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のだめカンタービレ2

301 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/21 15:34:20 ID:4W05hC50
おいで、と私を呼ぶ声に導かれて、ピアノの前に腰を下ろす。弾いてごらん、と
ピアノに言われて、私の指は蓋を持ち上げ鍵盤に触れる。まるでそうすることが
当たり前かのように。請われるままに溢れ出すラベルのソナチネ。その音色に
縋りつくように動く指先。

知りたいんです、と私は訴える。お願い、お願いだからと懇願する。

やがてその思いさえ掻き消えて、真っ白な世界の中にその身と最後の一音を投じた。
瞼を閉じると「お前の手の中に」という声が聞こえた気がした。

ふと我に返り、あわてて周りを見回すと、周囲に人だかりが出来ていた。そういえば
許可も取らずに勝手に弾いてしまっていたと今さらながらに思い起こし、冷や汗を掻く。
叱られることを覚悟しておずおずと立ち上がると、暖かな拍手に包まれた。突然のことに
どうしていいかわからずただぺこりと頭を下げる。
するとぬいぐるみを抱えた小さな女の子がはにかみながらトコトコとやって来た。
「Thanks for your playing! It’s very wonderful and I’m happy to listen your sound.」
ニコニコと笑いかけてくる少女の、言葉の意味はわからなかったけれど。自分の中に芽生えた
ある確信と覚悟を感じることができたから、私は微笑み返した。そしてありがとうと彼女の頭を撫でる。
「One more, please!」その言葉に励まされて、私は再びピアノに向かった。


302 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/21 15:40:42 ID:4W05hC50
5.鳥かご

母が去った後も、俺はまだ一人悶々としていた。ホテルのベッドに身を投げ出し、
眠ってしまおうと努力してはみるものの先程の母の言葉が耳の奥でリフレインして。
――このまま彼女をパリに置いておくつもり?
そんなつもりはない、と言えばこれまで取ってきた行動が矛盾していることになると
自分でもわかっている。
当たり前のように同じ部屋で暮らし、幾度も「おかえりなさい」と彼女に出迎えて
もらった。一緒に食事をし、同じベッドで眠った。そんな日常がずっと続くと考えて
いた俺が、音楽家としての彼女の未来を考えていると言ってもまるで説得力がないだろう。
結局、甘えてるだけだ。

イタリアでの公演も最終日を迎え、その幕を下ろした。いつものように催されるパーティの
喧騒の中に入ってく気にもなれず、俺は窓際でぼんやりと街明かりを眺めていた。スーツの
ポケットには、のだめからの連絡が来ず沈黙したままの携帯電話が入っている。
溜息をつくと、後ろから声を掛けられた。
「チアキ、師匠である私をほっといて悠長に溜息とは、いい身分デスネ」
お酒頼んでおいたデショ、と文句を言いつつシュトレーゼマンの顔は笑っていた。
「……それくらい自分でやって下さいよ」
「その態度にはムカツキマスが、ま、いいでショ」
そう言って、ワイングラスを持ったまま俺の横に並んだ。
「それで、その大きな溜息の原因はナニ?」
人生のセンパイに相談してみなさいヨ、という彼の言葉に「結構だ!」と返しながらも、
もしかしたらこの人も同じような経験があるのかもしれないと思った。
しばらく思い悩んだ末、俺は口を開いた。


303 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/21 15:44:00 ID:4W05hC50
「……鳥、飼ったことありますか?」
「鳥? カナリヤなら小さい頃に」
飼ってましたケド、と少し怪訝な顔をしてシュトレーゼマンは答える。
話の繋がりが見えないという彼の表情を無視して、俺は続けた。
「狭いカゴの中がかわいそうに思えて、家中の窓を閉めてからそっと放したこと、ないですか?
 部屋の中を飛び回らせてやって。安心するんです。この鳥は羽ばたけるんだって。こんなにも
 自由に飛べるじゃないかって。
 でもそんなのは、自由じゃない。鳥にとっては何も変わってない。カゴの中だ。俺の傲慢な
 考えこそが、彼女を閉じ込める鳥かごになってる。
 そのことに気が付いても、俺は窓を開けることが出来ない。なぜなら――」

「二度と、戻ってこないかもしれナイから」
シュトレーゼマンは俺の言葉を遮って、ぽつりと言った。そして付け加える。
「だからと言って、彼女がキミとの穏やかな生活を忘れるわけじゃナイ。寧ろそれを糧に
 して大空を羽ばたけるのかもしれない。それをこそ誇りに思うべきじゃないのカナ?」
「……わかっては、いるんです」
そのキキワケの良さがダメなんデスヨ、と彼は顔をしかめる。え? と俺は彼の意図することが
わからず混乱した。
「チアキに出来ることはたった2つだけデス。1つはわかっているようだケド、もう1つを
 疎かにしては、大事なモノを失いマスヨ」
そう言い残して立ち去るシュトレーゼマンの背中を、俺はただ見つめることしか出来なかった。


304 名前:842です[sage]:05/02/21 15:58:46 ID:4W05hC50
ま、またもやこんなトコで切ってしまってごめんなさい。
話は最後までできているんですが、筆が追いつかず。
この「そして僕らは…」は前編で、全体的に暗くて書くのがツライです。
後編のハッピーエンドに早くたどり着けるようがんばります。

のだめが弾いているラベルのソナチネは、今お気に入りの曲で。
よろしければ一度聴いてみてください。

305 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/21 16:44:36 ID:y8Rt0zkq
>>842さん
素敵!やっぱり842さんのSSはハートにズドンとくる感じ!
かゆいところに手が届いていていて、
細かい心理描写が見事としかいいようがないです。
暗い話が長かろうと、消さないで一人一人の葛藤が見てみたいです。
どんなに長くなっても最後まで842さんの思ったままに書いてください。
苦しいかもしれませんが、応援してます。
千秋、のだめとともに頑張ってください。

わたしの勝手な想いですが、本当に楽しみにしています。

306 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/21 22:50:05 ID:t2O5dUat
うおー、842さん、お待ちしてました。
ゆっくりでもいいですから、楽しみにしています!
今回は大人なシュトレーゼマンにときめいてしまいました。

307 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/22 02:01:33 ID:2GtnN6th
みなさんヴゥラァボォーー!!!やっぱりのだめはイイ!!

308 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/22 16:38:29 ID:SGcy5e+E
この感銘を言葉に出来ず、以前と同じ感謝の言葉
なのを許してください。

842氏とその他の職人さんへ、ぐっじょぶ。

309 名前:842です[sage]:05/02/22 16:48:53 ID:amMeiL0s
いつもいつも、温かいコメント&励ましありがとうございます!
すごく励みになってます。

305さん
 応援、本当に嬉しいです。
 これからも是非、感想をお聞かせください。
 がんばります。
306さん
 けろりんさん、ですよね?
 ありがとうございます!
 「大人なシュトレーゼマン」はおいしいキャラです。

それでは、つづきです。

310 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/22 16:50:11 ID:amMeiL0s
6.置いてきた、心

征子サンがNYに戻ってきてからのこの数日間は、本当に忙しい毎日で。R管との契約、
スケジュールの確認、住居探しetc…と、めまぐるしいスピードで私のピアニストとしての
道は出来上がっていった。

