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のだめカンタービレ4

1 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 02:58:49 ID:ZGQiDwcc
ここは、のだめカンタービレのエロパロです。
SS投下時はカップリング明記でヨロシコ!
職人さん達が投下しやすいようにまったりsage進行で待ちましょう。

前スレ
のだめカンタービレ3
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1110996707/

のだめカンタービレ・2chの過去ログ保管倉庫
http://www.geocities.jp/nodame2004jp/

※容量が500KBを超えたら書き込みできなくなるので、そのまえに次スレを立てましょう。

2 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 03:04:01 ID:ZGQiDwcc
過去スレ

のだめカンタービレ2
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1107877262/

のだめカンタービレ  
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1096824021/

ネタバレスレ
【オレ様学】のだめネタバレ5【せこい】(難民)
http://aa5.2ch.net/test/read.cgi/nanmin/1116825093/

3 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 03:15:42 ID:08KukIId
前スレで決まったローカルルール

職人さん向け
・感想をくれ、と求めるのはやめよう。
・必要以上に自分を卑下するのはやめよう。
・一旦テキストエディタに書き、ある程度まとまったら投下しよう
 (SSを書きながらの投稿はやめましょう。ほかの職人さんや住人にも迷惑となります)
・続く場合は「続きは後日」等、宣言しましょう。
・頂いた感想レスへの全レスはやめよう(スレ私物化の原因になりがち)。

読み手さん向け
・過剰にマンセーした書き込みはやめよう。簡潔な感想とGJ! を。
・職人さん達の食指が動くような萌えシチュをさらりと投下しよう


4 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 03:26:17 ID:aaYwOKGL
>>1さん

よかった!乙!!
ヘタレなもんで立て方わからんかったんよ!!

マジ助かりました。

GJ!

5 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 06:30:13 ID:A+s2Mfew
>1
スレ立てお疲れさまです

まー心機一転
また盛り上がるといいですね

ROMへ
のだめカンタービレは
女性はもちろんだけど
男でも読みやすい漫画だよ
そんなに少女漫画チックな絵柄じゃないからね
気が向いたら読んでみ?
ハマるかもよ?
デカい本屋じゃレジ横陳列だし、雑誌社が力入れてるよ

6 名前:ショコラ[sage]:2005/06/23(木) 07:01:47 ID:r+4xOq2S
>>1
大変お疲れ様でした。

皆様、おはようございます。
昨夜は覗いた時に次スレがまだ立っていなかったので就寝してしまいました。
待ってくださった方々、ご迷惑おかけしました。ごめんなさい。
皆様のご好意に甘え、ゆっくり作業してます。有難うございます。
時間がないのですが、投下できる所まで・・・。

7 名前:「喪失」・48[sage]:2005/06/23(木) 07:03:45 ID:r+4xOq2S
のだめが入院して3日経った。

のだめの記憶が戻る気配は・・・未だ、ない。

明日退院だったのを山口先生の許可で一日早くしてもらい、アイツは今日退院する。
母さんに退院時間を聞くと、午後3時位・・・との事だった。
今日は俺のオケの練習は午前中だから・・・
昨日から持ち越した取材のインタビューを練習後に受けても、何とか間に合いそうだった。


「みんな、昨日は本当にありがとう。」
練習室に入ると、俺は真っ先に峰達に声を掛けた。
「何、水クサイ事言ってんだよ〜、千秋。俺達、親友だろ?」
 そう言いながら、峰はバンバン!と俺の背中を叩いた。
「千秋さま。今日、のだめ退院って昨日言ってましたけど・・・。迎えに行かれるんですか?」
 真澄が少し拗ねた様な上目遣いで聞いてくる。
「ああ、うん。一応行く予定。のだめの主治医の先生にお礼を言いたいし。
 色々と母親に任せっきりだったから、最後くらいちゃんとしないと。」
「のだめちゃん、今日の何時に退院なんですか?」
「えっと・・・。午前中は診察があって。それから退院の手続きなんかが色々あるみたいだから。
 ・・・3時過ぎになるって言ってたかな?」
「わたし達、午後は松田さんのオケ練があるから行けないけど・・・。」
そう言うと、薫が自分の荷物の所へ行って、可愛らしいフラワーアレジメントを手にして戻ってきた。
「コレ、みんなからのだめちゃんへ。退院のお祝いです。花束よりいいかなと思って・・・。
 このまま飾れるし、オアシスだからお水の交換も必要ないし・・・。」

8 名前:「喪失」・49[sage]:2005/06/23(木) 07:04:21 ID:r+4xOq2S
受け取ったアレジメントは、クリーム色の薔薇とパステルオレンジのガーベラ、
それと白い小花のマーガレットをメインにした、ビタミンカラーが眩しい初夏らしいものだった。

「黒木君が、絶対スズランがいい!って言ったんだけど。この季節、もうスズランなくてさぁ。」
「でも、似た感じのお花を入れて貰ったんだ。ほら、恵ちゃんにさ・・・似合ってると思わない?」
 白い小花のマーガレットを指差しながら、黒木君は恥ずかしそうに俺に言った。
「いや、何だか、マーガレットはアイツには清楚で可憐過ぎる気もするが・・・。
 それにもっと、こう、ごちゃごちゃした方がのだめっぽい気がする・・・。」

---本当は、この元気が出るような瑞々しいアレジメント、のだめのイメージにピッタリだ・・・。

皆が思っているのだめのイメージと、俺のイメージが一緒で、すごく嬉しかった。
しかし正直にそう言えば絶対・・・からかわれる。
そう思った俺は照れ隠しもあって、ついそんな風に言ってしまった。

すると俺の発言を聞いた真澄が、間髪居れずに叫んだ。
「そうよ!だからのだめには、うつぼかずらとか、食虫花で良かったのよ!」
「いや、真澄ちゃん。そりゃー花屋の方が用意できねーから。」
峰の絶妙な突っ込みで、皆は大爆笑した。真澄は不満げに腕を組み、フン!と顔を逸らした。
「これ、本当にありがとう。のだめもすっげー喜ぶよ。じゃあ、練習始めようか。」
俺の合図で峰たちが定位置に戻ると、午前中の練習が始まった。

9 名前:「喪失」・50[sage]:2005/06/23(木) 07:04:56 ID:r+4xOq2S
R☆Sオケとの練習も3回目。流石に3回目になると、色々と見えてくるものがある。
最初はお互いに様子見だった関係も、そろそろ本性が出てきたという事か・・・。

今回の公演は週末の土日二日間、それぞれ昼公演・夜公演の4回行われる。
A日程・B日程あり、それを俺と松田さんの二人がそれぞれ指揮する事になっている。
つまり、同じオケで同じ楽曲を、二人の個性の違う指揮者が振るという事だ。

土曜日の昼公演が俺のAプログラム、夜公演は松田さんのBプログラムだ。
そして日曜の昼公演は松田さんのAプログラム、夜公演は俺のBプログラムになる。
だから、例えば土曜日一日通して聴いても、曲がかぶる事がなく指揮者の競演が楽しめる。
また二日にまたいで昼か夜の公演のどちらかに行けば、同じ内容での指揮者の聴き比べも出来る手筈だ。
最初にこの計画を峰から聞かされた時は、革新的で面白い試みだと思った。
峰の目の付け所の鋭さに、俺は素直に感服した。

つまりオケと曲は同じで、違うのは俺が振るか松田さんが振るか・・・という一点だけだ。
こんな体験、滅多に出来るものではない。これこそ指揮者冥利に尽きるという訳だ。

だが。
今日の練習を通してハッキリと判ったのだが・・・。
俺の指揮が、いつの間にかもう一方の松田さんのアレンジの雰囲気にのまれつつある。
指示を出しても、オケのメンバーにはその通りに反応し切れない事が、ちょくちょく出てきた。
すっかり松田さんの色に染まっているこのオケでも、俺の指揮でそこから俺なりの音を生み出したいのだが・・・。

10 名前:「喪失」・51[sage]:2005/06/23(木) 07:05:41 ID:r+4xOq2S
「違う!そこは次のDの動機に帰着する為の大事な部分だろっ!?もっと迷いながら!ためて!!」
「第2バイオリン!さっきから走ってる!
 連続する音だから走リ易いなんて初歩的なミス、それでもプロのオケか!?」
「何回も言わせるなっ!そこの音程低い!!」


イライラが頂点に達する頃、俺の持ち時間のタイムリミットの12時になった。
公演まで後数日しかない。明後日にはもうゲネプロだ。
まだここには俺の求める音楽がない・・・!俺の音がつくりきれていない・・・!
こんな状態のまま、本番を迎える事になるのか・・・?俺はしばし苦悩した。

「明日の午後は、今日まとめきれなかったBプログラムの曲を重点的にやります。
 各自、そのつもりでいて下さい。ではこれで・・・。」

俺が午前中の練習の解散を告げると、オケメンバーのあちこちから何とも言えない溜息が漏れた。
峰が俺に何か話しかけたそうのが分かったが、取材の約束がこの後に控えていた為、
それには気が付かない振りをして俺はそのまま練習室を後にした。

11 名前:「喪失」・52[sage]:2005/06/23(木) 07:06:37 ID:r+4xOq2S
オケが借りている練習室の近くにある喫茶店で、軽めの昼食を取りながら取材を受けた。
・・・あまり食欲がない俺は、アイスコーヒーばかり飲んでいた。
流石に追加の三杯目を頼んだ時は、向かいに座っていたライターの女性が心配そうに俺に尋ねた。

「お加減でも悪いんですか?それとも何か、心配事でも・・・?」
「いえ、そんな事は。少し・・・暑さにやられているんだと思います。
 日本の夏は向こうと違って、蒸し暑いですから・・・。」
「そうですか?あ、きれいなお花・・・。どなたかに?」
女性誌のライターは目聡く、バックの脇に隠すように置いてあった峰達から預かったアレジメントを見つける。
「オケのメンバーから共通の友人へです。今日、退院なので。」
「ご友人?どういったご関係の方ですか?」
「プライベートな事なので・・・。すみません、この後用事があるので、そろそろ取材の方・・・。」
俺がそう言ってその質問を遮ると、勘のいい女性らしく、それ以上は突っ込んでこなかった。
「千秋さん、本日は時間を取って頂いて有難うございました。公演の成功をお祈りしております。」
「いえ、こちらこそ。我が侭言って昨日から今日に変更して、本当に申し訳ありませんでした。
 では、ここで失礼します。」

先に喫茶店を出て、ふと店のウィンドウからライターの方を見た。
すると彼女は何か思惑を秘めた瞳をして、じっとこちらを見つめている。
少し気になったがのだめの病院に遅れるといけないので、俺はそのまま小走りで駆け出していた。

12 名前:「喪失」・53[sage]:2005/06/23(木) 07:07:07 ID:r+4xOq2S
予定より早く横浜に着くと、俺は母さんの携帯に電話した。
電話が繋がらなかったので、三善の家に寄らないでこのまま病院に行くかと思っていると、
すぐに俺の携帯が着信した。
それは公衆電話からで母さんだった。もうすでに、病院に来ているらしい。

