにパリまでの12時間、こう揺れ続ける飛行機の中にずっといるのは、オレにとってはもはや地獄での拷問に等しかった。

「今回は揺れますねー。でも大丈夫ですヨ。のだめもいますから。」
「うわぁ!」
「先輩、もっとのだめにくっついてもいいですヨ?」

のだめはそう言うと、オレが抱きつきやすいように体をずらしてくれた。
オレは甘えるようにのだめの胸元に顔を寄せ、全身でこいつにもたれかかる。

「もう…千秋先輩は本当に甘えんぼさん♪ですネ……。」
「…のだめ、あと何時間?」
「まだ後9時間です。もうちょっと我慢して下さい、真一くん。」
のだめのたっぷりとした胸の膨らみを堪能しつつも、オレは早くパリに無事に着くことだけを祈っていた。

「スミマセン〜!そこのお美しい方〜!
 これと同じものを、後ろで恋人にいちゃこいてる、あの男にも持っていってくれまセンか〜?」
「かしこまりました……。」

―――ん?今の声…どこかで……?

「お客様。あちらに座っていらっしゃられるお客様から、これを……。」
客室乗務員がおずおずと、オレ達の前に身を屈めて、ワインボトルを差し出した。
「え?のだめ達に?誰でしょ!」
「…ま、まさか……。」

悪い予感は的中した。身を伸ばして前方を見ると、今一番顔を合わせたくないあの人物が、ニヤニヤ顔でこっちを見ていた。

「“音楽はとても尊敬できる”あなたの師匠デ〜ス!!はぁーい!のだめちゃんも!」
「ムキャーーーー!!ミルヒー!ミルヒーじゃないデスか!」

―――もうチェックされてるのか……。

「あれー?何でミルヒーが同じ飛行機に乗ってるんデスか?自家用ジェットは?」
「ふふふ。可愛い“唯一の弟子”の晴れ舞台。師匠の私が行かない訳ありまセン!」
「ふぉぉぉぉ〜!そだったんデスか!」

―――嘘をつくな。嘘を……。

330 名前:「喪失」・エピローグ・5[sage]:2005/09/12(月) 02:07:24 ID:moD4yY5T
「それから京都の方で、西欧文化と日本文化の交流についてのフォーラムにも招待されていたのデ〜ス!」
「へぇぇぇ!文化交流のフォーラム……。」
「おい、こら、だまされるな!そりゃーただの置屋遊びの事だ……。」
「うっ!!」
「ぎゃぼっ!?そうなんデスか?ミルヒー!!」
「ま、まぁ…ソレはともかく。今回は色々と大変だったネ〜のだめちゃん!」
「はぅっ!?」

―――くそ〜…ジジイ!!どこまで知ってンだ!!

「でも、記憶が戻ってよかったですネ〜!どうして記憶が戻ったのか、その辺詳しく、後で千秋に聞かないとネ!」
「……な!?」

シュトレーゼマンはオレの方をいやらしい目つきで、笑いを堪えながら見ていた。
何故、ジジイはのだめが記憶喪失になっていた事まで知っているのだろうか。
オリバーにもその辺の詳しい所は全く話していなかったのに……。

『ったく!!千秋のおかげで、大変だったんですからね!!』
『えっ!?エリーゼっ!?』

シュトレーゼマンの隣から、凶暴そうなオーラと共に、エリーゼが顔を出した。

『当たり前でしょ。うちの事務所がマエストロに単独行動を許すと思ってるの?』
『あ……。』
『言っておきますけどね。千秋には当分ただ働きしてもらうから、そのつもりで!!』
『え……!?何で?』
『フン!これを見なさいよ!』

そう言ってエリーゼは、簡単に装丁された雑誌の束を、オレの方に投げて寄越した。

「先輩、これなんデスか〜?」
のだめも不思議そうに覗き込む。オレは一枚目をめくって唖然とした。
「な、何だこれはっ!!!」


     ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++    
          《クラシック界の若き貴公子、千秋真一のミューズは1歳年下のピアノ留学生》
          