「決めました。のだめ、NYでR管と演奏したいです」
帰ってきたばかりの征子サンにそう言ったら、少しの間、目を丸くしていたけれど。
ポツリと、言った。
「真一には……?」
名前が出ても、もう、揺るがない。
「いいえ。一人で決めたんです。求める音が、ココで見つかるかもしれない。
何が出来るのか、わかるかもしれない。そう感じたから」
先輩には、直接会って話します、と言うと、征子サンはちょっと困った顔をした。
「……あのぅ」
何かマズいことでもあるのかと不安になって、その顔色を窺うと。
「あ、違うのよ。ごめんなさいね」
手をヒラヒラとさせて、笑った。そして私の手を握る。
「あなたが決心してくれて、本当に嬉しいわ。おめでとう」
その笑顔にほっとしたら、なぜか涙が零れた。
NYでの生活の準備がすべて整い、私はホテルの一室で荷造りを始めた。
けれど、もともと突然のNY行きだったからたいした荷物もなく、すぐに終わってしまう。
時間を持て余していた私のもとへ、ドアをノックする音が届く。
「はい、どうぞー」と返事をすると、征子サンが入ってきた。
「あら、もう荷造りしちゃったの? 出発は明日でしょう?」
「そうなんですケド。他にやるコトなくって」
呆れ顔の彼女に、苦笑いを向ける。すると、じゃあ出掛けましょうと征子サンは笑った。
え、ドコに? と私が聞くと、彼女は悪戯っぽく片目をつむる。
「さっきステファンから連絡があってね。帰る前にもう一度会いたいって」


311 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/22 16:50:56 ID:amMeiL0s
紅茶の良い香りが辺りを漂う。私は運ばれてきたティーカップに口を付け、その味に頬を
緩めた。案内された部屋は開放的な設計がされていて、南側にある大きな窓の向こうには、
緑がセンスよく置かれたサンルームを見ることができる。
今日は休日であるらしいステファンは、私たちを自宅に招待してくれたのだった。
その会話のほとんどを征子サンが通訳してくれたのだけど、彼があまりにも私のピアノ
を褒めてくれるのでなんだか恥ずかしくなってあまり話せない。
救いを求めるように中央に置かれたピアノへ視線を移すと、ステファンが何か弾いてよと
言った。いいデスヨ、と笑いながらピアノに向かう。
「じゃあ、ショパン繋がりで」
3ヵ月後の公演で、ショパンのピアノ協奏曲第1番を演ることが決まっていた。
穏やかな午後のティータイムに、スケルツォの旋律が響き渡った。

「君がNYに来るのを、楽しみに待っているよ」
差し出された右手を、私は両手で握り返してから言った。
「ありがとうゴザイマス。がんばりマス」
それにしても、とステファンは付け加える。
「君の音、ちょっと変わったね。突き刺さるような迫力があるよ。嬉しい驚きだけど」
そですか? 私はすこし首をかしげて、微笑んだ。


312 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/22 16:52:04 ID:amMeiL0s
7.声を塞ぐ、唇

結局、のだめからの連絡はないままにシュトレーゼマンの公演はすべての日程を
終了した。
彼女はもう答えを出したのだろうか?
どちらにしても、今頭を占めるのは俺の取るべき態度の問題だ。

彼女のピアニストとしての成功は、俺にとっても喜ぶべきことで。
彼女がピアニストとして望むことは、俺にとっても望むべきことで。
でもNYじゃなくても、ヨーロッパのオケからもオファーはあるだろう。
何より、彼女のピアノが、彼女自身が俺の側を離れることが。
それが何よりも――。

「大いに悩みなサイ。それがキミたち若者の特権デショ?」
シュトレーゼマンが別れ際に言った言葉。けれども、これは悩みなんかじゃなくて。
我侭、なんだよな。
ただ、彼の言う「もう1つ」が何なのか、引っかかってはいるけれど。

アパートの前で止まった足を、ふうっと吐いた息を合図に再び動かす。
中庭から特定の窓を見上げる。カーテンの隙間から明かりが漏れていた。
どうやら帰ってきているようだ。
俺は何となく段数を数えながら、いつもより長く感じる階段を上った。


313 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/22 16:52:46 ID:amMeiL0s
扉の前で、一瞬中に入ることを躊躇する。
何が正しいかなんてことは、最初からわかってる。それでも。
のだめの顔を見た後で、自分が理想の形を取ることができるのか、わからない。
それが、怖かった。
それでもとにかく、彼女の話を聞かなければと震える手で呼び鈴を鳴らす。
すぐにパタパタとスリッパの音が聞こえ、ドアが開く。
「おかえりなさーい」
いつもの声と、にこやかな、顔。
ただいまと言う代わりに、その唇を自分のそれで塞ぐ。

それが逃げであることは、充分にわかっていたけれど。


314 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/22 16:54:11 ID:amMeiL0s
8.楽になる方法なんてない

いきなりキスされて、そのままベッドまで運ばれた。
突然のことに驚いて、先輩の腕を振り解こうとしたけれど、彼はそれを許さなかった。
「んっ、ちょっ…待って。のだめ、先輩に……」
話があるんです、と言いかけた私の目に、千秋先輩のつらそうな顔が映って。
私は抵抗するのを止め、彼の行為を受け入れた。

きっと、彼は全部知っているんだろう。
征子サンの仕事っていうのは、つまりこういうことで。
彼女のちょっと困った顔の理由も、納得だ。
ああでも、自分の言葉で、彼に。
伝えなければ――。

普段の優しい動きは影を潜め、その手はすべてを奪い去るかのように私の身体を這う。
私の身体はきしみ、悲鳴を上げるけれど、それさえも彼の唇に飲み込まれ。
彼の熱情により貫かれると、私は完全にシーツの波の中へ沈みこんだ。
それでも……。
その艶やかな黒髪からサラサラと零れる、いつもの香りが。
その意外と逞しい胸の、いつもの温かさが。
恵、と呼ぶ声の、いつもの掠れた感じが。
愛しくて、涙が出て。
抱きしめ返すことしか、出来なかった。

それが逃げであることは、充分にわかっていたけれど。


315 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/22 16:55:47 ID:amMeiL0s
翌日、目が覚めるとすぐそこに先輩の顔があって。
目が合うと一言、「昨日はゴメンな」と私の頭を撫でた。
私はふるふると頭を横に振り、「おなか、すいたデス」と言った。
「じゃーメシでも食いに行くか」
早く着替えろよ。彼はクスリと笑って、言った。

近くのカフェで遅い朝食をとった後、私たちは黙って手を繋いで歩いた。
お互いに、タイミングを計っていたんだと思う。
けれども、手を繋いでいるのがあまりにも心地よくて。揺らいでしまう。
もうあまり時間がないのに。
これではダメだ、と私はNYで手に入れた覚悟を思い出す。
そして、手を繋いだまま口を開いた。

「のだめ、NYに、行きます」

繋いだ手を、願いを込めて、ぎゅっと握った。


316 名前:842です[sage]:05/02/22 17:06:30 ID:amMeiL0s
というわけで、つづきます。
いい加減この切り方やめなはれと自分でも思いますが。
この先、たぶん地獄だろうと思うと……。
気合、いれなくては!