諸手続きに色々手間取って、退院は一時間後の三時半位になるようだ。
今から俺も病院に向かう事を伝えると、母さんとはのだめの病室前で落ち合うことになった。
由衣子も学校が終わったらまっすぐに駆けつけると言っていたが・・・やっぱり間に合わないだろう。

病院に着くとすぐに、のだめの病室へ足を向ける。
病室前に行くと、母さんはまだ来ていない様だった。
もしかして・・・と思いフロアの向こう側にある休憩所の方を見るが、今は誰の姿もない。
母さんはのだめの部屋の中にでも居るのか?
・・・そう思いながら俺はドアを3回ノックした。

・・・・・・

今日は中から、アイツの声が聞こえてこない。

俺はドアをそっと開けた。
白いベットの上には、綺麗に畳まれた布団とのだめの荷物。
・・・それから俺があげたトイピアノがポツンと置いてある。

13 名前:「喪失」・54[sage]:2005/06/23(木) 07:07:37 ID:r+4xOq2S
どうやらのだめもここには居ないようだ。
山口先生の診察でも受けているのか?と暫く思案していると、後ろから急に声を掛けられた。

「千秋さん?千秋真一さんですか?」
「はい。そうですけど?」
年配の女性の看護士が中に入ってきた。
「のだめちゃんならこちらにいますよ。ご案内しますね。どうぞ〜。」
女性の看護士はそう言って微笑する。そして俺を先導するように、ハキハキと歩き出した。
俺はその看護士さんの後に従った。

「山口があなたとお話したがっておりました。後ほど山口も呼んでまいりますので。」
「山口先生が?・・・後、母が見当たらなくて。病院内にいるはずなんですが・・・。」
「千秋さんのお母様は今、会計の方へ行かれていらっしゃいますよ。もう間もなく戻ってこられると思います。」
「・・・そうですか。」

二階の吹き抜けに架かる渡り廊下を渡り切った所にあるエレベーターで、5階まで上がる。
5階に到着しエレベーターから降りた瞬間、すぐに此処には何科があるのか俺にも分かった。

壁一面は淡いピンク色で、所々に折り紙で形作った動物などが貼ってある。
休憩所も、可愛らしいウサギやクマの形をしたソファが置いてあった。
流されているテレビ画面の内容も、小さな幼児向けだ。

14 名前:「喪失」・55[sage]:2005/06/23(木) 07:08:04 ID:r+4xOq2S
「ここ・・・小児病棟ですか?」
「ええ、そうですよ。あれなんて、すっごく可愛らしいでしょ?」
そう言って看護士さんは、壁に貼ってある子供達の絵の方を指し示した。

小児病棟の奥の方に一体何があるというのだろう?そう思いながら歩いていると・・・。
・・・遠くから、ポロンポロン・・・と聞き覚えのある音が聞こえてきた。

---ピアノだ・・・。

「もしかして、アレ・・・。」
「気がつかれました?ええ、のだめちゃんですよ。山口が小児科のプレイルームの中に
 アップライトのピアノがある事をのだめちゃんに教えましたら、弾きたいとおっしゃって。」

プレイルームに歩みを進める度、ピアノの音がどんどん大きくなる。
この曲は・・・そうだ、俺も知っている・・・。
のだめの好きな”プリごろ太”の主題歌だ。

「ほら、あちらですよ、のだめちゃん。」
看護士に指し示された方向を見ると、ピアノを弾いているのだめの後姿があった。


のだめを見た瞬間、俺は後ろから鈍器で頭を殴られた様に、愕然とした。

15 名前:「喪失」・56[sage]:2005/06/23(木) 07:35:24 ID:r+4xOq2S
アップライトのピアノに向かうのだめの両脇や後ろに、沢山の子供達が甘えるように纏わりついている。
子供達が耳元で何かリクエストして・・・のだめは嬉しそうにピアノを奏で始める。
すると子供達から歓声が上がり・・・ピアノに合わせてのだめも子供達も一緒に歌い始めた。
・・・ふと、のだめが右側を向く。
その瞬間、その横顔がこちらからも伺えた。

---それはとても・・・とても楽しそうで・・・見た事もない位幸福そうな、のだめの笑顔だった・・・。

「では私は山口を呼んでまいりますので。こちらでお待ちになって下さい。」
そう言って、看護士は今来た道を引き返して行った。

俺は、この光景によって暗示された運命の残酷さに、暫く立ち竦んでいた。

もしかしたら・・・もしかしたら、俺に会わなかったのだめの未来予想図が、これなのか・・・?
・・・ひどく呼吸が苦しい。
脇の下から嫌な汗が流れてくる。
突付けられた現実に、俺の頭が思考する事を拒絶している。

---そういえば。
俺はあの時、シュトレーゼマンに何て言ったんだ?
これが”俺に会うまでただ楽しくピアノを弾いていた・・・のだめ?”

16 名前:「喪失」・57[sage]:2005/06/23(木) 07:35:57 ID:r+4xOq2S
俺がアイツを引き上げられたら・・・なんて考え。
物凄く押し付けがましい独りよがりのエゴだった事に、今更ながら気がついた。
のだめにとって何が最善なのかは・・・俺にとって最善とは限らないという事も・・・。
だって・・・。
今のアイツは、五年前の”幼稚園の先生になりたいのだめ”だ・・・。

---もしかして・・・。
---もしかして、このまま記憶が戻らなかったら・・・アイツは・・・?

「のだめちゃん、もうすでに、子供達に大人気なんですよ。楽しそうに弾かれているでしょ?」
俺が苦悶している間に、山口先生がすぐ横に来ていた。
「千秋さんからのプレゼントだそうですね・・・あのアンティークの黒のトイピアノ。
 ・・・あれを見て、ここのプレイルームにピアノがあった事を思い出したんです。」
そう言うと山口先生は腕組みをした。
「・・・今は楽しそう・・・ですが。少し気になる事があるんです。」
先生は表情を曇らせ、言いにくそうに話はじめた。

17 名前:「喪失」・58[sage]:2005/06/23(木) 07:36:51 ID:r+4xOq2S
「もしかしたら・・・。少しのだめちゃんを過信しすぎたかもしれません・・・。」
”私の不徳の致すところです・・・”と言って、山口先生は俺に頭を下げた。
「過信・・・ですか?」
「ええ・・・。実はのだめちゃん、昨日の夕食をほとんど残されたんですよ。今朝も半分程しか・・・。」
「え、食事を?アイツがですか?」
「入院した日から、食事だけはきちんと召し上がられていたので、のだめちゃんは大丈夫だと・・・。
 やはり昨日のお友達のお見舞いに、何か興奮された様ですね・・・。」

---昨日の、俺と峰達との見舞いの間、アイツはそんな素振り、ちっとも見せていなかったのに・・・。

「それに早めてしまった今日の退院も、本当なら延期したい位なのです。
 ・・・昨日、あんな姿を目撃してしまったから・・・。」
「あんな姿?」
「ええ。私は昨夜宿直で・・・。
 のだめちゃんが夕食をほとんど残した、と担当の看護士から連絡を受けておりましたので。
 ・・・気になって、夜半過ぎに病室の方へ巡回に出たのですよ。」

山口先生は厳しい表情のまま話を続けた。

18 名前:「喪失」・59[sage]:2005/06/23(木) 07:37:24 ID:r+4xOq2S
「深夜2時頃でしたか・・・。
 様子を見ようとのだめちゃんの部屋の前まで行くと・・・扉が少し開いているのに気がついたのです。
 おや・・?と思いつつも扉に手をかけた瞬間・・・中から”トーン”と木琴の様な音が聞こえて・・・。
 私は一寸驚いて手を離しました。夜中でしたし・・・。病院では余り聞きなれない音ですからね・・・。」
そこで先生は少し笑った。

「・・・・・・暫くためらった後、私はおそるおそる中を覗きました。
 すると窓際に立っている人の姿がぼんやり・・・と浮き上がっているのが見えました。
 ベッドサイド脇のローチェストの上に置いてある”何か”を見つめている様でした。
 
 ”のだめちゃん?”

 ・・・私はそう声を掛けようとして、途中で言葉を呑みこんでしまいました・・・。
 のだめちゃんの表情が、余りにも遠くて・・・。
 そこに居たのは・・・私の知らない表情をしたのだめちゃんでした・・・。」

先生は眉を顰め、廊下の壁に腕を組んだまま凭れ掛かった。
俺は先生の話を聴きながら、自分の表情がどんどん強張っていくのを感じていた。

19 名前:「喪失」・60[sage]:2005/06/23(木) 07:37:55 ID:r+4xOq2S
「のだめちゃんの部屋はよく見ると窓が開いていて・・・
 そこから、雨上がりの、湿った土の匂いを帯びた夏の夜風が吹き込んでいました。
 月明かりの中、白いカーテンが風にはためいて・・・
 ・・・のだめちゃんの入院着の裾も、同じ様に幻想的に揺らめいていてました。
 
 のだめちゃんは、あのトイピアノを指で押さえた姿勢のまま、じっと考え込んでいて・・・。
 彼女の瞳までは月の光も届かず、その暗く翳った色合いが益々彼女の表情を判りづらくさせていました。」

山口先生は深く息を吸った。

「”のだめちゃん?”
 ようやく私がそう声を掛けると・・・彼女は凄く驚いて振り返り、”あ、山口先生。”と言いました。
 でももうその瞬間、のだめちゃんはいつもの表情に戻っていたのです・・・。」
「いつもの・・・。」

”どうしたの?のだめちゃん・・・眠れないの?”
”いえ、トイレの帰りで・・・雨が上がったみたいだから、チョト窓の外のお月様でも見ようかナって・・・。
 も、もう寝マス・・・。”
”・・・そう。あんまり夜風に当たって風邪を引くといけないから・・・。おやすみなさい。”
”ハイ・・・。おやすみなさい、山口先生・・・。”

トイレ帰り・・・そう言った彼女の足元は・・・素足だった。
スリッパは、今彼女が立っている側とは反対側のベットの脇に、キチンと並べられて置いてあった・・・。

20 名前:「喪失」・61[sage]:2005/06/23(木) 07:38:23 ID:r+4xOq2S
「のだめちゃんがどうしても今日退院したい、というので許可しましたが・・・。
 暫くは彼女からなるべく目を離さないで下さい。特に千秋さん、あなたにお願いしたいのです。」
「俺に・・・何故ですか?」
「のだめちゃんは余り自分の本心を見せないきらいがあります。今回の事で良く分かりました。
 でも、あなたは彼女にとって特別の存在なんです。昔も、もちろん記憶を失った今も・・・。
 でなければ、あなたの贈られたあのトイピアノ・・・。
 あんな風にのだめちゃん、深夜に一人で見つめていたりしないでしょうから・・・。」

---特別な存在・・・。
---記憶を失ったアイツにとって、俺は今でも本当にそうなんだろうか・・・?