     
     巷では、最近クラシック・ブームが巻き起こっているが、そのムーブメントの中心人物の一人でもある、
     千秋真一(23)が、プラティニ・指揮者コンクール優勝記念の凱旋公演の為、現在日本に帰国している。
     その彼の音楽のミューズとも言う女性の存在を、当紙はいち早くキャッチした。

     彼は若い女性に圧倒的な人気を誇り、クラシック界では“王子様”として知られているが、そんな彼の
     心を独り占めにしているのが、一つ年下のAさん(22)である。Aさんは大学時代の後輩にも当たり
     …………

     ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
 
そこには一昨日の公演で、オレがロビーでのだめに跪いて、ちょうど抱きしめようとしている瞬間の写真が、バーン!と載っていた。 
右下の小さい方には、のだめの手を引っ張って、楽屋の方に歩いて行くスナップも掲載されている。

331 名前:「喪失」・エピローグ・6[sage]:2005/09/12(月) 02:07:58 ID:moD4yY5T
「千秋先輩。何でのだめに黒い目線が入っているんデスか……犯罪者みたいですヨ……。」
「おまえ…見る所がそれかよ……。」   

『今日発売の写真週刊誌だったのよ!ソレ』
『千秋、男前に写っているネ〜!』
『マエストロ!!』

エリーゼがキッとシュトレーゼマンに鋭い眼光で睨みつけると、さすがのジジイも首を竦めた。 

『まぁ!大物外タレを沢山有している我が事務所ですから、その中の一人が次回来日する時に、
 独占インタビュー記事を書かせるという事で、手打ちにしました!!』
『えっ…じゃあ、この記事は……?』
『勿論今日発売の雑誌には、掲載されていません!!感謝する事ね!!千秋!!』
『す、すみません……。』
『千秋は当分ただ働きの件を了解した、と解釈してもいいのよね?』
『……はぁ。』
オレは深い溜め息を零した。また馬車馬のように働かされる(しかも報酬なし)のは正直辛かったが…仕方がない。

『言っておくけど、その記事が本当に世間に出て困るのは千秋、あなたじゃなくてそのコの方よ?
 まだそのコは学生で、つまり音楽家の卵なんでしょ?“千秋真一の女”という色眼鏡をあなたがつけてどうするのよ!!
 そのコが本当に大事だったなら、その辺も気をつけなさいよね!!』
エリーゼはフン!と鼻息荒く言い放つと、座席に座ってしまった。
『まぁまぁ。エリーゼのいうことも一理あるからネ。千秋もよく考えてみるといいですヨ〜。』
シュトレーゼマンも何時になく真面目な顔でそう言うと、隣に座ってるマネージャーと同じように座席に戻る。

「先輩…エリーゼさんと、何をお話してたんですか?」
「いや…別に。」

手元の紙面に目を落とすと、どうやらゲラ段階の記事らしい。
しかしよく調べてあって、オレ達のパーソナルな情報は、ほとんどいっていい程間違いはなかった。
ふと、最後にある、この記事を書いたライターの名前を見る。オレはようやく自分の失態に気がついた。

―――この名前…喫茶店で取材を受けた時の…あの女性誌のライターだっ!

そういえば、あの時先に喫茶店を出て、店のウィンドウから見ると、彼女は何か思惑を秘めた瞳をして、じっとこちらを見つめていた。
変だな…とは思ったけど、まさかあの時からオレはマークされていたのか……。

「……はぁ。」
「先輩?大丈夫ですか?」
「ああ……。」
「ねー先輩!それ、のだめに下さい!!」
「っは!?これ?」
「ハイ!記憶にはないですケド、のだめと先輩の愛のツーショットですから!家宝にしマス!」

ビリッ!バリ!ビリ!ビリ!バリッ!……

「ああああ!!何するんデスかーー!!」
「こんなモノ、とっておくな!バカっ!」
「ムキャーーーー!!せっかくの愛のスクープがぁぁぁっ!!」

332 名前:「喪失」・エピローグ・7[sage]:2005/09/12(月) 02:09:06 ID:moD4yY5T
オレはゲラ記事の一枚目だけをビリビリと破り捨てた。
のだめは慌てて、紙の欠片をジグソーパズルの様に当てはめようとするが、無駄な事だった。