逃げまくりの二人ですけど、のだめがとうとう言っちゃいました。
真一君はどう受け止めるのか?(私にもまだわかりません)
頼むよ千秋ー。

それでは、このへんで。

317 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/22 17:40:21 ID:cYQFUOa6
842さんお待ちしていました。
842さんとは縁があるのか、
割と投下後新鮮なうちに新作に巡り合える305です。

今回も素晴らしいお話でした。
のだめのNY行きが決まってから、千秋に言い出すまで
心臓どきどきものでした。
まるで自分もそこで見ているかのような感じ。
苦しみを一つ越えて、のだめのピアノに
変化があったり本当にリアル。

千秋の気持ちは痛い程に分かるし、
それをちゃんと〈千秋〉のままで現せているのも凄いです。

どうしてもGJでは終わらせられず、
だらだら感想書き込んでしまってごめんなさい。
次も楽しみにしています。

318 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/22 18:56:37 ID:WY89VHqg
オーケストラの専属ピアニスト???
合唱団や歌劇団ならともかく、管弦楽団の???

319 名前:842です[sage]:05/02/22 19:10:03 ID:zTNVAlVw
317(305)さん
 わー、ほんとに縁があるのかも。
 いつもあたたかいお言葉ありがとうございます。
 今度もドキドキしてやってください(笑)

318さん
 えーと、私もちょっとありえないのかな、と思ったのですが。
 なにしろ音楽の世界に関しては素人なので。
 調べもしないで書いてしまっている点は、否めません。
 どうかそこら辺はながして読んでもらえるとありがたいのですが。

勉強不足ですね。もっと精進します。
 

320 名前:名無しさん@ピンキー[]:05/02/22 19:13:17 ID:D99ziVwG
漏れも前から気になってたんだけど
「専属ピアニスト」って・・・・ないよね。
ピアニストは公演ごとに出演依頼を受けるわけで。



321 名前:名無しさん@ピンキー[]:05/02/22 19:15:12 ID:D99ziVwG
>258さん
でも、気にしないでもいいと思いますよ。
NYで色々な公演依頼があるってことで?!

322 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/22 19:41:39 ID:A7ilr0Rj
専属ピアニストとはちょっと違うけど、
富豪が気に入ったピアニストを側に置いて援助(パトロン)したりするのはある
画家とかではよく話聞くけどそのピアニスト版かな
知人にそんな話があったけど、多少なりと束縛みたいなのがあるから断ったらしい

323 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 01:09:02 ID:l8U4lQXL
細かい事はいいでしょう
私も気にはなったけど勝手に脳内補完して読みました。

ステファンは指揮者であると同時に著名なピアニストであり
一緒に室内楽や連弾、協奏曲をやってみないかと誘われたとか…。
かのアシュケナージも気に入った若手ピアニストに
アメリカでガーシュインの協奏曲弾かせてますし。

いずれにしろ842さんの登場人物の心理描写は素晴らしいですヨ!

324 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 01:18:30 ID:xTXghaVb
細かい事(詳しい人は気になるだろうが)を指摘されてばかりだと
神がやる気無くしてしまうかもしれないから、やめて欲しい。
みなさんまたーり優雅に神の投下を楽しみましょうよ。

325 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 10:13:23 ID:BxcznVrm
ちなみに、自分語りで申し訳ないのですが、私はピアノでオーケストラ所属してましたよ。
昔のことだしプロの団体ではなかったけど。
協奏曲をやったのは一度だけですが、ピアノが組み込まれた曲では
普通に団員として演奏に加わってました。

話題を引っ張るのも悪いなと思ったのですが、一応そういう立場だった者もいるということで・・・

326 名前:323[sage]:05/02/23 10:45:21 ID:l8U4lQXL
>>323です
引っ張りついでに…
調べた所、オーケストラピアニスト(鍵盤楽器奏者)がいる
オケもありましたヨ。(東京シティフィルなど)
コンチェルトやオケピアノはもちろん、
チェレスタ(「ティル〜」で描かれてた鍵盤楽器です)や
チェンバロも演奏しないといけないようですが。
今までソロしか学んで来なかったのだめにはアンサンブルのいい勉強かも?

てエロパロスレらしくない話題ですみません!
神様方、つづき楽しみにしてますv

327 名前:842です[sage]:05/02/23 12:42:07 ID:9VtI7GuO
うわー! たくさんのコメント&ご意見&情報、ありがとうございます。
私のヘマで多くの方々に迷惑をおかけしました。
雰囲気を壊す原因を作ってしまったこと、深くお詫びします。
本当にごめんなさい。

325さん、326さんの情報、たいへん勉強になりました。
ありがとうございました。

SSのほうは、この後もいろいろと矛盾点が出てくるかもしれませんが、
書き始めた以上、最後まで続けようと思ってます。
今日の分、もうちょっとであがりますので、この話題は
ここで〆させてもらえるとありがたいです。

よろしくお願いします。

328 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 14:12:36 ID:7vcQv7Bc
842の話、
某神SSBlogのシチュエーションとかぶりまくりなんだけど。
だからなんだかつまんない。
ヒントにしたなら一言あってもいいんじゃ?

329 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 15:13:00 ID:h5HBp9YC
もうそんな事いうのやめましょ。
842さん気にしないで!
荒らしならよそ行ってやってください。

330 名前:842です[sage]:05/02/23 15:31:39 ID:9VtI7GuO
はい。気にしてません。
ありがちなシチュエーションなのはよくわかっております。
文章丸写しであるなら問題ですけど、恐らくそんなことはないと
思います。328さんのいうBlogを見たことがないので。

というわけで、めげずに投下いたします。

331 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/23 15:33:36 ID:9VtI7GuO
9.この罪の、名は

隣で眠っているのだめの顔を、ずっと見ていた。
無理やりに近い形で彼女を抱いたことで、俺はますます自己嫌悪に陥ったけれど。
そんな俺を、昨夜彼女はただ優しく抱きしめてくれた。
この気持ちを、どう整理すればいいのかわからない。

やがて、カーテンの隙間から柔らかな朝の日差しが差し込み。
のだめの栗色がかった髪が艶やかな光を帯びる。
眩しそうに一瞬強く瞑った瞼はゆっくりと開かれ。
目を覚ました彼女の視線とぶつかった。
どうやって声を掛けようか一晩中考えていた俺の口から出た言葉は「昨日はゴメンな」。
徹夜で考えた台詞がコレか、と自分を呪いながらも右手は素直に彼女の頭に伸びる。
のだめは首を振り、「おなか、すいたデス」と小鳥のように鳴いた。
その様子に、俺は久しぶりに、笑った。

カフェを出た後、しばらく手を繋いだまま歩いた。
彼女は何も言わず、俺も黙ったままで。
それでも予感は確かにあって、俺は未だ答えにたどり着く術を持っていない。
けれど何か言わなくてはと、緊張で乾いた喉を無理やりこじ開けようとしたその時。

「のだめ、NYに、行きます」

手を繋いでいるのに、彼女の声がやたら遠くに聞こえた。

「相談もしないで、勝手に決めてゴメンナサイ」
そう言う彼女の足は、地面をしっかりと踏みしめ。
「けど、ステファンと競演したいっていう自分の気持ちを大事にしたかったんです」
そう言う彼女の首は、天に向かってすらりと伸び。
「のだめの音が、どこまで進化していけるのか、知りたいから」
そう言う彼女の瞳は、俺の顔を射抜くようにまっすぐ見つめた。