「それから・・・思い出のある場所なんかに行かれる事があるかと思いますが・・・
 今はまだ、落木された場所だけは、絶対にのだめちゃんには見せないで下さい。」
「それは・・・アイツにとって・・・何か良くない影響をもたらすかもしれないんですね?」
俺がそう尋ねると、山口先生は強く頷いた。
「脳に異常がない・・・この事突き詰めて考えれば、
 頭を打った事実が、余程のだめちゃんにとってネガティブな要素を含んでいるという事です。
 この状態で、その場所を見せるのは、彼女の精神に深刻なダメージを与える恐れがあります。」

21 名前:「喪失」・62[sage]:2005/06/23(木) 07:39:07 ID:r+4xOq2S
先生のこの言葉が、俺にある事実を思い起こさせた。
そうだ・・・!!大川でアイツの親父さんが言っていた、アノ事件・・・!

「あの、先生!これは・・のだめの父親から聞いた話なのですけど・・・。
 ・・・昔、のだめがピアノのレッスン中に反抗して、先生の腕に噛み付いて・・・
 その先生が振り払った手で吹っ飛ばされたアイツは、壁に頭をぶつけ流血した事があったそうです。
 それから暫くの間、のだめはピアノを全く弾けない程、ショックを受けていたとか・・・。」
「それは・・・とても重要な事実かもしれません!
 成る程・・・トラウマになっていもおかしくない・・・心の傷・・・。」
先生は思案顔で、子供たちに囲まれてピアノを弾いているのだめの方を凝視している。

「あ、真兄ちゃま、いたー!征子ママ、早く早くっ!」
廊下の向こうから、由衣子が制服姿のままこちらへ走ってくるのが見えた。
その後ろには母さんがゆっくりとしたスピードで歩いて来る。
手にはのだめの荷物と、俺のあげたトイピアノが入った紙袋を持っていた。

「・・・どうやら、退院の手続きが済んだようですね。
 千秋さんが先程おっしゃった事、少し私なりに考えてみますので・・・。
 お仕事色々お忙しいとは思いますが、のだめちゃんの事、私からもお願いします。」
「・・・はい。」

22 名前:「喪失」・63[sage]:2005/06/23(木) 07:39:35 ID:r+4xOq2S
先生と俺の会話に割り込む様にして、由衣子が俺に飛びついてきた。
「よかったー!間に合ったー!!」
そして息を切らしたまま、キョロキョロと辺りを見回した。
「あれ、のだめちゃんは?真兄ちゃま、一緒じゃなかったの??」
「のだめなら、ほら後ろに・・・。子供達と一緒にピアノを弾いてる。」
俺が顎で指し示すと、由衣子と母さんは二人でプレイルームを覗き込んだ。
「のだめちゃん・・・楽しそう・・・。よかったぁ・・・。」
「本当ね・・・。だいぶ元気になったみたいで安心したわ。」
「母さん、のだめの事、全部済んだの?」
「ええ。大分時間がかかってしまってごめんなさい。
 のだめちゃんの病室の前に行ってもあなたの姿が見えないし・・・。
 そしたらロビーで由衣子ちゃんに会って・・・。看護士さんがここに居るって教えてくれたのよ。」

「おい!のだめ!」
俺はプレイルームの中にいるアイツに声を掛けた。
「あ、千秋先輩!」
のだめは振り返り、俺達を見つけると嬉しそうに笑った。
「退院の手続きが済んだから、先生に挨拶して帰るぞ!」
「あ、はーーーーい!」

のだめは周りにいる子供達に何やら話しかけ、ピアノから立ち上がった。

23 名前:「喪失」・64[sage]:2005/06/23(木) 07:48:50 ID:r+4xOq2S
「えー!のだめ行っちゃうのーーー?」
「やだー!もっとおうた歌うーー!」
「のだめーー!!帰っちゃダメー!!」

子供達は、部屋から出てきたのだめの後を追いかけてきて、必死にアイツに縋り付く。
少し困った様に笑いながらのだめはしゃがみ込むと、子供達と視線を合わせて言った。

「ゴメンナサイ!のだめ、もう行かないといけないんデス!でも、また明日病院に来ますから!」
”またみんなで一緒に歌いましょうネ〜!”と一人一人の頭を撫でてやっていた。

「お待たせしてごめんなサイ!あ、千秋先輩、綺麗なお花!」
のだめはようやく俺達の所に戻ってくると、真っ先に俺が手にしているアレジメントに目をとめた。
「あー、昨日見舞いに来た峰達から・・・。退院祝いにって。」
「ふぉぉぉ〜!のだめにですか?しゅてき〜!でも、昨日入院のお見舞いを貰ったばかりですヨ・・・?」
「ま、みんなの気持ちだからさ・・・受け取っておけよ。」
俺がアレジメントを渡すと、のだめははにかんだ笑顔を見せて、それをそっと大きな手で包み込んだ。

24 名前:「喪失」・65[sage]:2005/06/23(木) 07:49:39 ID:r+4xOq2S
「あ、由衣子ちゃんも来てくれたんですネ〜。ありがとうデス!」
「えへへ。ホームルーム抜け出してきちゃった。由衣子・・・どうしてものだめちゃんのお迎え、来たかったの。」
「由衣子ちゃんは入院中も、毎日学校帰り、お見舞いに来てくれましたよネ・・・。
 のだめ、スゴイ嬉しかったんですヨ?でも今日からはもう一緒ですね!」
「うん・・・。だからのだめちゃん・・・早く一緒に帰ろ?」
「ハイー!」
「それと・・・由衣子ね、のだめちゃんの”もじゃもじゃ”聴きたい・・・。」
「もじゃもじゃ!お安い御用ですヨ〜!あ、山口先生、色々とお世話になりました。」
のだめはピョコンと、俺の傍らに居た山口先生に頭を下げた。

「退院おめでとう、のだめちゃん。
 身体の方は痛みも治まってきたみたいだけど、ちゃんと病院には毎日通って下さいね。」
「ハイ。明日の診察は・・・午後でしたよね?のだめ、ちゃんと通って早く治しマス!」
「退院したといっても、まだ本調子ではないのですから、無理をしてはいけませんよ?」
「気をつけマス。先生、本当にありがとうございましタ・・・。」
「山口先生、わたくしからもお礼を。・・・本当に色々と有難うございました。
 まだまだお世話になる事があろうかとは思いますが、どうぞ今後とも宜しくお願い申し上げます。
 ・・・ではわたくし達、これで失礼致します。」
母さんが山口先生に深くお辞儀した。俺達もそれに倣った。


タクシーで帰る俺達を、山口先生は病院のエントランスまで出てきて見送ってくれた。
車中から後ろを振り返ると、俺達の姿が見えなくなるまで大きく手を振ってくれている、先生の姿が見えた。

25 名前:ショコラ[sage]:2005/06/23(木) 07:53:48 ID:r+4xOq2S
ここまで千秋?編でした。
以下から、短いのだめ?編、それより少し長いエロ?編の予定です。

あ!
・・・もう労働に行く時間でした。ごめんなさい。
続きは後日です・・・。

作品案内のテンプレ前に投下してしまった失礼をお許し下さい。

26 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 07:56:32 ID:fxCmC00I
朝からおつかれさまですー。

27 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 18:33:28 ID:UcMlP/rX
ジョコラさん お待ちしておりましたー!
のだめ編&エロ編の投下を楽しみにしております。GJ!

28 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/23(木) 19:14:06 ID:G+07XMI9
ショコラさん、おつかれさまです!
続き、楽しみにお待ちしてますねv

29 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 01:53:37 ID:XzglRZTq
さて、エロまで正座で待ってようか

30 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 02:04:02 ID:VRE+UmlA

  ∧_∧
 ( ・∀・)  やべーおもすれー
 ( ∪ ∪   続きが気になる
 と__)__)

31 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 07:51:42 ID:GooLOQg/
ショコラさんお待ちしてましたo(^o^)o
ショコラさんやヴァイオリンさんに刺激されて初執筆中です。が難しいですね…。
まだチラシの裏でつたない文章ですが、出来上がったら投下してもよろしいでしょうか?
多分まだまだ先…

32 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 12:31:31 ID:SNRHDvvB
>>30
かばええw
ワクワクして待て。

33 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 18:12:50 ID:yJ6ADCfb
>>31

お待ちしておりますよ!
頑張ってくださいね!!

上手い方のを見ていると、
改行とか割とした方が見やすいみたい。

楽しみにお待ちしています☆

34 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 19:43:13 ID:GooLOQg/
↑意味わかんないれす

35 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 19:49:04 ID:yJ6ADCfb
読みにくいから改行しろってことだ

36 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/24(金) 20:11:50 ID:GooLOQg/
>>31です
今は携帯からです。
実際のカキコはPCから頑張ります

37 名前:ショコラ[sage]:2005/06/25(土) 12:25:44 ID:9kUR0cp/
皆様、おはようございます。本誌発売日ですね。
どうかどうか、足をくずして楽にしてくださいませ〜。

のだめ?編、落とせる所まで投下していきます。

38 名前:「喪失」・66[sage]:2005/06/25(土) 12:26:46 ID:9kUR0cp/
千秋先輩の家は、見た事もない程、大きな豪邸だった・・・。

プラタナスの並木道が続く坂の上。
そこを上りきった所にあるその瀟洒な洋館は、まるでそこだけ外国みたいで・・・
気が付くと私の口元は、驚愕でだらしなく開いてしまっていた。

---今から行く所は千秋先輩のお母さんの実家、とは聞いていたケド。
---先輩・・・もしかして、ものスゴイお金持ちなんですか・・・?

そう思いながら、どうして自分がここに居る羽目になったのか・・・?と戸惑いを隠せなかった。

「のだめちゃん、早く早くっ!」
由衣子ちゃんに手を引っ張られる様にして、先輩の家の中へ入る。
どの部屋もそこかしこに、高価なアンティークの花瓶やお皿が・・・いかにも普通に置いてあった。
お部屋の中にひいてある絨毯も、足が容易く沈み込む位・・・ふかふかだ。

---こーゆうの、有名人の豪邸紹介!とかのテレビ番組で見たことありますヨ・・・。
---これで奥からペルシャ猫とか、おっきな犬が出てきたら、もう完璧でデス・・・。

気後れしている私には気が付かないのか、由衣子ちゃんは二階の方へ歩みを進める。
私は相変わらず家の様子に圧倒されながら、素直にくっついていった。

39 名前:「喪失」・67[sage]:2005/06/25(土) 12:27:21 ID:9kUR0cp/
「のだめちゃんの部屋、ここね。のだめちゃんの荷物はあそこに置いてあるから。
 それから今日はね、真兄ちゃまが晩ご飯作ってくれるって・・・のだめちゃんの為に!」
「え、千秋先輩が?の、のだめの為に?」
「何か足りない物あったら言ってね?ご飯出来たら呼びに来るから・・・。それまでゆっくりしててね!」
由衣子ちゃんはマシンガンの様に早口でまくしたてると、さっさと部屋を出て行ってしまった。


---こんな大きな客間に一人ぽつん、と残されて・・・のだめ、一体どうしたらいいんですかネ・・・?