「むー……!先輩のイジワル。」

のだめは頬を膨らませて、拗ねていた。
そこでまた飛行機が盛大に揺れたので、オレはのだめにしがみつこうとする。するとのだめにその手をピシャリ!とはたかれた。

「なに……。」
「もう、先輩は一人で震えていればいいんデスよ!」
「のだめ……機嫌直せよ。」
「フーン!」

オレはゆっくりとうかがう様にのだめに身体を寄せると、慎重にのだめの柔らかな身体に腕を回した。

「のだめはいつもこうやって、先輩に抱っこさせてあげてるのに……。」
「うん……。ありがとう。」
「記事破いちゃうんだもん…ヒドイ!!」
「……なー、のだめ。パリに帰って、オレのマルレの定期公演が終わったら、どっか行こうか?」
「むきゃ?」
「ほら、せっかく日本に帰ってたのに、何処も行けなかったし。パリはちょうどバカンスシーズンだろ?」
「モキャーーーー!!お出かけデスか?何処に?」
「……何処でもいいよ。でもなるべく近場でな……。」
「千秋先輩…のだめ、先輩と一緒なら、何処に行ってもデートなんですヨ?」
「へー……。」
「先輩と一緒にカフェに行くのだって、のだめにとってはいつもデートです!ぎゃはぁっ!」

のだめは優しくオレの髪を撫でていた。
オレはのだめの身体に身を預けながら、のだめの楽しそうなおしゃべりに相槌を打つ。

「でもまずパリに帰ったら……。」
「帰ったら?」
「やっぱり最初に、おまえのピアノが聴きたいな。久しぶりに……。」
「いいですヨ。じゃあ先輩も、のだめに呪文料理、ご馳走して下さい!」
「分かった……。」

のだめがすっと小指をオレの目の前に差し出した。少し気恥ずかしかったが、オレもその指に自分の指を絡める。

―――ちょっと先の未来を、お互いに拘束する幸福…か……。

“指きりげんまん♪”と小さな声で、嬉しそうにのだめが歌うのを聴きながら、オレは瞼を閉じた。

**********

<おしまい>

333 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 02:11:34 ID:EU23Nrk6
ttp://www.kusuri-mura.com/img/01-05-07.gif
ttp://www.koshioka.co.jp/Image/business/ene/enethan_hone.jpg
尾てい骨=尾骨
ケツの所掴んでパンツをずらしているのですか?

334 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 02:12:53 ID:srmIg4gm
ショコラさん乙でした〜

チャイコの4番をもってくるとは、意外でした。

335 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 02:13:31 ID:+auWuj19
GJ!!!!!!
こんな読み応えのあるもの、久しぶりに読んでウレシス
ラブラブなチアノダ、ごちでした!

336 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 02:14:47 ID:W2qsv8f7
所詮この千秋も変態だったか

337 名前:ショコラ[sage]:2005/09/12(月) 02:15:02 ID:moD4yY5T
長くなりまして申し訳ありませんでした。
何回もエラーに阻まれた為、もしかしたら飛ばしている箇所があるかもです…。
それでは本当にお疲れ様でした。

338 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/09/12(月) 02:16:05 ID:5gyWKjhf
GJ!GJ!GJ!

とても素敵でした。
感動をありがとう。

339 名前:ショコラ[sage]:2005/09/12(月) 02:18:14 ID:moD4yY5T
>333
あああ。本当ですね。ごめんなさい。そこは笑って下さい。

340 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 02:20:24 ID:Kwq4WOa1
GJ!!
感動しました。
長い間お疲れ様でした。
ありがとう!
ブラボー!!

341 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 02:20:40 ID:t8OVQ7J/
乙でした!
(*´д`*)アハァ

やっと眠れるw

342 名前:名無しさん@ビンボー[sage]:2005/09/12(月) 02:22:17 ID:EkcAgqIH
眠い。。。
やっと読み終わりマスタ。

343 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/09/12(月) 02:25:05 ID:u/Sp2+7I
リアルタイムGJ!GJ!GJ!
ねちっこいエチーが萌えますた。

344 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 02:32:56 ID:PVqyVuEI
オケのチューニングはオーボエ→コンマスの順でつよ。
それよりsageろよおまえら