332 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/23 15:34:27 ID:9VtI7GuO
のだめの姿はその意思の強さを感じさせ、俺はまともに向かい合うことができない。
「……そこまで決心しているなら、俺から言うことは何もないよ」
目を逸らして、言った。
「行きたいと思うなら、行けばいい」
「それだけですか? 何か言いたいこと、無いんですか?」
「ああ」
「勝手に決めてきて、NY行っちゃうんですよ?」
「……ああ」
「いつ帰って来られるかも、わからないんですよ?」
体中の血液が、逆流していくようだった。
「行くなとでも言って欲しいのか!? それでお前は行くのをやめるのか!?
 ふざけんなっ!!」
怒鳴り声にも臆することなく向けられる視線に、俺はますます感情的になっていく。
「それでもお前は行くんだろ!? 俺にどうしろって言うんだよっ!」
「本心をぶつけて欲しいんです! 誤魔化さずに――」
「お前がそれで良くても! 俺が、嫌なんだよ!!!」

これ以上お前の邪魔はしたくないんだ、とは言えなかった。
今、どのような言葉を発しても、すべてのだめの足かせにしかならないと思った。
だから、しばらく押し黙った後、言った。
「……少し、距離を置かないか?」

「別れるって、ことですか……?」
彼女の瞳は初めて光を失い、俺の左手を束縛していた温もりが、消えた。


333 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/23 15:37:26 ID:9VtI7GuO
10.冷えた指先

先輩の、本心を、そのままぶつけてもらって。
まるごと抱えて、私は初めて飛び立てるんだと、思ってた。
でもそれは、自分勝手なきれいごと、だったの、かな?
離れてしまった手を、見つめる。
「手」を――。

――この手を離す気なんて、さらさらないデスヨ。

前に、自分で言った言葉が、今、胸に突き刺さるようで。痛い。

先輩が何かを言いかける前に、2歩、3歩と後ずさり。
「ゴメンナサイ! のだめ、ちょっと行くトコありますから」
笑顔を作って、そのまま駆け出した。後ろのほうから声が聞こえたけど。
もう、届かない。
心臓の音がやけにうるさくて。
頭の中は、やけに静かだった。

目の前のボタンを押して、インタフォン越しに自分の名前を告げる。
しばらくして大きなドアが開き、中から小柄な男性が姿を現した。
「お久しぶりです」
彼は突然の来訪者に驚きもせず、私を部屋の中に招き入れてくれた。
「連絡も無しに、お邪魔してスミマセン」
「いや、キミが来てくれて嬉しいよ。ベーベちゃん」
もうベーベちゃんじゃないか、とオクレール先生は楽しそうに笑った。


334 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/23 15:39:52 ID:9VtI7GuO
NY行きを告げると、先生はコクリと一つ頷いて「オメデトウ」と言ってくれた。
「それで、わざわざお別れを言いに来てくれたの?」
「それも、あるんデスケド……」
出されたお菓子を紅茶で流し込んでから、私はピアノを指差す。
「最後に、もう一度レッスンしてもらおうかと思って」
私の言葉に呆れる仕草をしてみせて、彼はおおげさに溜息をついた。
「キミはもう私の生徒じゃナイでしょう? まったく人使いが荒いヨネ」
「いいんデス! 先生はいつまでものだめの先生なんデスから!」
そこで顔を見合わせて、ウフフと笑った。

ラベルのクープランの墓を弾きながら、私は自分に言い聞かせる。
大丈夫、大丈夫だと。
だって私はピアノを弾いているのだし。
「僕たちは音楽で繋がっている」んだから。
旋律は流れ出し、私の涙はもう、流れることはない。

「メグミ、ボクが言えるのは一つダケ。ピアノに感情を乗せるのはかまわナイ。
 けれども、感情を誤魔化す道具にしてはイケナイヨ」
私は曖昧に頷いた。


335 名前:そして僕らは…/842[sage]:05/02/23 15:41:13 ID:9VtI7GuO
11.そして僕らは間違っていく

ものすごい後悔と自己嫌悪に襲われながら、数日を過ごした。
のだめはあれからどうしたんだろうか?
結局、顔を合わせることなく、俺は次の仕事先であるチェコに飛んだ。
テーブルの上に僅かな希望を残して。

演奏に集中することで、鬱屈とした気分を紛らわせた。
それでも、後から後から覆いかぶさる黒い波に、押し流されそうになった。
音楽に対する情熱だけが、俺を支えていた。

楽屋に来たシュトレーゼマンに言われた。
「チアキは、本当に馬鹿デスネ」
ポンと肩を叩いた手が、暖かかった。

3週間後にパリに戻り、部屋の様子からのだめがもう旅立ったことを知った。
彼女の服が、本が、彼女に関わるすべてのものが消えていた。
呆然と立ち尽くす俺に、管理人のアンナが声を掛け、紙袋を手渡した。
中には、見覚えのあるネックレスと、一通の手紙が入っていた。

便箋には一言、「ありがとう。ごめんなさい」という文字が書かれていた。


おわり    後編につづく


336 名前:842です[sage]:05/02/23 15:55:29 ID:9VtI7GuO
前編が、ひとまず終わりました。
救いのないとこで終わらせてしまいました。
とりあえず、区切りです。

「つづく」と書いたとおり、後編があるんですが。
なんだかこのまま書いていってもよいのかなと。
荒らしは気にしませんが、ここの雰囲気が壊れるのは
本意ではありません。

心配してくださった方、ほんとにありがとうございます。
本誌の発売も間近ですし、しばらく私は遠ざかった方がいいかと
思いますので。

337 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 17:28:57 ID:hCNquG29
824さん
そう危惧する気持ちも分からなくもないですが。
ここまで人を期待させるようなことをしておいて、
放置なんてもっとサイアクだと思いますけど。
自分が書きたくて書いたモノなら堂々と最後までやり遂げてください。
ワタシは楽しみに待っています。

338 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 17:30:23 ID:hCNquG29
あ、824じゃなくて842さんでしたね。すみません。

339 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 17:52:37 ID:VZX8oDGb
337さんに同意。
放置プレイはつらいです。
後編楽しみにしてます。

340 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 18:03:27 ID:9J4VwT6/
荒らしが来るのは防げませんので、気にせずスルーで。
>337は何だかエラソウですが、私はSSも書けませんしただただ、
作家さん達が投下してくださるのを待つ身。
あとは感謝の言葉。好きでなかったらスルー。

この板の他スレですが、作家さん達がいなくなったところは
本当に悲しいですよ。それでも覗いてしまうのです。
今日もまた…○| ̄|_

341 名前:842です[sage]:05/02/23 18:45:48 ID:1aCUc36h
あわわわ。ご、ごめんなさい。
何か誤解を招く書き方をしてしまいました。

放置する気はないです。
つづきはきちんと書くつもりです。
ただ、全部書き終わってから、荒らしが静まった頃こっそり投下したほうが
いいのかもしれないと思った次第です。

ご心配をおかけしました。
気にせず投下してもよろしければ、またがんばりますので。
よろしくお願いします。


342 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 20:54:30 ID:sg5jrTSe
842さん、お疲れ様です。
今回の話もすごく切なくて胸が締め付けられました。
842さんの話ってすごく心理描写が上手だなっていつも思ってます。

荒らしの件、本当に気にしないで下さいね。
私も昔、他のスレで一回だけですが荒らしにあったことがあって、その時はものすごく
落ち込んで、結局その話の続きを書くことがどうしても出来なかったことがあります。
だから842さんの気持ちはすごくわかりますので、今は無理しないで下さいね。
続きを楽しみに待っているファンがいますので、焦らずにゆっくり書いて下さい。
気長に待ってます。


343 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 21:03:03 ID:hSNgDk+s
842さん、私も待ってます。
とても読みやすく、描写もわかりやすく、
内容もおもしろくて、続きが楽しみです!