特にやる事もないので、ひとしきり部屋をぐるっとした。
部屋の真ん中にはキングサイズのクラシカルなベット・・・。
傍には、おそらくアンティークと思われる琥珀色のドレッサーに、それと揃いのライティングデスクが・・・。
部屋の奥の方からは外に出れる様になっていて。
まるでロミオとジュリエットの舞台に出てくる様な、蔦の絡まったテラスが其処にはあり・・・

---自分がここに居るのが、ますます場違いな気がしてきた。

だから由衣子ちゃんが食事に呼びに来てくれた時も、私はソファに腰を掛けて放心したままだった。

40 名前:「喪失」・68[sage]:2005/06/25(土) 12:27:47 ID:9kUR0cp/
いい匂いがしてくる1階の食堂へ降りると・・・部屋中に湯気が漂っているのにすぐ気が付いた。

「あ、お鍋!」
10人はゆうに座れるであろう長いダイニングテーブル上に、ちょこんと一つお鍋が乗っかっている。

「夏なのにお鍋ですか?皆サン、お鍋好きなんですネ〜?のだめも大好きですけど・・・。」
”だってお鍋は”・・・と私が言いかけると、先に来て座っていた俊君が、
「失敗した事ないから・・・でしょ?」
と悪戯っぽく続けた。
「な、何で知ってるんデスか?」
私が面食らっていると、俊君はさも簡単そうに種明かしをした。
「だって、のだめさんが初めてうちに来た時に作ってくれたのが、お鍋だったよ。」
「へ?そ、なんですか!?」
「後、おにぎりも失敗した事がないって、一緒に沢山出されたな・・・。」
千秋先輩の叔父さんが笑いながら部屋に入ってきた。

「皆揃ったようね。じゃあ、ご飯にしましょうか?」
先輩のお母さんが、綺麗に切り揃えられた野菜等が盛り付けられている大皿を運んできた。
「あ、のだめ、お手伝いしマス・・・。」
「いいからお前は座ってろ。かえって邪魔。」
千秋先輩が黒いギャルソンエプロン姿で顔を出した。
それは意外と似合っていて・・・私はちょっと赤面してしまった。

41 名前:「喪失」・69[sage]:2005/06/25(土) 12:28:20 ID:9kUR0cp/
「あ、真兄ちゃま。これなぁに?」
由衣子ちゃんが先輩が持ってきた料理を覗き込む。

「ブロッコリーとミレリーゲ??お鍋と・・・イタリアン??」
「・・・ほら!お前の好きな”呪文料理”!!」
先輩は私の前に、クリームソースの料理をドン!と置いた。

「ほわぁ〜おっきいマカロニ〜!美味しそーですネ!」
私が料理に見とれながらそう言うと、先輩は一瞬きょとんとした顔をし、それからふ、と笑った。
「・・・言う事は・・・やっぱり同じなんだな・・・。」
「え?」
「いや・・・なんでもない。そろそろ鍋、始めるか・・・。」
先輩がエプロンを取りながら席に着くと、皆各々の椅子に座った。

「しかし・・・やっぱり暑いな・・・。夏に水炊きは・・・。」
「え〜!今日はのだめちゃんの退院祝いなんだから、お父さんそんな事言っちゃダメ!」
由衣子ちゃんが先輩の叔父さんに甘えるように抗議する。
「ははは。そうだったな?由衣子、お父さんが取ってあげるぞ?何がいい?」
「父さん・・・。まず始めにのだめさんにとって上げないと・・・。ったく、自分の娘に弱いんだから。」
「あ・・・・・・ああ。そうだったな・・・。つい、私とした事が・・・。」
叔父さんは俊君の鋭い指摘に気恥ずかしそうに笑って、私に何がいいか?と聞いてくれた。
「え?いいんデスかー?じゃ、のだめ、しいたけとマロニーとネギと鶏肉と水菜とお豆腐と・・・。」
「のだめ・・・。鍋は沢山あるんだから、焦ンな・・・。」
千秋先輩が白ワインをあけながら呆れた様に零すと、みんながどっと笑った。

42 名前:「喪失」・70[sage]:2005/06/25(土) 12:28:47 ID:9kUR0cp/
その後、夕御飯も和やかに進み・・・。
今はみんなで食後のデザートのオレンジババロア(先輩特製)を堪能していた。

そのデザートは果肉をくりぬいた後のオレンジを容器にして、すごく凝っている。
スプーンを入れると中は二層になっていて、上はオレンジのムース、下がババロアだった。
それを大きく掬い取り、口いっぱいにほおばると、
ムースのふわふわっとした所とババロアのプルプル感が絶妙なハーモニーを奏でていた。
千秋先輩は、とってもお料理上手みたいだ。

---それはとても美味しかったのだけど・・・。

私にはどうしても今、聞いておかなければいけない事があった。
・・・実は先輩のお家に入ってから、ずっとタイミングを見計っていたのだ。
とうとう私は、”その事”を切り出した。

「あの〜。つかぬ事をお聞きしますケド・・・。」
「なぁに?どうしたの、のだめちゃん・・・?」
「なんだ?何か言いたいことでもあンのか?」

暫く私がもじもじとためらっていると、千秋先輩が早く言うように促した。

「その・・・のだめって・・・千秋先輩の・・・彼女、なんですよネ?」
「げほげほげぼっがほっ!!!」
先輩は食べかけのババロアを喉につかえさせ、激しく咳き込んだ。

43 名前:「喪失」・71[sage]:2005/06/25(土) 12:29:12 ID:9kUR0cp/
ちょ、ちょっと真兄!大丈夫・・・?」
「きゃ〜〜!由衣子も聞きたぁ〜い!真兄ちゃま、どうなのぉ〜?」
「げほげほっ!お前っ・・・こんな衆人環視の中で・・・するような話じゃねーだろっ・・・!」
「だって・・・。ただの先輩後輩なら、こんなに良くして貰えるハズないしっ!
 千秋先輩、入院中毎日お見舞いに来てくれたし・・・その・・・やっぱりのだめの彼氏なのかなって・・・?」
「真一、ちゃんとのだめちゃんに説明してなかったの?」
「せ、説明って・・・。そんなモン・・・別に・・・。」
千秋先輩は顔を真っ赤にしながら、低く小さい声で呟いた。

「我が息子ながら、最低ね。のだめちゃん・・・ずっと分からないまま、ここへ連れて来ちゃったの?」
「普通分かるだろ・・・。」
「のだめちゃんは、真兄ちゃまの彼女でしょ!パリにまで連れて行ったくせに!」
「え、そうなんですカ?だからのだめ、パリに行ったんデスか・・・?」
「っな!!違うっ!!そのっ・・・ちゃんと、せ、正式に・・・付き合いだしたのは・・・パリに行ってからで・・・。」
「ほー!正式にとは、一体どのような定義でだ?真一、私にも分かる様に説明しなさい。」
「え〜〜!そんなの嘘だぁ〜!のだめちゃん、パリ留学までずっーとここで由衣子達と生活してたんだよ?
 普通彼女じゃない人と、一つ屋根の下で暮らさないでしょ〜?」

竹叔父さんや由衣子ちゃんが、先輩をからかう様に質問攻めするので、先輩はついに怒った。
「だからっ!そーゆー事は、後で俺から直接のだめに話す!この話はっ!これで終わりっ!」

一方的に話を打ち切ると、千秋先輩はさっさと部屋から出て行ってしまった。

44 名前:「喪失」・72[sage]:2005/06/25(土) 12:29:54 ID:9kUR0cp/
「ごめんなさいねぇ〜?のだめちゃん・・・。出来の悪い息子で・・・。」
先輩のお母さんが笑いを堪えながら、私に詫びた。
「ま、あれじゃない?あの頃の真兄とのだめさんの関係って・・・友達以上恋人未満?
 僕から見ると、ずっとそんな感じだったけど。」

---友達以上恋人未満・・・?

「むむん・・・!つまりあ○ち充の漫画みたいな感じだったんデスね?のだめ、少し分かりましタ。」
俊彦君は私の言葉が理解出来なかったのか、は?と首を傾げていた。


食事が終わった皆が、各々自分の部屋に戻ろうとし始めるのを見て、私は由衣子ちゃんに小さく声を掛けた。
「由衣子ちゃん、由衣子ちゃん・・・チョト・・・。」
「なぁに?のだめちゃん。」

隅の方へ由衣子ちゃんを連れてくると、私はあるお願い事を話した。
「あの・・・のだめと一緒にお風呂に入ってくれませんか?出来れば・・・背中とか頭とか洗って欲しいんデス。
 のだめ、まだ身体が痛くて、自分一人じゃ洗えなくて・・・。」
「モチロン!いいよ!じゃあ、今から由衣子と一緒に入ろっか!」
由衣子ちゃんは二つ返事で引き受けてくれたので、私達はバスルームで10分後に待ち合わせした。

45 名前:「喪失」・73[sage]:2005/06/25(土) 12:30:25 ID:9kUR0cp/
先輩のお家はやっぱりお風呂(しかも大理石・・・)も大きかった・・・。

手足を伸ばしても届かない位、広々ゆったりとした湯船につかると、つい鼻歌が出てくる。
由衣子ちゃんに頭も身体も洗って貰った私は、すっかりいい気分になっていた。

「のだめちゃんの背中、紫色・・・。すごい痕だね・・・。」
由衣子ちゃんが消え入りそうな声で言い、そっと私の肩辺りを撫でた。
「ごめんね・・・。由衣子のせいで・・・。」
「あはは〜。痕はスゴイですけど、もう痛みはだいぶ取れたんですヨ?気にしないで下サイ!」

---由衣子ちゃんの表情が曇ったままなので、調子に乗って、私はもう一つお願いしてみた。

「お風呂からあがったら・・・。
 のだめのココに湿布張って、それから包帯を巻いてもらっても・・・いいですかネ?」

”手が届かないんですヨ〜。”と笑いながら伝えると、
由衣子ちゃんはお湯の中をぬって、私の右横につつつ・・・と寄ってきた。
何だろうと思い、由衣子ちゃんの顔を覗き込むと、いたずら好きそうな瞳がくるくると煌いていた。

「え〜それならぁ〜・・・真兄ちゃまにやって貰ったら?」
「ぎゃぼっ!?」
「・・・うふふ、嘘だよのだめちゃん・・・。由衣子がちゃんとやってあげるから安心して?」
「・・・もう、由衣子ちゃん、のだめをからかわないで下サイ。」

---もうこれで、由衣子ちゃんが私に余り気を遣わなくなってくれればいいのだけど・・・。

そう思いながら、今はシャンプーをしている由衣子ちゃんをぼんやりと見ていた。

46 名前:「喪失」・74[sage]:2005/06/25(土) 12:30:53 ID:9kUR0cp/
部屋へ戻るともう11時過ぎだった。
病院ではとっくに寝ていた時間だったので・・・とても眠い。

でも昨日は、夜中起きている所を、山口先生に見られてしまって・・・。
先生は私の事どう思っただろう・・・?変に気をまわしてなければいいのだけど・・・。

ベットに入ろうとすると、テーブルの上に置いてある、トイピアノに目が留まった。
さっきまで、確かここには何も無かったから・・・。
先輩のお母さんが運んできて、置いていってくれたのかもしれない。

---先輩から貰った、素敵なアンティークの黒のグランド型のトイピアノ・・・。

そういえば、千秋先輩と今日はあんまりお話してないな・・・そう思った瞬間。
部屋をトントン、と控えめにノックする音が聞こえた。

---誰だろう・・・?もしかして・・・千秋先輩?