345 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 03:44:09 ID:e9r+JRSq
大長編を書きたいなら、自分のサイトかブログでやってくれ。

346 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 05:38:29 ID:kA1nx7+x
GJ!!!乙です!
一気に投下するって前置きあるのに、あげたり萎えレスつけたり…
厨房は去りなさいね


347 名前:山口モエス山口モエス山口モエス山[sage]:2005/09/12(月) 06:28:21 ID:X6cQ/J33
読み終えたら夜がアケテターヨ(:´д`)

ショコラ氏 大長編禿乙でした
すごく設定がしっかり作ってあって
正直エロじゃない部分のが萌えまくった
読後さっそく余韻にひたろうと思ったのに
>>>333でワロナッケツ

348 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 07:19:05 ID:CUNQE3x9
ショコラさんGJでしたー!!

349 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 08:20:33 ID:3NMfwnnD
乙でした。

あげるのはぬっころすだけどマンセー以外のレスもおkだろ。>>346
自治厨ウザス

350 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 09:12:54 ID:jNy7g4Zs
↑ヘンなの貼ってたからだろ厨房が。

351 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 10:14:38 ID:5U8R2kNs
随分無駄に容量つかいましたね。
次回からはブロクかどっかでやってください。
またはエロ部分だけどうぞ。


352 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 10:16:23 ID:dgUJy4Wz
長すぎる!!
エロの部分だけ抜き出して投下すればよかったんじゃないか?
エロパロなんだから。
その他の部分は自分のサイトでやってくれ。



353 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 10:45:52 ID:G2stmcvo
決して意地悪や煽りで言っているのではなく、ここまでの長さで、
しかも時間もかかっているわけだから(投下時期の長さも投下時間の長さも)
やはり自分のブログでやったほうが良かったと思うよ。
ブログなんて簡単にかりられるんだからさ、期間限定で作って晒して、
消す時に『消しました』連絡があればいいんだと思うし。

内容についてはコメントしないけど(斜め読みだから)、
いろいろ言いたいマンセー読者もいるみたいだから、感想なんかも
自ブログ・自サイトで受け取ったら?
これだけ長いもの書いたんだから、このまま埋もれさせるのもどうよ?

354 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 11:01:42 ID:5jreu/I9
私も斜め読みだから内容はコメントしないが
一部あれだけもういいとか言われてて
この大量投下はある意味すごい。
私ならできないな。

他の神達や普通にやってる人達みたいに
自分のところで長い連載やれば
誰の邪魔にもならないし、問題にもならない。
しかも自分のペースで少しずつあげられるわけだし。
次が万が一あるなら学習してください。

せっかく書いたのに叩かれるののは気分イクナイでしょうに。

355 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 11:28:26 ID:jFrBBRN8
初めの投下の時から読んでた私としては、毎回楽しかったですよー。
長い間お疲れ様でした!
ご本人もこんなに長くなるとは思っておられなかったのでは…まあ、今度からは短めでって事で。

356 名前:?ある意味ソンケー[sage]:2005/09/12(月) 11:42:09 ID:EkcAgqIH
執拗なまでのスレへの粘着ぶりですが、あるいみソンケーでつ。
明日発売の13巻に向けてこれからハアハアします。

357 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 11:53:21 ID:3NMfwnnD
得意げに化石みたいなフラッシュさらす厨は半年ROMってろ

358 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 12:22:54 ID:dgUJy4Wz
http://nananananananana.seesaa.net/

あまりの長さに忘れていた。
DAT落ちしている部分も含めて、喪失シリーズまとめ読みにどうぞ。



359 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 13:27:25 ID:B2u3DjwE
>>358

どーもありがとう
1から読み直します


360 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 13:28:45 ID:ZS9WxeNH
>>358
最初の方読めなかったから、ありがd

361 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 15:05:15 ID:jVNqZPwA
エロパロでこんなに長いの初めて見た…
どのシーンでも人物の行動・心情・セリフを1から10まで全部書くからこうなる。
書きたい気持ちは分かる。でも一つの話に持っているものを
全て注ぎ込んで書く必要もないし、ここはそれをやる場所じゃない。
ここで書くならもっと我慢して話を構成しないと。
途中何度も長いと言われているんだから、途中からでもそれが出来たはず。

そういう我慢がさっぱり見られないから「書きたいだけ全部書いてすっきりしたー、
長いのは後から謝ればいいや」と思ってるように見えてしまう。

362 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 16:21:43 ID:J/1+ecdh
ショコラさんは投下する前、一行目で
「エロあり」って書いてるんだよね。
短く仕上げるつもりが長くなったのは仕方ないとは言え、
限度越えてるから、別の場所でやれ、と皆言ってるんだよ。
その方が、ショコラさんも、ショコラさんの続きを待ってる人にも、
はては「長すぎる」と言っている住人にも、よかったのでは?