344 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 21:06:02 ID:IqlOe/ly
>>328
あなたが荒らしじゃないのなら、そんなことは言わない方が
いいと思いますよ。
あなたの言う神様にも迷惑がかかると思いますが。
所詮、エロパロ板なんですから。

荒らしなら、スルーできなくてごめんなさい。>all
842さん、お待ちしてますよん。
気にしないで投下してください。

345 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/23 22:52:19 ID:S2qu9TY0
>842
好きなペースで書いて下さい!
お茶でも飲んでのんびり待ってますので。
マターリで行きましょう!

346 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 02:10:18 ID:Tq5NJEh5
842さん!GJ!いつも楽しく見ています!!
今から後編がとっても楽しみデス!
他のブラボーな職人さんたちの投下も楽しみにしています!!
職人さんたちガンガレ!(・∀・)/〜♪

347 名前:名無しさん@ピンキー[]:05/02/24 15:26:42 ID:G7qN9jYU
...。

348 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 17:29:16 ID:MX8Sy9Vq
思うのだが、多分みんなもう一目盛りくらいずつ落ち着いて、
スルーを含む、大人の反応をした方がいいのでは。
それだけで「荒らされる」確立が少しは下がると思いますよ。
大好きなスレだから守りたいので、敢えて言いました。

職人さんたちGJ.
これからも楽しみにしています。

349 名前:夏生[sage]:05/02/24 19:51:03 ID:yMxtwGBs
一言書かれただけで「荒らし」と決め付けるのもちょっとアレだしね。
満員電車で尻に誰かの手が触れただけで「チカン!」と叫ぶような感じ。
マッタリいきましょ。

350 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 20:57:36 ID:l3h3vuoS
自慰はまだかのー

351 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 22:50:51 ID:YiPJvCNm
最近エロいのを読んでいないので
エロを読みたいと言ってみるテスト。
職人さんお願いします。_| ̄|○ノシ

352 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 23:26:31 ID:ZWq34GpD
千秋の自慰を書いていると申告していたものです。
予想以上に長くかかってしまい、スミマセン。
待っていてくれる方がいて、大変嬉しいです。
>350 さん どうもありがとう。

ようやくできたので、投下しにまいりました。
では行きます。

353 名前:○ambrosia 1 / drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/24 23:28:44 ID:ZWq34GpD
「…先輩……のだめ、もうだめデス……」
千秋は、息も絶え絶えに身をよじって逃れようとするのだめの腕を捕えた。
「もう……許して……」
「ダーメ……もう一回……」
白い背中にキスの雨を降らせ、三度目をおねだりする。
「んもう……真一くんのばかあ……」
「のだめ……」
「やぁん……あっ……」

のだめ……

のだめ……


指先がシーツの隙間を泳ぐのに、求めた温もりに辿り着けない。
「ん〜〜……」
その苛立ちに瞼を開けると見慣れない天井が見えた。
そうだった……ここは旅先の滞在ホテル。
隣にのだめはいるはずもなく、千秋は独り目を覚ました。
「ん……」
ベッドの中で身じろぎすると、体の一部に圧迫感を感じる。
「ぉ……」
あんな夢を見たからだろうか。
ボクサーパンツの中で、自分自身が勃ち上がっているのがわかる。
……最近多いんだよな…朝勃ち。
そんなことを寝ぼけ頭でぼんやり考えながら、それが収まるのを待つ。
体を起こし、煙草に火を付けた。
やけにリアルな夢だった。…というよりも、演奏旅行に旅立つ前夜の出来事そのままだった。
長い旅行の後で数日間だけフランスへ戻り、再びこうやって別の土地へ来ている。
そのたった数日間の間で、二人は離れ離れの時間を取り戻すかのように求め合った。
…のだめとそういう仲になってからは、割とコンスタントに体を合わせている。
特にここ最近はのだめも行為を楽しみ、より深く悦びを感じるようになってきていて、以前より回数が増えた事は事実だ。

354 名前:○ambrosia 2 / drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/24 23:30:00 ID:ZWq34GpD
それまで、彩子と別れてからは3年近く御無沙汰していて、その間は処理しなければどうにも収まらない時にだけ自己処理してきた。
それは、男の生理として仕方のない事で、あくまでも、事務的に。
それだって回数が多かったわけじゃない。
時には音楽が精神の高ぶりを抑えてくれるとともに、体を浄化していってくれた。
彩子とのセックス…あるいはそれ以前の彼女とのセックスだって、目立って回数が多かったわけでもない。
セックスってこんなものなんだろう、と初めからさして感動もなかった。
相手によりもっと感じて欲しいという思いはあって、それなりに努力はしていたけれど、自分から一晩に何度も求める、なんて考えられないことだった。
だから、自分は淡白な方なんだと思っていた。
しかし、のだめの体は意外にも魅力的で、そばにいれば触れずにはいられず、触れれば求めずにはいられず、結果として何度でも……。
そういうサイクルの中で、一週間も離れていると体自体も寂しさを感じるのか、それは千秋の意と反して更に固さを主張してきていた。
それに、さっきからのだめの体が頭の中で浮かんでは消え、浮かんでは消え、離れない。
白い肌は吸い付くように滑らかで、官能を感じ始めると淡くピンク色に染まる。
ボリュームのあるバストはマシュマロのように柔らかいのに弾力に満ち、頂にはそこへの愛撫だけで登りつめてしまうほどに敏感な、小さな乳首。
「くびれがない」なんてからかった事もあったけれど、十分なカーブを描くウエスト。
隠れた性感帯である縦型の臍。無駄な肉のないしなやかな背中。
小振りな尻は引き締まって丸く、えくぼがかわいらしい。
暖かな内股、小さな膝小僧。
……何もかもが愛しい。
はっきり言って期待なんかしていなかったけど(胸以外は)……体の線が出ないワンピースの下に、あんな体を隠し持っていたなんて、まったく、反則ものだな。
「……うーん…………」
千秋の想像はのだめの一番奥の…薄い恥毛に囲まれた溶けるように熱い窪にまで及んで、さらに自分を追い立ててしまう。
あー…すげえ、したい……。
むらむらと沸き上がってしまう欲望をこのまま押さえ切れそうもなくて、千秋はベッドを抜け出しバスルームへ向かった。

355 名前:○ambrosia 3 / drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/24 23:31:28 ID:ZWq34GpD
熱いシャワーで体を洗い流した後で、千秋はバスタブの縁に腰掛けた。
自分ひとりしかいない、誰も入ってくるはずがないのに、バスルームの鍵はかけてある。
シャワーのカランは閉めず、低い位置にシャワーをかけたままで、湯気でけむる中千秋はボディーソープを手にした。
掌で温めてから自身を握り、ぬめりをまとわりつかせる。
「…んっ……」
先端に指を這わせると、ボディーソープのぬるみではない、自分のぬるみがにじみ始めていることがわかる。
のだめが口で自分を愛撫するとき、儀式のように先端に小さくくれるキスを思い出しながら、それを先端に塗りこめていく。
やがて柔らかな唇、温かな口腔へと含まれ、恥じらいながらも音を立てて舌を絡ませる姿を思い描く。
目をつぶると、口いっぱいに千秋自身を咥え、自分を見上げるのだめの視線とぶつかった気がした。
輪状にした指でくびれた部分をゆるゆると上下し、たっぷりと唾液を乗せたあの赤い舌で舐めまわされるのを意識する。
何も知らなかった、まっさらなのだめに教え込んだ、自分好みの、自分のためだけの、その所作。
「はっ…んっ……」
自分しか知らない、自分だけが知っている、のだめの柔らかな甘い体……。
強い優越感は、千秋の奥底にある密やかな妄想を引きずり出し、次第に脳裏に映し出していく。
そのスクリーンの中で……千秋のペニスははのだめの弾力ある胸の双丘にはさまれていた。
両手で持ち上げ、たぷんたぷんと波打つ胸の間で、緩やかに幹をこすられる。
硬く尖りきった乳首を両側から押し付けられたり、敏感な裏筋をなで上げていくことを想像しながら、
千秋はその硬い指先を自身のそそり勃つペニスに這わせた。
「ん…はぁ…んっ…ぅ…」
白い胸を上下させながら、のだめは硬く張り出した亀頭にぺろぺろと舌を伸ばしている。
なんて…、なんて、いやらしい……。
実際にはまださせたことのないその願望は、想像でありながらも的確に千秋を快楽の高みへと持ち上げていく。