期待を込めてドアを開けると、そこには由衣子ちゃんが枕を両腕で抱きしめて立っていた。
「どうしたんですか?由衣子ちゃん・・・?」
「今日・・・のだめちゃんと・・・一緒に寝てもいーい?」
「もちろんですヨ・・・。さぁ、中へどぞ〜。」

由衣子ちゃんを部屋へ招き入れると、二人でふかふかのベッドに潜り込んだ。

47 名前:「喪失」・75[sage]:2005/06/25(土) 12:31:47 ID:9kUR0cp/
「前にも、由衣子とのだめちゃん・・・一緒にこうやって寝た事があるんだよ・・・?」
ベッドに入った瞬間、急に眠気が襲ってきた為、私は半分まどろみながら由衣子ちゃんの声を聴いていた。

「のだめちゃん・・・さっきはありがとね・・・由衣子が気を遣わない様に、わざと頼み事・・・。」
「・・・え〜・・・何のコト・・・です・・・か〜・・・。」
眠たい振りをして、由衣子ちゃんの告白を聴かなかった事にした。
「ううん・・・別にいいの・・・なんでもない・・・。」
そう言うと由衣子ちゃんは、私の背中に手を回し、胸元に頬を寄せてぎゅーっ・・・としがみついてきた。

「・・・由衣子がこうしても・・・背中・・・痛くない?」
「大丈夫ですヨ〜。ふふふ・・・由衣子ちゃん、どうしたんですか〜?」
「のだめちゃん・・・。」
「・・・ん〜?・・・」
「あのね・・・真兄ちゃまの事・・・早く・・・思い出してあげてね?・・・お願いだから・・・。」
「・・・ハイ・・・。」
私がそう返事をすると、由衣子ちゃんは安心したのか大きな欠伸を一つ零した。

「でも・・・ふふふ。・・・のだめちゃんの・・・って・・・あったか〜くて・・・ふかふか〜で・・・やわらか〜い・・・。
 由衣子・・・真兄ちゃまの気持ち・・・少し分かっちゃ・・・った・・・。」
「・・・へ?」

私がそう聞き返した時には、胸に顔を埋める様にして由衣子ちゃんはもう眠ってしまっていた。
どこか甘い香りのする由衣子ちゃんを抱きしめながら、私もすぐに深い眠りに落ちていった。

48 名前:「喪失」・76[sage]:2005/06/25(土) 12:32:18 ID:9kUR0cp/
朝、目覚めると、ベットにはすでに由衣子ちゃんの姿はなかった。

時計を見ると9時過ぎを指している。どうやら寝過ごしてしまったらしい。
病院に居た時は規則正しく起こされていたから・・・。
そんな事をうつらうつらと考えながら、ベットの中でしばらくまどろんでいると、
遠くから、ピアノ曲が流れてくるのに気がついた。

---この曲は・・・バッハ?

ベットから抜け出ると、私は急いで身支度をし、ピアノの音がする方向へ廊下を歩いていく。
自分のいた客間から真っ先に続く廊下の先へ出ると、
眼下に・・・吹き抜けのサロンの様な広い空間があり、グランドピアノが置いてあった。
千秋先輩はTシャツに短パン、というラフな格好のまま、ピアノに向かっていた。

「バッハの平均律クラヴィーアですネ?」
私はサロンに続く階段を下りながら、先輩に話しかけた。
「千秋先輩、おはよーございマス。」

先輩はピアノを弾くのを止め、私に振り返った。
私の顔をじっと見つめると、一瞬何か言いたげな顔をしたが、すぐにそれを隠すよう微笑した。

「・・・おはよ。よく寝れた?」
「えへへ・・・寝坊しちゃいましタ。由衣子ちゃんはもう学校ですか?」
「とっくにな。由衣子が言ってた。のだめ、すっげーよく寝てたって。」
「由衣子ちゃん・・・とっても抱き心地が良くて・・・。はうん。」

49 名前:「喪失」・77[sage]:2005/06/25(土) 12:32:44 ID:9kUR0cp/
私が由衣子ちゃんの柔らかな身体を思い出し、うっとりとしていると、先輩は小さな声で呟いた。
「・・・変態。」
「むきゃー!!千秋先輩、今、のだめのこと”変態”って言いましたか!?言いましたよネ!?」
私が口を尖らせて抗議すると、先輩は少し困った様に首を傾げた。
「・・・・・・?」
先輩の反応に戸惑っていると、今度は何か諦めにも似た表情を浮かべ、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
「朝ごはんは・・・?食べるだろ・・・?」
「あ、ハイ。千秋先輩はもう食べちゃいましたか?」
「ああ、俺はもう俊彦や由衣子達と一緒に済ませた。千代さんに頼んで用意して貰えよ。」

そう言うと先輩はまたピアノに向かってしまったので、私はダイニングルームの方へ一人で歩いていった。

「おはようございます。のだめさん、朝ごはんは?」
「あ、いただきマス。」

ダイニングテーブルには、シックな色使いのランチョンマットが、一人分だけ用意してある。
私がその前に座ると、千代さんが朝食を運んできてくれた。

目の前には・・・グリーンサラダ、グレープフルーツの入ったヨーグルト、空豆の冷製スープ。

「卵はどうしますか?スクランブル?それともオムレツ?」
「えと・・・じゃ、オムレツでお願いしマス・・・。」

50 名前:「喪失」・78[sage]:2005/06/25(土) 12:33:24 ID:9kUR0cp/
・・・しばらくして千代さんが再びダイニングルームに戻ってくる。

今度は、手際よく仕上げたオムレツとボイルしたソーセージ、
そしてバターの甘い香りのするクロワッサンを私の前に並べた。
温かいカフェオレを私のカップに注ぐと、”さぁどうぞ”と千代さんは言った。

「い、いただきマス・・・。」

---どうしよう・・・。こんなに並べられるとは思っていなかったんだけどな・・・。

千代さんが部屋から出て行ったのを確認し、一人ごちる。
余り食欲が無かったから・・・本当はヨーグルト位でよかったのだ。
仕方がないので、もたもたとクロワッサンを細かくちぎって食べていると、
何時の間に来ていたのか・・・千秋先輩が私の左隣の椅子にどかっと腰をかけた。

「パンばっか食ってないで、ちゃんと、オムレツも食え!ほら。」
「ハイ・・・。」
「それからサラダも。スープも。」
「ハイ・・・。」
「カフェオレも冷めないうちに、飲む。」
「ハイ・・・。」

先輩が隣であれこれ指示を出すので、私は無理して、朝食を全部食べなくてはいけなくなった。
最後のヨーグルトを私が何とか食べ終わるのを見届けると、先輩は千代さんを呼んだ。

「千代さん。あれ二つ、お願いできる?」
「ええ大丈夫ですよ、真一さん。今すぐお持ちします。」

51 名前:「喪失」・79[sage]:2005/06/25(土) 12:33:57 ID:9kUR0cp/
---あれって何だろう・・・?

そう私が疑問に思っている間に、千代さんは耐熱ガラスのティーポットとティーカップを二つ持ってきた。
ポットの中には黄緑色の色の液体・・・何やら葉っぱの様なモノが、何種類か沈んでいる。
先輩は食卓の一番奥にかかった壁時計で、そこから三分ほど経過したのを確認すると、
用意されたティーカップに茶漉しを使って丁寧にその液体を注ぎ、一つを私に、もう一方を自分の前に置いた。

「どうぞ。」
「ありがとうございマス・・・。千秋先輩、これ・・・何ですか?」
「フレッシュのハーブティーだ。・・・いい香りだろ?整腸作用があるから、飲め。」
「あ、頂きます・・・。」

先輩の淹れてくれたハーブティを口元に持っていくと、ほのかに林檎の様な甘い香りがした。

「あ・・・美味しいです・・・。」
「だろ?千代さん特製だ。お代わりもあるから。」
「も、お腹一杯デス。」
「だめ。ちゃんと食わないと身体・・・良くならないだろ。」
千秋先輩は照れ隠しなのか、ぷいと私から顔を逸らし、黙々とハーブティーを飲んでいた。

---もしかして千秋先輩、山口先生から聞いたのかも・・・。病院でご飯を沢山残しちゃった事・・・。

先輩が静かに見守る中。
私はそれに応えるように、淹れて貰ったハーブティーを、きちんと最後まで飲み終えた。

52 名前:「喪失」・80[sage]:2005/06/25(土) 12:34:27 ID:9kUR0cp/
「のだめ。何かピアノ弾いて。」

先輩がそうリクエストするので、食後、私達は再びサロンに戻った。
「何がいいデスか・・・?リクエスト、ありますか?」
私がそう尋ねると、千秋先輩はしばらく逡巡した後、ためらいがちに口を開いた。
「ベートーベンのピアノソナタ・・・・・・”悲愴”」
「”悲愴”ですねー?谷岡センセとこの間やったばかりデス!」

私は椅子に腰掛けピアノに向かう。
そして一呼吸おいて、ピアノソナタ”悲愴”1楽章を弾き始めた。

先輩はグランドピアノに腕組みをしたまま凭れ掛かかり、私の演奏をじっと聴いている。
弾いている途中で先輩の方を見ると、先輩は目を閉じていて、何か瞑想に耽っている様にも見えた。

連続して速い所が続く後半、私は差し込むような激痛を、両肩に感じた。

「っっいっ!!!」

演奏が急に止んだので先輩は驚いて目を見開く。
ピアノの前で固まってしまった私を見るや否や、慌てて駆け寄った。

53 名前:「喪失」・81[sage]:2005/06/25(土) 12:35:02 ID:9kUR0cp/
「どうした!?大丈夫かっ!?のだめ!」

ピアノから手が放れ、急激に痛みを感じたその時の姿勢のまま、
私は後から付随して襲ってくる疼痛をじっと堪える。

「・・・ごめんなサイ。最後まで弾けませんでした。打撲した所がまだチョト痛くて・・・。」
「この馬鹿っ!!だったら早く言え!!」
「久しぶりにちゃんと弾いたので、痛めた腕と肩に、変に力が入っちゃっただけデス・・・。」
「・・・・・・。」
「も、大丈夫ですヨ?」
「・・・無理やり弾かせて、ごめん・・・。」

小さな声で謝りながら、先輩は私を支えながら立ち上がらせる。
その時、私を見下ろす先輩と私の視線が交錯した。
先輩の瞳は哀しげに揺れていて・・・何だか捨てられた子犬のように泣いているみたいだった。

---どうしたんデスか?千秋先輩。のだめの悲愴、そんなに悲しかったですか?

そう言いかけた瞬間、ふわり、と先輩に抱きしめられた。
そして先輩は、息がかかるほど耳元で、私に囁く。

「・・・本当に・・・もう痛く・・・ないか?」
それは、私に触れるか触れないかの甘く優しい抱擁。
「・・・は・・・はい・・・。」

54 名前:「喪失」・82[sage]:2005/06/25(土) 12:35:41 ID:9kUR0cp/
---急にこんな事をされると・・・。
---どう、反応したらいいか分からない・・・。

私が先輩の腕の中で俯いたまま、まごまごしていると、あっけなくその拘束は解かれた。

---え・・・?