「ここ」に固執して待ってる、ここでやれ、とした住人も、
それに甘える形でここを占領仕掛けてるショコラさんも、
やはり「空気嫁!!」だな、と思う。


363 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/09/12(月) 16:28:33 ID:6YG/nN73
てか、もう別にいいじゃん。
常に数多の職人が常駐してて
作品がひしめき合ってるようなスレならともかく
下手したら一週間も投下も無い様なスレでそんな
文句ばっか言わなくてもいいじゃん?
確かに長いけど、それでなんか実害があったわけ?


364 名前:363[sage]:2005/09/12(月) 16:29:03 ID:6YG/nN73
sage忘れ
すまそ

365 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 16:33:22 ID:IOQUWqzk
たしかに占領するなっていうほど
投下ないし、怒っている人たちは
なんで怒ってるのか寝。自分の家みたく
思ってるの?留守でも入るな、て。

366 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 16:37:12 ID:3NMfwnnD
ひとりで1スレ分の容量使うなってことじゃろ。
蟻の一穴から。閉鎖騒動はもうごめんだよ

367 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 16:45:16 ID:IOQUWqzk
言い方ってもんがあるじゃろ

だから投下しづらくなって
みんな消えていく



368 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 16:57:08 ID:e9r+JRSq
喪失シリーズ感想。
つまらなかった。
だらだら一から十まで「ああしてました。こう思いました」の羅列。
どっかの少女マンガで読んだような陳腐なストーリーの繰り返し。
エロパロなのに作品のほとんどの部分がエロじゃない。

これだけ長くなってるんだからブログでやればと言われてもここに固執する
そのしつこさ。ブログくらいとっとと借りればいいのに。

369 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:18:16 ID:6YG/nN73
>>368
まぁまぁw
なんでそんなイキってんの?
またーりいきましょうよ

人の作品に簡単につまらないとか言ってはいけないよ
自分がやられたり言われたりして嫌な気分になることを
他人にやったり言ったりしちゃだめだよー

370 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:26:33 ID:xO2YbfKw
喪失シリーズ楽しかったよ。
でも、記憶喪失中ののだめがウジウジしすぎてて好きじゃなかった。千秋と会う前ののだめのイメージとも違いすぎてたのかも。
後半は、のだめのエロパロじゃなくて、ただの小説として読んでた。

371 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:29:49 ID:jaD5sOPc
私はエロの部分が無駄に長過ぎて、途中で嫌になった。
それまでは楽しく読めてたんだけどね。
千秋があまりにもしつこすぎと思うのは
私が女性だからかなあ。


372 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:38:10 ID:gOGo6Zg1
長いエロなしで女性的なイメージを受ける前振り編の後に、
心より身体が視点になっていて、ある意味男性的?な表現の
多いエロ編。なんだか不思議なコラボを見ているようでした。

373 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:41:04 ID:G2stmcvo
>自分がやられたり言われたりして嫌な気分になることを
>他人にやったり言ったりしちゃだめだよー

だから、スレを占領されるのがいやだったんだってば。
ショコラさんのためにもそうした方がいいよ、というキツイ言い方ではなく
促すようなレスも合ったのに、聞く耳持たずだもんなあ。

個人的に言わせてもらえば、それまでの書き方とエロ部分とで別人か?
と思うほど違和感があった。
また、のだめ視点・千秋視点・三人称?で進むから表現が煩雑になるのだと思う。
強引な千秋の行為にも、納得いかない部分あり。
エロ部分を抜き出せば、それはそれで成立しているけれど、前後と絡めると悪目立ちしているというか。
「そういう抱き方をするのか?心は18歳のままののだめを?」という、理解しがたい部分もあり。