356 名前:○ambrosia 4 / drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/24 23:33:39 ID:ZWq34GpD
せわしなく往復運動を繰り返す右手からは、いくつかの滴りが糸をひいて落ちていった。
にちゃにちゃとこすりたてる音と、喉から押し出される掠れた吐息が、エコーのかかるパスルーム内に響く。
「はぁ…ぁっ……ッ…」
終わりが近いのを予感すると、千秋は想像の中ののだめを引き寄せ、四つん這いで高く上げさせた秘所に一気にねじ込んだ。
と、同時に指の締めをきつくした。
きつい入り口の締まりに飲み込まれ、一瞬ふわっと緩んだ後で、嵐のような締め付けがやってくる。
…そんな、のだめの中を思い出す。
こちらからの愛撫に体全身を使って悦びを表す様は、千秋の雄としての自尊心を十分に満たす。
髪を振り乱し、歌うような嬌声は耳に心地よく、狂おしいほどに乱れては何度も自分の名前を呼ぶ。
しなやかな体にまとった肌はどこまでも甘い。
玉のように吹き出し、流れゆく汗さえ、甘露だ。
強く抱きしめたい体はここにはなく、欲しい温もりも腕の中になく、けれども体に刻まれた感覚が官能を激しく揺さぶる。
ぷにゅぷにゅに柔らかくて、ふわんと暖かくて、抱きしめたり、抱きしめられたりすると、
なんとも言えない甘い幸せが胸を満たして……。
あんな感覚は今までになかった。
身も、心も、こんなにも求めて苦しい。
「…のだ…め……のだめ……んっ…」
愛しい名前を口にすると、甘い痺れが背筋を駆け上った。
早く、会いたい。……早く、おまえを抱きたい。
右手の動きを一段と強めると、やがて射精感が押し寄せてきた。
腰を前後に揺れ動かさずにはいられず、打ち付けるような動きを繰り出しながら、千秋は躊躇することなく登りつめた。
「くっ…っああ…っっ…っ……」
たっぷりと吐き出された飛沫は大きく弧を描き、向かい合ったバスルームの壁にまで飛んだ。
「……っ……あ……っっ」
ひくひくと跳ねては二度、三度となおも強く吹きだし、流れる湯と渦になって排水溝へと消えていった。

357 名前:○ambrosia 5 / drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/24 23:34:43 ID:ZWq34GpD
すっかり、すべてをシャワーで洗い流し、千秋はパスローブ一枚でベッドへ腰掛けた。
半分残っていたエビアンを、喉を鳴らして一気に飲み干す。
柔らかなタオルで髪の雫を拭いながら、大きなため息をついた。
想像の中とはいえ、あんないやらしい痴態をのだめに取らせてしまった事に、自分の欲望の恥ずかしさを知る。

でもやっぱり、あの胸は反則だろ。
柔らかくて……あったかくて……。触っているだけで落ち着いて幸せな気分になれて……。
いや、一部、元気になるところもあるけど……
『Rrrrrrr Rrrrrrr Rrrrrrr』
不意に携帯が鳴る。
必要以上にびっくりとした千秋は、何かにその想像を覗かれたような気がして、誰もいないのに何故か部屋を見回してから電話に出た。

「おっはよーございマース!」
「……の、のだめか」
「先輩、元気にしてますかー?」
「えっ?……あっ、嗚呼、うん、なんとか……」
「寝起きでしたか?なんだか声が変ですネ……どうかしましたか?風邪?」
「ど、どうもしないけど……シャワー浴びてただけ……」
なんだか妙に焦ってしまい、しどろもどろになってしまう。
無邪気ないつも通りの声に、先ほどまでのだめを自慰の対象としていた事に多少の後悔を感じてしまう。
汚してしまった気がして。
いや、もう汚したのと同然のような事はいっぱいしてるけど。
……でも、ほかの女じゃ、きっともう満たされない。
想像の中ででも抱きたいのは、欲しいのはこの女、のだめただ一人だけだ。

358 名前:○ambrosia 6 / drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/24 23:37:54 ID:ZWq34GpD
のだめは明日の何時頃に空港に着くのかを聞くと、迎えに行きますね、と電話を切った。
「のだめ、今週すごく頑張ったからご褒美ください。先輩にいっぱいかわいがって欲しいデス……ギャハ!」
と、最後に言い残して。
かわいらしくおねだりしたつもりだろうが、逆効果だぞ、と千秋はクスリと笑った。

早く会いたい……。
明日になれば、会える。
そしたら、お望み通り、いっぱいかわいがってやろう。
胸の内側によみがえるのだめの笑顔に、心をひたひたと甘く暖かにさせられながら、千秋は再びベッドに潜り込んだ。
……胸に挟んで欲しいのは、前からずっと思ってる事だけど。
でも、そんな事言ったらまた、「おっぱい星人」とか言われそうだな……。
でも、しょうがないよな、好きなんだから……。
そんな事を考えながら、千秋はカーテン越しに差し込む陽にまどろんでいった。



━━━━━━━━━━━━━━━━終わり

am・bro・sia 
1【ギリ神話】アンブロシア,神肴(しんこう):不老不死になれるという神々の食べ物・飲み物.
2非常に美味なもの,珍味佳肴(かこう).

359 名前:drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/24 23:45:09 ID:ZWq34GpD
以上でございます。
期待からそれた内容でしたら大変申し訳ないです……

また、千秋のハピバスデSSに感想頂いたのにお返事できず、大変失礼いたしました。
ありがとうございました。
すいません、青姦なんかさせて。……ってこんな言い方も変だけれどw

日付変わったらkiss発売日ですね。
私は時報と共にコンビニに買いに走る予定です。

では名無しに戻ります。

360 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 23:48:00 ID:l3h3vuoS
dropさん!GJ−−−!!!!!!!

リアルで見てしまいました。
ももも萌えましたーーー!!!

千秋、男だ!!
遠くへ飛ばしてくれたのがツボでした!w

361 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 23:50:00 ID:l3h3vuoS
青姦も自慰も
最高です!

362 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/24 23:57:24 ID:pm8smT3t
dropさん。期待にまっすぐストライクですよ!!!

363 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/25 00:08:09 ID:jRd335g0
dropさん、最高でした!
青姦も自慰も本当によかったです。
もう激萌えました。
kissの最新号を読めた夜に、こんなすばらしいSSを読めるなんて本当に幸せです。
次回作も、ぜひぜひ待ってますね!