展開についていけない私は、慌てて先輩を見上げる。
けれど先輩は、先程の抱擁が嘘だったかの様に、いつも通りの少し怒った様な表情に戻っていた。

「お前、適当に弾きすぎ・・・。相変わらずデタラメ!!」
「へ?」
「それじゃ・・・”悲愴”じゃなくて”悲惨”だろっ!!」
「ぎゃぼーーー!!」
「でも”悲愴”だけは・・・ちゃんと弾ける様に・・・ならなくていい。」
「はぁ?それって、ど、どーゆー意味デスか?」
「・・・そーゆー意味。」
「訳分かりまセン!んもぅ!最初に言った事とゼンゼン違うじゃないですかー!」
「・・・そう?」
「ムキーーー!千秋先輩、のだめの事バカにしてるんですか?」
「・・・ははは。」
千秋先輩は伏し目がちに笑うと、”そろそろ支度しないといけないから”と言って、自室へ戻っていった。

55 名前:「喪失」・83[sage]:2005/06/25(土) 12:37:01 ID:9kUR0cp/
---今日の山口先生の診察の予約時間は、午後三時。

千秋先輩は午後からお仕事らしく、さっき、タクシーのお迎えを電話で頼んでいた。
由衣子ちゃんも俊君もまだ学校だし・・・
先輩が出かけちゃったら一人でこの家にいるのは・・・少し退屈かもしれない。
そうだ・・・少し家を早めに出て、昨日病院の子供達と約束した、ピアノを弾きに行こうかな・・・。
そんな事を考えながら、私はリビングで一人、テレビをぼーっと見ていた。

先輩が呼んだタクシーが来たらしく、先程から玄関の方が少し騒がしい。
私は先輩の見送りに行こうと、リビングソファから腰を上げた。
エントランスへつながる廊下を曲がると、そこには峰くんと先輩が立っていた。

「おっ!のだめ!いたいたー!どうだー?身体の具合はー?」
峰くんは私の顔を見つけると、嬉しそうに笑った。
「あ、おとといはお見舞いありがとうございましタ。のだめ、大分元気になりましたヨ〜。」
「おおーよかったよかった。しっかし、千秋の家、すっげーよなぁ・・・。」
峰くんはエントランスから先輩に家をぐるっと見回すと、溜め息をついた。
「しかもあのゴミ部屋にいた女が、今いるのがこんな豪邸だぜ?
 のだめお前・・・実はすっげー成り上がり人生だなっ!!」
「・・・のだめの部屋・・・ゴミ部屋・・・?」
私の低い声の抗議を、峰くんは鮮やかに無視した。
「でもよー、のだめ。こんなデカイ家じゃさぁー・・千秋がいない時、暇してんじゃねぇ?」
「・・・峰くんよく分かりますネ。」
「へへへ。そう思って、今日はのだめにビックニュースがあるんだぜ?」
峰くんは茶目っ気たっぷりにウィンクした。
「ほえー!ビックニュース?何ですカ?」
「じゃーーーん!ほら、こっちこっち!」

峰くんが退くと、後ろから現れたのは・・・ショートカットの女性。
そこには、私にも見覚えのある、懐かしい人が立っていた。

56 名前:「喪失」・84[sage]:2005/06/25(土) 12:37:31 ID:9kUR0cp/
「マ、マキちゃんっ!!!!」
「のだめっ!!!!」

私達はお互いにひしと抱きしめあった。

「マキちゃんじゃないですかーーーー!ヤダ!のだめの記憶の中よりずっと大人っぽくなってマスーーー!」
「のだめのバカーーー!木から落ちて記憶がないなんて、相変わらずオトボケなんだからーー!!」

マキちゃんは涙ぐんでいた。
それを見たら、今まで堪えてたせいもあって・・・
私は両瞼から大粒の涙が溢れ出すのを、もう止める事が出来なかった。

「でもよかったです・・・。はぅぅぅ・・・。
 のだめ、やっと知ってる人に会えました・・・。マキちゃん、来てくれてホントにありがとーデス・・・。」
「うん・・・うん・・・。私も昨日、峰さんから電話貰った時は驚いたけど・・・
 のだめが思ったより元気そうだったから、安心した・・・。」
「マキちゃん、今はどうしてるんデスかー?」
「今はピアノがあるラウンジでバイトしてるの。ジャズ・・・弾いてるんだー。
 だって、あののだめがパリ留学しちゃうし?私も、やっぱり音楽が・・・ピアノが好きだから!」
「ふぉぉ!ジャズ!そでしたかー!
 のだめは・・・えへ・・・忘れちゃった自分で言うのもなんですけど、ピアノ頑張ってる・・・みたいデスよ?」
「あはは!!何よソレ!のだめらしー!」

千秋先輩と峰くんが側にいるのも忘れ、私達はひとしきり、二人で盛り上がっていた。

57 名前:「喪失」・85[sage]:2005/06/25(土) 12:38:03 ID:9kUR0cp/
「のだめ、よかったな・・・。」
ようやく再会の興奮から落ち着きを取り戻した頃、千秋先輩が私に優しく声を掛けた。

「俺、もう行くけど・・・ちゃんと病院、忘れずに行けよ?」
「ハイ!」
「それから・・・。俺、今夜はお世話になってる佐久間さんって人と食事する約束してるから、帰りは遅くなる。
 待ってなくていいからな。お前はちゃんと晩飯食って、早く寝ろよ?わかったか?」
「・・・おい・・・千秋って・・・意外と過保護だな・・・?」
峰くんが私の耳元で囁いた。

「何、人の事コソコソ言ってんだ?」
「な、なんでもねぇーよ!じゃあ、オケ練遅れるからそろそろ行こうぜ!マキちゃん、のだめの事よろしくな!」
「今日は有難うございました、峰さん。」
マキちゃんがお礼を言うと”いいっていいって”と峰くんは照れたように手を振った。
「じゃ、ごゆっくり・・・。」
先輩はマキちゃんの横を通り過ぎながらそう言い、待たせてあるタクシーの方へ向かった。

「おい千秋っ!待てよっ!じゃっ!のだめまたなー!」
峰くんは慌てて千秋先輩の後姿を追いかけていった。

58 名前:「喪失」・86[sage]:2005/06/25(土) 12:38:31 ID:9kUR0cp/
「千秋。お前・・・横浜から練習室のある東京まで、毎日タクシーで通うとは・・・久々に、ムカっときたぞ?」

さっきから無言で総譜のチェックをしている左横の千秋に、オレは軽口を叩いてみる。
ただそれは、会話の糸口を見つけたかっただけの、ちょっとしたモンだったんだけど・・・。

「・・・気に入らないなら、今すぐここで降りろ。」
「っな!お前・・・オレ、高速のこんな所で降ろされたら、オケ練、間に合わなくなっちゃうだろー?」
「だったら大人しく座ってろ。俺は、練習前の精神集中も兼ねて、この貴重な時間を金で買ってるんだ。
 一緒に乗せて貰えただけでも、有難く思え。」
「分かったよ・・・。ったく、パリに行って少しは丸くなったかと思ったら、相変わらず俺様なんだからよぉ〜。」

千秋のヤツ・・・物凄く不機嫌だ。

付き合いが長いから、オレにもそれ位は分かる。
・・・最初は”あの鬼千秋が帰って来たー!”と思ったのだが・・・。
でも昨日の千秋は何かに苦悩してもがいている様な・・・ずっとそんな指揮をしていた。

千秋の練習パターンは、俺達に怒鳴りながらハードな指示を与えて・・・。
・・・まぁ、そこまではいつもの千秋だ。別に問題はない。
けれど昨日のコイツは・・・そうした後で必ず・・・最後に溜め息を零した。

---あの溜め息が・・・。

音楽の悩みとはまた違った・・・別の苦しみに支配されている証拠の様に、オレはあの時感じたんだ・・・。

59 名前:「喪失」・87[sage]:2005/06/25(土) 12:38:59 ID:9kUR0cp/
---多分・・・いや、きっと・・・。

それはのだめが原因だ。
オレだけじゃない。事情の知ってる奴らはみんな、そう・・・考えていたと思う。

「・・・峰。」
「・・・あ?」
「気を遣わせて悪かったな・・・。」
千秋はバツが悪そうに総譜から顔を上げ、俺の方を向いた。

「マキちゃんを連れてきた事か?あれはのだめの為にオレがしたくてしたんだから、気にすんなよ?」
「いや・・・そうじゃなくて・・・。勿論、その事・・・もあるんだけど・・・。」
「なんだー?きひひ。オレがお前の迎えに来てやったのが、そんなに嬉しかったのかー?」
「・・・・・・・・・断じて違う。」
「アハハハハ!冗談だって!なんだよ〜ハッキリ言えよ・・・。らしくないぜー千秋?」
「・・・昨日のオケ練、あれは確かに俺もよくなかった。」
そう言うと千秋は情けなく俯いた。こいつのこんな様子を初めて目撃したオレは、しばし動揺した。
「自分の音楽を見失いかけてた・・・。理由はどうであれ、お前達を愚弄したのと同じ事だな・・・。」
 すまなかった・・・。」
そう言って自嘲的に笑う千秋を何とかしてやりたくて、オレはつい叫んだ。
「しょうがねぇだろっ!のだめがあんな事になっちゃったんだから!お前のせーじゃねぇよ!」
「俺、やっぱり出てるか?音楽に・・・その事が・・・。」
「・・・・・・!!」

---やべぇー・・・。オレ、今自分で墓穴掘っちまった・・・。

60 名前:「喪失」・88[sage]:2005/06/25(土) 12:39:23 ID:9kUR0cp/
「・・・やっぱりそうか。今日はそうならない様に自分をコントロールしないと・・・。」
千秋の最後の方の言葉は、むしろ独白のようだった。

おととい、のだめの病室でこいつが見せた表情。オレはあれが忘れられなかった・・・。
あんな暗い瞳をして沈み込んだ様に考え込む千秋を、オレは今まで一度も見た事なかった。
親友が苦しんでいる時に力になれない不甲斐ない俺だけど、でも何とかしてやりたい・・・。
オレは夢中で話し始めていた。

「なぁ・・・千秋。」
「・・・・・・ん?」
「もう一回・・・最初からはじめればいいじゃねぇーか・・・。」
「・・・・・・。」
「のだめをさ・・・もう一度、お前に惚れさせればいいじゃねーか。自信あンだろ・・・?」
「・・・・・・。」
千秋は相変わらず黙ったままだったが、オレは構わず話し続けた。