まあ、これだけ長くなったのは本人も想定外だとは思うけど。
もう少し練れば、もっといいもの書ける筈だけどな。
書きなれていない人があまり準備せずに長編書くとこうなる、の典型の気がしました。


374 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:41:34 ID:IOQUWqzk
エロ前のほうが萌えたかなw
面白かったですよ。

千秋がのだめを思う気持ちが切なくて
よかったんだけど、エロになったとたん
千秋がグヘグヘの獣だったのが残念。

あと先生は長かったな。
さらっとかいたほうが効果的だったかも。

375 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:55:56 ID:jNy7g4Zs
つか、長い同じ意見を何度も何度も重ねて投下するおまいらも十分空気嫁だぞ?ついでに無駄だぞ?
作品投下しづらい雰囲気つくってるぞ?(漏れモナー)
あ、勿論感想は別だが簡潔にな(ローカルルールより)。

マターリマターリ、これ基本。

376 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 17:58:54 ID:PVqyVuEI
1から200あたりの禿しいスレ違いぶりにげんなり。
定期的にチンチンする儲にもうんざり。

いちおう書いてみたものを発表したいけどサイトorブログ作るのマンドクサ
 →とりあえずエロパロ板にでも落としとけ。
的なものを感じてしまったよ

377 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 18:00:31 ID:PVqyVuEI
>>375
ごめん分かっちゃいるけど苦言を呈さずにはいられない

378 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 19:35:05 ID:uVLwQnye
ショコラさん乙です。
以前このシリーズはここで完結をと希望したものです。
次回からはぜひブログ等ご自身のサイトをお持ちになってください。
中途半端で終わるはちょっと…と思ったことと、あれだけの苦言があったので
対応いただけるかと思いましたが残念です。
あと最近のほかの職人さんにも言えますが、校正・推敲は大事だなと思いました。


379 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 19:42:59 ID:dYbP8M3W
僻地のエロスレで何を高尚ぶってんのかと小一時間
書いたから落とす、落とされたから読む、嫌だったらスルーする
これでいいじゃん

金払ってるわけでもないのにガタガタ言い過ぎですよ、皆さん


380 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 20:01:35 ID:PVqyVuEI
スルー出来ないくらい長い事に非難が集まってんのに
スルーしるって言われてもねえ。空気嫁

381 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 20:04:32 ID:6YG/nN73
わかったわかった
空気変える為に新作作ってくれる?

382 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 20:05:33 ID:6YG/nN73
あ、381は>>380ねw

383 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 20:32:16 ID:uVLwQnye
>>381
あなたの作品が読みたいです。

384 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 22:05:25 ID:ai8k0a3x
>>358
さんきゅーです。
今読み返してみたら、228辺りとか一部内容が重複、不足しているようです。
直してもらえると嬉しいです。ずうずうしくてごめんなさい。

385 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 22:44:48 ID:1WfcF9LX
ショコラさん、GJ!

途中からblogに移行しなくて良かったと
思ってる派です。
URL晒せないだろうから、探して辿り
着くのが大変だったと思うので。
長編→blogは次回からで良いで〜す!

諸説あるようですが、わたしはエロなし部分が丁寧に書かれてるから
エロで萌えられました。
土台がしっかりしてると深く入り込める
というか…。
わたしにとってまさに神!!です。

386 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:00:18 ID:ePsQs7k0
ちょっと冗長かなとは思いながらも、すごく引き込まれて、読ませる文章でしたよ。
こんな長いお話を私は書けないから、原作に対する愛情とか根気とかひしひしと感じたし。
GJ!! おつかれさま。また書いてね。


387 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:09:53 ID:EU23Nrk6
パスワード付けて、パスとアドレスをここにだけはっつけりゃ、
検索される事もないし何も問題ない。
URL晒したって痛くも何ともないだろう。
現に>358がまとめてくれて晒してるわけだから。
ここに来ている人で、読みたいと願う人が読みにいけばいいし、
ヲチしたきゃ行けばいいだけで。