364 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/25 00:14:41 ID:PYjI06ly
待ってましたー。

365 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/25 00:53:32 ID:5l2SxoQV
一人乱れる千秋、GJですdropさん!乙でした〜。
ぜひぜひ、翌日の夜の二人も書いて欲しいところです〜

>362
「期待にまっすぐストライク」禿ワラタ

366 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/25 08:01:59 ID:kx2RpaHl
dropさん!GJ!

>でも、しょうがないよな、好きなんだから……。
千秋かわいい・・・

367 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/25 11:15:55 ID:uwzLejzU
排水溝へ流してしまったものがもったいないなw
千秋の遺伝子、ほしいぞ。

368 名前:drop ◆8d59i59Tbc [sage]:05/02/25 12:18:22 ID:7E6+TSj6
皆様、読んでいただいてありがとうございました。ご感想も、ありがとうございます。
ストライク外れなくて良かったですw

>でも、しょうがないよな、好きなんだから……。

>でも、しょうがないよな、好きなんだから(おっぱいが)……。
と付け加えておいてくださいw

翌日の夜の二人…そーかー。考えてみます。アイデアdクスです。
また何か出来上がったら投下させてください。
ではまたー。

369 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/25 13:19:21 ID:uwzLejzU
「ダーメ……もう一回……」 が大好きです。

翌日のふたりもいいですね!(みたい)他にも
酔って乱れたのだめ、
千秋のレッスン
キッチンプレイ・・最低?


370 名前:名無しさん@スリーピー[sage]:05/02/25 18:42:00 ID:lsaRd1f0
ねだめカンタービレ

371 名前:名無しさん@スリーピー[]:05/02/25 22:07:37 ID:jak8xdJH
ねだめアレグロコンフォーコ!!

372 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/26 13:44:06 ID:xD+DZSBG
発情期千秋キボン

373 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/26 23:54:35 ID:cRIoQ/2z
静かですね。
皆さん、萌えを執筆中でしょうか。

374 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/27 21:43:56 ID:YQicyFIQ
静寂が続いてますね・・・。
職人さんお待ちしてマス。

375 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/27 22:18:29 ID:Kep3PDAJ
あまりに静かでさみしいので、小ネタ一つ投下します。
エロくないですが。

376 名前:けろりん[sage]:05/02/27 22:21:11 ID:Kep3PDAJ
『褒美の報酬』

■1

ガラス越しにのだめが走って来るのが見えたので、扉を開けて建物の中に迎え入れた。
「センパイ、お待たせしましたー」
「悪かったな」
「いいえー、妻デスから」
「妻じゃねーだろ!」
パリの、ウィルトール交響楽団の練習場。
俺のデビューコンサートがなかなかの好評を博したため、また振って欲しいとの
依頼が舞い込んだ。今日は、その挨拶を兼ねて打ち合わせに来ていたのだが、
必要な書類を自室に忘れて来てしまい、急遽のだめに持ってきてもらったのだ。
こっちへ、と出入り口横のスペースへ誘い、そのまま少し立ち話をする。

「今度は何の曲やるんですカ?」
「まだ決めてないけど……ラフマニノフの−−−」
「えっ、まさかピアノ協奏曲デスかっ!?それはダメです!」
のだめが血相を変えて叫んだ。
「いや、交響曲第2番はどうかな、と思ってるんだけど。……ピアノ協奏曲は、だめか?」
「あったりまえです!のだめがやるって決めてるンですから!」
くすり。こいつは、俺との共演を目標にしている。ありがたい話だ。
だけど今のままでは、無理。
のだめ本人がどこまで分かっているかは分からないが、
留学するところまでようやくたどり着いたんだ。
これからが本番だと、俺は思っている。
「Ruiには先を越されちゃいましたケド……」
「あれは事故みたいなモンだからさ。……早くしてくれよ」
「頑張ってマス!」


377 名前:けろりん[sage]:05/02/27 22:23:59 ID:Kep3PDAJ

■2

「で、センパイ、ご褒美は?」
「褒美?なに?」
「なに、って……決まってるじゃないデスか…」
のだめは、上目づかいに、俺の目を覗き込みながら唇を軽く突き出した。
……ああ。
俺は理解して、そして赤くなる。
「ばーか、お前、なにこんなところで……」
だけどこいつは、嬉しそうにこう断言した。
「ダイジョーブ、ここはアムールの国、フランスですよ?
まわりはフランス人ばっかり、ここで何してたって気になんかしまセンよ!」
そう言われれば、そうか。……そうだな。
それでも一応、あたりを見回す。
誰もいないのを確認して、のだめの頬を包み込み、そっと唇を寄せた。
のだめの、半開きになった唇の輪郭を、自分の唇でなぞり。上唇をはさみ、
下唇をはさんで、角度を変えながら2度3度と柔らかさを確認するように口づける。
勿体ないけど、こんなところであまり濃厚なキスもできないから……
それでも一瞬、のだめの舌を絡めとり、味わった。
「ん………」
名残惜しく唇を離し、背中を抱き寄せて、俺と同じシャンプーの香りが漂う髪に鼻先を埋めた。
「……サンキュ。今日は、早く帰るから…」
「どちらかと言うと、のだめがお礼を言いたい気分デスよ……?」
何言ってる。
ふたり、余韻を楽しむように身を寄せて、そのまま少し話ていると。
カチャン。物音がした。続いて人の気配がするのにようやく気付き、顔を上げようとすると。
日本語で、名前を呼ばれた。
「あれ……もしかして、千秋くん?」

378 名前:けろりん[sage]:05/02/27 22:28:19 ID:Kep3PDAJ
■3

そこにいたのは、クラシック・ライフ編集部の河野けえ子と。
あの松田幸久だった。
「!!……な、なんでこんなところに!?」
俺はあわててのだめの肩をつかみ、自分からひき剥がした。
「松田さんのパリでの公演が近いのでその取材と、千秋君関係の追加取材を
一緒にやっちゃおうってことで、たまたまこっちに来たんだけど……
ごめんなさい、邪魔しちゃったかしら?」
「い、いいえ、別に……俺も次の打ち合わせで来ていて…」
失敗した!なんで俺、のだめの言葉に乗せられちまったんだ!
松田さんの目が、どう見ても笑っている。
というより、“なーに面白いネタをこの俺に提供してるんだ千秋くん、
バラしちゃうよ分かってるあーん?”という表情だ。
奴はその目をふいとのだめに移し、興味深げに見つめる。
「そちらは?」
「あ、えーと……」
なんと紹介するべきかと一瞬言葉に詰まる。
すると、のだめはいつもように屈託なく言い放った。
「はじめまして、妻デース」
ば、か、や、ろーーーーー!
「ええ、千秋くん、結婚してたの!?」
「違うーー!!」
「そ、そうよね。彼女だよね?」
「………そう、です……」
とうとう、言ってしまった……
松田さんは、すべて理解したよ、というような表情をして。
「ふーん、これが噂の彼女か。よろしく。
いやあ、千秋くんのいいシーンも見れたし、ここまで来た甲斐があったなぁー、ねえ河野さん?」
……あの松田幸久の、楽しそうな目を、俺は忘れない。

<FIN>

379 名前:けろりん[sage]:05/02/27 22:40:13 ID:Kep3PDAJ
以上、さらっと書いてみました。
今週号とはなんの関係もないですが。
dropさんの夢の千秋自慰のあとには
なんともアッサリし過ぎていてお恥ずかしい…。

きっとこの静寂のあとには、多くの神が降臨されるで
あろうことを心より期待しております。

380 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/27 23:00:13 ID:wYGMMXN8
けろりんさん、GJ!
すっごく面白かったです。
松田さまと千秋の絡みも最高でした。
ぜひ、続編で松田さまがのだめにちょっかいだして、
千秋がヤキモチをやくとかいうのが見たいです。
次回作、期待して待ってますね!