「さっき・・・のだめとマキちゃんが盛り上がってた時さ・・・
 お前、ものすごく切なそうにのだめの事、見てただろ・・・?あれ見て、オレも苦しくなった・・・。」

---恋人は、自分を忘れても、女友達は憶えているという残酷な現実。 

61 名前:「喪失」・89[sage]:2005/06/25(土) 12:40:56 ID:9kUR0cp/
「千秋はエライよな・・・。自分の感情押し殺して、のだめに普通に接してやってさ・・・。
 オレ・・・清良に同じ事が起こったら・・・お前みたいに冷静でいられなくて、多分もっと混乱して、
 みっともなく清良に当り散らすと思う・・・。」
「・・・そうかな。お前の方が俺なんかよりも、もっと上手く・・・包み込んでやれると思うけどな・・・。」
「なぁ、千秋・・・。好きなんだろ?のだめの事。」
「・・・・・・まぁ、な。」
「だったら、話は早いじゃねーか!もう一度最初からはじめたって、大事なのは二人の気持ちだろ・・・?」
「・・・・・・。」
「なぁ、大丈夫だって!のだめ、お前のことすぐに好きになるから!だって、相手はあの千秋真一なんだぜ?」
「・・・峰。」
「何だ?」

千秋は唐突にオレの言葉を遮った。
「・・・この話は・・・もう止めよう。」
そう言うと窓際に肘をつき、頬杖ついた姿勢で、俺から顔を背けた。
「ごめん・・・俺・・・ちょっと寝るから。もう、話しかけるな・・・。」

思いも寄らぬほど千秋の強い拒絶の態度に、オレはそれっきり何も言えなくなった。

結局その日オレは千秋と、それきり会話を交わすことも無かった。

62 名前:ショコラ[sage]:2005/06/25(土) 12:42:11 ID:9kUR0cp/
この辺で一区切りします。切れ切れで本当ごめんなさい。
私事で申し訳ありませんが・・・人足不足で明日急遽ユンロン圏に行くことになりました。
それまで小休止させて下さい。誠に申し訳ありません。

帰国は七夕あたりですが・・・。
飛行機が落ちなければ(ひぃぃ〜!!@千秋)その頃またお会いしたいと思います。
(ホテルで推敲作業に邁進致します。)

63 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/06/25(土) 13:13:58 ID:XWwp5G0J
読みましたよ〜続きまってます。ご無事で帰ってきてくださいね!

64 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/25(土) 13:36:34 ID:gDdqTWnq
゚・゚(つД`)゚・゚せつねぇだ!
ショコラ様GJですた。

お仕事頑張ってください。
お体お大事にしてくださいませ。

65 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/25(土) 22:13:22 ID:sXow1av3
ショコラさんすっごくGJ!です!!
せつなくて胸が締め付けられました。
続き、楽しみに待っていますので、焦らずゆっくり仕上げて下さいね!

66 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/06/25(土) 22:24:34 ID:5WSenIK8
GJ

のだめがもう一度恋するっていいですね!
ときめきます。

67 名前:名無しさん@ピンキー[age]:2005/06/26(日) 09:41:55 ID:rN3lp9gw
3つめ上げ

68 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/26(日) 21:58:11 ID:EmecHDGg
お疲れ様です!
お仕事頑張って下さい。続き、気長にずっとずっと待ってマスので…!!

69 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/06/28(火) 23:37:05 ID:WMlpfbja
誰か降臨期待あげ

70 名前:茨の海 1[sage]:2005/06/29(水) 17:12:27 ID:YFLr30Jd
首筋を伝う舌に 初めのうちはくすぐったくて 身を捩じらせていた
腰に回った腕は そんな私の身体を逃げ場の無いように 追い詰めて
頭を支えていた左手が いつの間にか 背中に到達し
ワンピースが 床に サラリ 落ちる
この瞬間に見せる 彼の瞳の奥にある 影 が好き
覗き込むようにして そのまま 軽く 唇を合わせると
すぐさま 飲み込まれてしまうのではないかと思う程の 深い 深い 口付けが
平衡感覚を失い そのまま二人して宙に身を投げ出せば 遠くからスプリングの軋む 音
やわらかに受け止められて やがて 同じ体温になる
そのころには 辺りに響くのは密やかな笑い声ではなく

寄せては 返し  引いては 満ちる
熱 鳴き声 息 落ちる汗 涙 溢れる感情 秒針 心臓の 音


71 名前:茨の海 2[sage]:2005/06/29(水) 17:13:17 ID:YFLr30Jd
「んっ……ぁ、や……っ……!」
「……我慢、すん…な、声……聞かせて?」
目尻にうっすらと滲む水の玉に口を寄せ、優しく吸う。
うらはらに激しさを増す男の動きに、握り締めたシーツももはや効果はなく。
「んぁ、はっ……ふ、ぅん……っぁあ、ああっ!」
声が、漏れる。
額にぴたりと張り付いた髪をいとおしげに掻きあげる手は、かすかに震え。
そのまま一回り大きな手に包み込まれてしまった。
頭が重く、そのくせフワフワと浮かんでいくような感覚の中、繋いだ指先に力を込め。
その刻を声にならない声で伝える。
「あ……っ、も、も……だ、め……っんんっ!」
「オレ……も、いい……?」
叫び声を高らかに歌い上げようとその喉は開き、しかし全ては暗闇にかき消され。
せめて空を掴もうとその両腕は天に向かって伸び、しかし程なくマットの上に落ちた。


72 名前:茨の海 3[sage]:2005/06/29(水) 17:14:07 ID:YFLr30Jd
トクン トクン といつもより速いリズムで打つ鼓動を聞きながら
身体に残された熱がすうっと冷めていくのを感じるのが心地いい。
顔を寄せるその逞しい胸板に指を滑らせながら、恵はクスクスと笑った。
「何がおかしい?」
彼女の栗色の髪を梳いていた手を止め、真一は途端に表情を曇らせる。
「だって、のだめ明日早いからダメだって言ったのに」
「……イヤだったワケ?」
憮然とした声にますます笑い声を大きくしながら、恵は身体を起こし、彼の頭を挟む
ように両手をついて、上から見下ろす姿勢をとる。
「イヤでした♪」
その挑発する色素の薄い瞳に、真一はニヤリと笑いながら彼女の右手首を掴み、
そのまま身体を引き寄せてゴロリとベッドの上を転がった。


73 名前:茨の海 4[sage]:2005/06/29(水) 17:14:51 ID:YFLr30Jd
「ウソつけ」
「ウソじゃないデス〜」
再び組み敷かれる形になってもいたずらっ子のような表情を変えずにうそぶく恵に、
真一もそうかそれならと彼女の両腕を彼女の頭の上で固定し、
空いた手で無防備なわき腹をくすぐる。
「わひゃっ!? ずずずずるいデスってばそんなうひゃひゃヤメテー」
「もう一度聞くぞー。イヤだった?」
ニヤニヤ笑いにムカつきながらもその容赦ない攻撃に恵は素直に降参した。
「あはっひっ、そ、そんなワケないじゃ……っない、ですかっ!」
「ふーん。じゃ、どーだった?」
「そ、んなコト、ギャハッ、わ、わかってるクセに――」
笑い声が息を呑む音に変わったのは、未だ何も纏わずにさらけ出された胸元に
真一の唇が寄せられたからだった。


74 名前:茨の海 5[sage]:2005/06/29(水) 17:15:36 ID:YFLr30Jd
「ああ。知ってるよ」
そう言って彼は冷めていた身体にもう一度熱をともす。

寄せては 返し  引いては 満ちる

まるで夜の海のようだと、恵は遠のく意識の中で、思う。
甘い棘のある波にさらわれ、身体にいくつもの傷が付いて。
その完全に消えることのないささやかな痺れは、こんなにも私を翻弄する。


End(?)


75 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/29(水) 17:20:35 ID:YFLr30Jd
静かだったので投下してみました。
いちゃついているだけの短い文でごめんなさい。

それでは。

76 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/06/29(水) 19:11:27 ID:9UL/fcV8
よい!これくらいの長さいいですね!

77 名前:名無しさん@ピンキー[]:2005/06/29(水) 19:28:30 ID:JuPGn0Ke
GJ---

萌え。
のだめいいなーーー千秋いい!

78 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/29(水) 21:42:13 ID:WdXJUihK
キタ━━(゚∀゚)━━!!

満たされますた。

79 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/29(水) 23:18:12 ID:4j1dRvqV
GJ!
萌えましたよ!
文章が綺麗ですね。
またの投下をお待ちしていますね!




80 名前:流星群 1[sage]:2005/06/30(木) 14:09:47 ID:98U8+udr
不意に流れてきた ピアノの 音 は 偶然には違いなく
それでも ただ
哀しい 哀しい 哀しい
重なる雨音は 曇った窓ガラスから さやさや 頼りなく 限りなく
優しい
その温かな贈り物を 全身で受け止めたい 衝動 は もはや止められずに
自分でも説明のつかない 感情 を 曖昧にするために 誤魔化すために
独り 外へ
呼ぶ声は 蔦のように全身に絡みつくけれども
これは 幻想だと 幻想だと

落ちてくるのが 星 であれば 空に光を見ることも無く
頬に伝うのが 雨 であるなら 悲鳴を闇夜に耐えること無く


81 名前:流星群 2[sage]:2005/06/30(木) 14:10:23 ID:98U8+udr
「……先輩?」
距離を感じる微かな呼び声に安堵して、しかし真一は振り向かない。
今は触れないでくれと言う背中に、しかし恵はゆっくりと近づき手を伸ばす。
指先の柔らかな誘いに、びくりと肩を震わせその大きな手で顔を覆う。
そんな彼の様子に、彼女は静かに溜息を落とす。
「これなら、いいですか?」
やがて訪れたしっとりと生暖かい重みに、真一は無言で答え。
恵は彼に背を預けたまま、両の手で雨を掬う仕草をした。
彼は零れ落ちるものを拾えない自分を呪い。
彼女は零れ落ちたものを掬い上げたいと願った。
「のだめは、もう、大丈夫ですヨ」
だから。
今は顔を上げられなくていい。背中を向けたままでいい。太陽を憎んでもいいから。
この場所に飽きたら、あの部屋で。
これ以上望むものなど無い位に繋いでほしい。


82 名前:流星群 3[sage]:2005/06/30(木) 14:11:08 ID:98U8+udr
濡れて冷たくなった身体をシャワーで暖めている間にも。
絶え間なく響くピアノの調べ。
それはやはり、ただ哀しいという声にしか真一の耳に届かず。
耳を、塞ぐ。
しかし、その前に不可思議な一音がその耳を捉え。
手の動きが、止まる。
先程まで自分を守っていた水音が、もはや単なる雑音に変わり。
真一はシャワーを止め、やけに緩慢な時の中、バスローブを羽織り。
リビングへ続く扉をそっと開けた。
ピアノに向かう恵はその瞳の淵を赤くしながらも、うっすらと微笑を浮かべ。
彼女が紡ぎ出す音色は、真一の中に溢れるものへと響いた。


83 名前:流星群 4[sage]:2005/06/30(木) 14:11:44 ID:98U8+udr
「あは。また先輩泣かせちゃいマシタ」
「……うるせ、バカ」
おまえだって泣いてんじゃねーかとその目尻に触れると。
恵はくすぐったそうにしながらゆっくりと瞳を閉じる。
唇を重ねた後、彼女は涙を湛えたまま悲しいんじゃないですと笑った。
頬の筋肉が上がり、水滴となって床に落ちる。
「アリガトウ、なんです」
「それ、わかる気がする」
真一は正面から彼女を抱きしめる。温もりが心に届く。
「……オレ、おまえに会えてよかった」
本当に、本当に、心からそう思うから。
奇跡など無くていい。無力でもいい。醜くてもいいから。
孤独ではない、あの部屋で。
これ以上望むものなど無い位に繋ぎたい。