ここにたどり着けるんだから、たどり着けるだろ。
自分が探せないから、なんて呆れるな。自分が良ければ、か。

あと、定期的に「金払ってないんだから云々」書き込む人がいるけど、同一人物?
払う払わないの問題じゃねーだろ。
投下があったから感想付ける。それが悪いものか?
GJとマンセーしか書きこみしてはいけないのか?
そういうローカルルールあったか?ここ。


388 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:24:50 ID:IOQUWqzk
こわ…

389 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:29:11 ID:6YG/nN73
>>387
つか、もういいじゃん…
さっきも誰かが書いたけどこんなエロヲタスレで
そんなに熱くなるあなたが心配w

新作期待sage


390 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:30:55 ID:srmIg4gm
54レスもあったから、新作投下?と期待したのに…

ショコラさん大作乙でした。面白かったです。


391 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:31:52 ID:DQ7SWmJ4
>>387
別のスレで見たのは職人が捨てアド取ってメールくれた人に
URL教えるって方法。最初からパス付けてメール返信時に
パスとURLを教えるって手もあるね。

苦言を呈している人達は自分含めてもう投下するななんて
言いたい訳じゃないから「もう来ません」とか言わないで欲しい。
新たな萌えが生まれて、それを文章に出来たら、また
投下して下さい。おながいします。

392 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:56:22 ID:doPhq1BR
ショコラさん、お疲れさまでした。
喪失シリーズハッピーエンドでほっとしました。



これでぐっすり眠れるぞっと。

393 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/12(月) 23:59:23 ID:XDgDHKks
投下したくてもできないだろー。
この流れじゃ、ショコラさんも新規の人も。

394 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/13(火) 00:06:24 ID:8CezRg2e
よーし、じゃあパパ投下しちゃうぞ

なんかできたらな

395 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/13(火) 00:09:23 ID:CtilViS+
きゃー、パパ素敵!

ブログ見て、ここのまとめブログ(サイト)があればいいなーと思った。
時間があれば作ってみたいもんだ。

396 名前:まあまあ[sage]:2005/09/13(火) 00:46:59 ID:SkfBABeI
優れたゲーじつ作品の作者とゆうものは、一般peopleの目に晒されることによって煽り態勢テスト
とかやって鍛えあげられていくもんなんでしょ?文章の中にものだめモノログとか千秋側モノログ
とか、色々試験的な技巧が凝らされてて、
ちょっと長くて鬱陶しいケド、研究段階的な超大作となったわけでしょう。
心理描写というか人物像の解釈が自分と違ってて、こんなのだめもあるのかと。
千秋はなんつうか、陰湿で執拗だからセックスもヤハリそ〜なのかな?とか。
結構楽しめますた。
みんな大人だから、これくらいわかるよねー?(貝ドーン的台詞)


397 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/13(火) 00:48:47 ID:7D/DFA/5
わか
りま
せん

398 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/13(火) 00:54:29 ID:XuYWnTUb
>>395
11さんのおかげで今のところ不自由はしてないけど、
私も作品ごとのまとめサイトあったらいいなと思ってた。
できたらブログじゃない方が、見やすくていいかなぁ。
でもそれだと管理が大変か…

399 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/13(火) 01:11:22 ID:g1D9oZzu
ショコラさん、お疲れ様でした。
これだけの大作、かなりの労力と時間を費やされたことと思います。
これほどの大作を流れてしまうこの掲示板に投下されるのは惜しいと思います。
ご自分のサイトなりブログなりをもたれるご予定はございませんでしょうか?
いわれのない批判的な意見も、ご自分のサイトでは無いでしょう。
ぜひ、次回作を読ませていただきたいと思いますので、ご自分のお城をお持ちいただきたいのです!
お待ちいたしております。
ブログに書き込むのも、ここに投下するのも、手間は同じと思います。
もしも、ここに投下して批判的な意見も聞きたしという意図がおありでしたら、申し訳ありません。

400 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/09/13(火) 01:35:42 ID:TlxxljbP
400!
ショコラさんお疲れ様ー。
ちょい冗長でしたが、2ヶ月楽しめました。
ハピエンドでよかった。>>268あたりでのだめな感じに泣きそうになりました。
>>399さんも仰る通り、いつかサイトかブログをお持ちになれられたら嬉しいです。


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