84 名前:流星群 5[sage]:2005/06/30(木) 14:12:21 ID:98U8+udr
いつの間にか雨は止んで、聞こえるのは甘やかな息遣い。
月明かりに青く映える肌にその長い指を滑らせると。
身体の振動に合わせて髪がサラサラ揺れ、夜の闇に薫る。
柔らかな胸に手を伸ばし、その頂を舌で擽れば高らかな鳴き声。
彼女の中は温かく湿り、彼はもっと、もっとと奥へ入っていく。
「あ、あぁ……っん、は……も、ぅだ……っ」
「ま、だ……ダメ」
こんなにも執拗に求める真一の姿は珍しくて。
恵は快楽の波に閉じられた眼を無理やり開けて彼の顔を覗うと。
なんて、キレイな。
視線が交わり、真一は優しく微笑む。
そしてもう一度囁くように言うのだった。


85 名前:流星群 6[sage]:2005/06/30(木) 14:13:05 ID:98U8+udr
「おまえに、会えてよかった」
私もと言う言葉はやはり声にならず、代わりに恵は背に回した手に想いを込めた。

落ちてくるのが 星 であれば 空に光を見ることも無く

けれども輝くものはここにあると、真一は恋人を腕の中に抱きながら思う。
失くしたものの大きさは、今は量ることができない。
それでもアリガトウという言葉を与えてくれる人が側にいてくれたことこそ、奇跡だと。


End


86 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/30(木) 14:17:25 ID:98U8+udr
連続投下ですみません。
思いついたので書いてみました。
題名を見ると元ネタがわかってしまうSSです。

レスありがとうございました。
わかりにくい内容ですが、それぞれ脳内補完していただくということで。

それでは。

87 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/06/30(木) 15:37:55 ID:+q8AKka1
GJ!
連続投下お疲れ様です。
すごく文章が綺麗で萌えましたよ♪
せつなくて甘くてよかったです。
またの投下、ぜひぜひお待ちしていますね!

88 名前:びーどろ@ワルツ[sage]:2005/07/01(金) 16:02:22 ID:Syaskvnq
「文章が綺麗」と言われると、テレますね。
読んでくださってありがとうございます。

本当はこの2つのお話は、とてつもなく長いSSのプロローグとエピローグの
一部を少し直したものなんです。
構成が似ているのもそのためです。
二人が失くしたものが何なのか、わからないままでもわりとイケルかなと
思って投下したのですが、楽しんでいただけたようでよかったです。

それでは、また機会があれば投下したいと思います。

89 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/07/01(金) 22:29:22 ID:tWw55RoY
ぜひぜひ!お待ちしていますね!

90 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/07/04(月) 07:27:33 ID:bjyC/fMB
神降臨待ち

91 名前:LILL ◆sVVR0Q7eM2 [sage]:2005/07/04(月) 23:51:08 ID:BJ6T3rry
神じゃなくてスマンけど...前にもあった のだめ一人エッチ+チアキ調教付き? 書いてみましたです

92 名前:LILL ◆sVVR0Q7eM2 [sage]:2005/07/04(月) 23:51:43 ID:BJ6T3rry

「えと……こう…カナ」

……? 
暗闇の中、ささやき声のような、かすかな小さな声がする。

「んっ……ぁっ…う、ふぅ…」

隣に寝ているのだめが、こちらに背を向けて、何か しているらしい。なんだ?

「…うぅ、ンっ……」 ピチャッ ピチャ ピチャ・・・

エ…… もしかして




指揮者は 立ち仕事だから、職業病のようなもので、鍛えてるオレでも たまに腰をやられる。
演奏旅行から帰ってきた今日は、湿度のせいか気圧のせいか 特に痛んで、
痛み止めを飲んでもおさまらず、歩くのさえ辛かった。
久しぶりに逢う のだめと夕飯を食い、なるべく動かないようにシャワーを浴びて、
早々にベッドに入った。

ベッドはキングサイズだから、2人で寝るにはゆったりだけれど、
のだめからの わずかな振動は伝わって来る。

何をしているのか すぐに察しがついたが、こんなのだめを見るのはもちろん初めてだから、
ものすごく胸がドキンと鳴った。

ひどく嬉しいような、秘密を見てしまって悪いような、複雑な気持ち。
気づかれないように息をころして、そっと様子をうかがう。


93 名前:LILL ◆sVVR0Q7eM2 [sage]:2005/07/04(月) 23:52:27 ID:BJ6T3rry

「ん、んっ…ぁふ……。 うーん…もうチョット…なんデスけどね……ダメだ…ヤッパリ」

「……イケないのか?」
「ぎゃぼ!!! 起きてたんですかっ」
「起きた…。 イイ声、聞こえたから」
「(赤面)だって…! センパイ、いつものだめのことすっごく…ヨクしてくれるから、
 どんなふうに…したら、…なるのカナ…って……」
「ゴメンな、オレ今日、してやれないから…だろ?」
「(ますます赤面)……ハイ…センパイに、して、欲しかったデス…」
「してやるよ」
「え? でも、腰が…」

オレは、手を伸ばして枕元の小さい灯りをつけた。
痛まない程度に少し身体を起こして、隣ののだめを見ると、ネグリジェはもう はだけて、
豊かな乳房がぽろんと見えていて、桃色の乳首も双方 ぴんと立ち上がっている。
「おまえ…いつのまに、こんな」
「え、ヤ…! 今日、はじめて…デスよ! だって しばらく逢えなくて、やっと今日逢えて、
 センパイにいっぱい可愛がってもらいたかったンですヨ…」
「そっか…」
「もぅ…ムラムラのもんもんで、ウズウズして……眠れなく…なっちゃってぇ……」
訴える声が、だんだん消えそうに小さくなってる。 こいつ、可愛い…。
「よし。ほら、こっち向いて」

のだめは素直にオレの方に身体を向けてきたから、オレと向かい合わせになった。
「ちょっと上にずれて?」
言葉どおりのだめが上方にずれると、豊満なおっぱいが顔の前に来た。オレはそれに顔をうずめた。
「んはーー… きもちいー…」
「センパイ…」


94 名前:LILL ◆sVVR0Q7eM2 [sage]:2005/07/04(月) 23:53:20 ID:BJ6T3rry

舌と、指先で、のだめの乳首を刺激する。手の平で、ボリュームのある ふくらみを揉んでゆく。
「あ、あぁッ…」
さっき のだめが自ら触れていた部分に指をのばすと。
「わ…すごいな、ぐちょぐちょだ…」
「もう… 真一くん、イヤ…」
「取るよ?」
「ハイ…」
のだめの両腰のリボンをほどき、レースがたっぷりついたのだめの下着を取り去った。
オレが帰って来る日だったから、おしゃれな下着を付けていたんだろう。
でも、もう、濡れてぐしょぐしょだ。

オレはのだめの乳首を舐め、左手2本の指で乳首をいじり、右手の指でクリトリスを激しく刺激する。
「あ…はぁん…あぅ……気持ち、いー…デス……」
「ほら、のだめ、ココ…。後ろから 自分で、指、挿れて。」
いつもオレ自身が入り込む、のだめの熱い入り口の位置を、中指で教える。
「ひっ、やぁぁあん」
「ココ……おまえのなかで一番、濡れてるトコ。感じるトコ…。さ、挿れて…」
感じてきたのだめの右手をとって、彼女のお尻をなでさせてから、薄暗い秘所へと誘導する。

言われたとおりに右手をお尻側へ伸ばした のだめは
オレの愛撫に感じてキュっと締めた自らの蜜壷に、後ろから 自分の中指を少しずつ沈めた。
「うぅーっ、あはぁあ!」
多分、自分の指を自分のアソコに挿れるなんて、初めてなんだろう。
でも、オレの愛撫でとろとろになった身体が、自分の指をぎゅうっと締め付けて、動かせ、と命令してる…
「……あっ、はぁっ…あぁーーー」

オレは、そんなのだめの痴態を見て いたく興奮し、満足した。
ほんの数ヶ月まえに、この世界を知ったばかりなのにーーーこの痴態…。
オレだって、ヤラシイの、キライじゃない。むしろ…はまりそう。この女、最高だ。


95 名前:LILL ◆sVVR0Q7eM2 [sage]:2005/07/04(月) 23:56:49 ID:BJ6T3rry

「嬉しいよ、のだめ…」
そう言って、大好きなのだめのオッパイに、強く、キスの痕をつける。
腰が痛くて身体を動かせないから、ずっとこの体勢のままで、大好物の双丘を、思う存分楽しめる。
のだめはイクのに夢中だから、おっぱい星人〜、とか、からかってこないし。
これって、いいかも……。


わざと大きく、チュパッ と音を立てて乳首を吸って、下方の指も、いやらしい水音が立つように動かす。
中指をクリトリスに当てたままで、オレは薬指と小指を動かし、
のだめが自ら挿れている指のようすを確かめるように、のだめの手に絡める。
知らないうちにのだめは、自分から指を2本も突っ込んで、激しく、ズブ、ズブ、と動かしていた。

こんな恥ずかしい行為を確認されてしまった興奮からか、のだめの頭はのけぞって、白い喉は光り、
喘ぎ声はいっそう高く、大きくなる。


96 名前:LILL ◆sVVR0Q7eM2 [sage]:2005/07/04(月) 23:57:35 ID:BJ6T3rry

「…いけそうか?」 先端を舐めながら訊くと、
「あ、ん、イクぅ…! ちあきセ、ンパイぃ……のだめ…、イッちゃう…んはああっ……!!」
のだめの腰が前後に動いて、びくびくっと振動した。
紅潮した顔。はぁはぁと、激しい息づかい。
柔らかいおっぱいの奥から、ドクンドクンと激しい鼓動が聞こえてる。


「っはぁっはぁっ、はあ……はうぅ………」
「……」
紅潮し 汗ばんだ のだめの顔に手を伸ばして、張り付いた髪を外してやる。
のだめは目を閉じたまま、オレの髪に顔をうずめてきた。
「…あぁ、もぅ…ハズカシ……!」
「ばーか。今更、なんだよ」


「……今度は、真一クンの番デスヨ…」
のだめはオレに口づけると、オレをゆっくり仰向けにして、足許へと下りていった。

(終)

97 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/07/05(火) 00:15:02 ID:7fKJCB2h
おぉ!ちょっと見てないうちに新しい神が!!
GJです。エロ具合がイイ☆

98 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/07/05(火) 01:03:41 ID:aD8SRwlw
GJです。「今度は真一クンの番」というぐらいなので、続きもお願いします!

99 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/07/05(火) 07:27:40 ID:ZfOutgck
ふぉぉ〜☆いつの間にか神が!GJデス〜!

100 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:2005/07/05(火) 08:51:24 ID:y3Mnb2Pm
GJ!
でも指揮者が立ちっ放しなのは本番公演2時間が関の山で
練習やリハは大抵何かに腰掛けてるような…


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