381 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/28 00:03:32 ID:qocxG67w
けろりんさん、楽しかったです。
全く恥じる必要はないですよぉ!
直接的なエロ表現以上にエロい期待を抱かされましたよ。
エロ以外のやりとりも楽しいし。
けろりんさんのSSの独特のテンポや余韻が好きです。
また気が向いたら投下してくださいネ。

> dropさんの夢の千秋自慰
これはこれで、夢のように読みました。
バスルームの湯気やシャワーの音が耳や肌で感じられるようなSSでした。
ふぅ、うっとり。

382 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/02/28 09:59:57 ID:iS1cnxWC
千秋発情期らしいんで本誌でもそろそろ
そんな展開になっていくんでしょうか…
でもキスまでは勢いでできてもエチーはそうはいかないだろうから
所長がどう描くか楽しみだな〜

383 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/03/01 00:11:58 ID:B7DUZbhr
けろりんさん、GJです!!
あー、松田さんステキすぎるw
もちろん、二人が普通に恋人同士なところが激しく嬉しい。
また投下お願いしますね!

相手がのだめだから、一筋縄でいかない気がして、なんかもうやきもきしているよ。
朝チュンがあったらきっと祭りだろうけど、それ以上になんか生々しい「やったな」的な
ものがあったら暴動・戦争になりそうだ。
街を練り歩くどころか、おひねりまでバラまいてしまいそうなんだが。
御輿も担ぐか?「真一くん万歳」とか書いて。


384 名前:名無しさん@ピンキー[sage]:05/03/01 00:18:35 ID:+8QaFZvx
私の予想ですが。所長のことなので、またムッシュ長田が絵を描いて、それが「やったな……」
と思わせる気ではないかと予想しています。
今、千秋の発情期&初Hでそういうのを書いている途中なのですが、いつ完成するのか……。
いやー、でももし本誌がそうなったら、ここもすごく盛り上がりそうで楽しみです!


385 名前:842です[sage]:05/03/01 20:22:43 ID:Ost7713A
ようやく続きが完成しましたので、投下いたします。
待っていてくださった方々、遅くなってごめんなさい。

エロなしで、かなり長いですが。

386 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:24:24 ID:Ost7713A
過去の過ちを取り消すコトなんかできない。
けれど、再び繋がれた手は、離さない。絶対に。

「あなたの音がココにあって」

1.届く音、見えないモノ

肌寒さを感じて、目が覚めた。
ぼんやりとした頭で周りを見回すと、ここは俺の部屋のリビングで。
足元に散らばった楽譜にああそうか、と思い出す。
どうやら俺はスコアにチェックを入れながらソファでうたた寝をしたらしい。
んー、と伸びをして立ち上がった。

辺りはしんと静まり返り、窓から差し込む月明かりが未だ明けぬ夜を知らせる。
ベッドに入って休もうかと思ったけれど、再び眠気が訪れる気配も無く。
俺は暖房のスイッチを入れ、コーヒーを入れに台所へ向かった。

温かな湯気がたゆたうカップを手にして、テーブルに投げ置かれた雑誌に目をやる。
そういえば、まだ目を通してなかったな。
一年前にNYへ渡った彼女の動向を、この音楽雑誌で確認することが
いつの間にか俺の習慣になっていた。

   「とてつもない逸材。彼女の音は観客の息をつかせぬほどの張り詰めた
    迫力と、触れれば切れてしまいそうな繊細さがあって……」
   「演奏の後、観客はしばらく拍手することすら忘れる。
    動けないのだ。自分の中にまだ鳴り響く美しい音を邪魔するのが怖くて。」



387 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:26:10 ID:Ost7713A
NYでの初公演で、一気に彼女の評価が高まった。この記事を書いた評論家の言葉と
俺が彼女のピアノに持つイメージに初めは違和感を抱いたものの、きっと
新たな自分の音を見つけ出したのだろうと納得した。
その後も彼女は高い評価を受けている。
そして今、俺はそのことを素直に喜べるようになった。

ソファにもたれて手に取った雑誌をパラパラとめくる。やがてあることに気付き、
もう一度、今度は慎重にページを拾った。

やはり、無い。

2ヵ月後に予定されていたR管の演奏を告げる記事の中に、野田恵の名前は無く。
演目もピアノ協奏曲から交響曲に変更されていた。


388 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:27:19 ID:Ost7713A
2.手に入れるコト、失うコト

ピアノの前に座って、どうしてなのかな、と考える。
どうしちゃったのかな。
どこから違っちゃったんだろう。
私の、音って、どんなだった?

目を瞑ると、蘇ってくるのは音楽ではなくて。
机の上に置かれた、一枚のメモ。
「ごめん」
そんなこと、言わないで。
「ちゃんと、笑って『がんばってこい』と送り出したいから」
そんな資格、ないんです。
「待ってて」
だって、先に手を離したのは、私なんだから。

――ピアノを、感情を誤魔化す道具にしては、イケナイヨ。

ゴメンナサイ。ゴメンナサイ。ゴメンナサイ。
お願いだから、私から音楽まで奪わないで。
祈っても。懇願しても。

答えてくれないピアノの蓋は、閉じられたまま。


389 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:29:04 ID:Ost7713A
3.満ち欠け

どういうことだ?
アイツの頑張りようは風の便りや紙面上からでもよくわかる程で。
こなした数々の演奏は、そのすべてが成功の輝きに満ちていて。
降ろされることなどありえない。ましてや日程も間近に迫っているというのに。
何か、あったのか!?

急いでパソコンを起動し、ネットに繋ぐ。
胸騒ぎをどうにか静めようとするけれど、悪い予感を振り払うことが出来ない。
やがて検索結果がウィンドウに表示され。
俺の背筋に冷たい汗が伝った。

「Megumi Noda 突然の休業宣言」
  12月に予定されていたニューヨークR管の演奏会が急遽、その演目を
  ピアノ協奏曲から交響曲に変更した。さらにピアニスト・メグミ ノダ
  の休業を発表、クラシック界に激震が走った。
  関係者は一切のコメントを控えているが、彼女が事故により再起不能と
  なったという説も出ており……

嘘だろ!? アイツがもう2度とピアノを弾けないなんてこと……。
そんなことあるわけねーだろ!!!


390 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:30:22 ID:Ost7713A
時間を考える余裕もなく、俺は血の気が引いて冷たくなった指先でダイヤルを押す。
規則正しく繰り返される呼び出し音が、いやにゆっくりしていて。
何回目かのコールの後、「はい?」という相手の声を聞くなり語気を荒げた。
「アイツに何かあったのか!? 再起不能……事故って!」
言葉がうまく出てこない自分にイライラする。
俺の言葉に沈黙する相手に、縋るような思いで呼びかけた。「母さん!」
すると、受話器の向こうで一つ、溜息が聞こえた。
「……真一、今何時だと思ってるの?」
「何時って……」
俺は時計を見てから頭の中で計算する。日本は今、昼近くのはずだ。
「日本にいるんじゃないのか? ってそんなことより――」
「今、フランスよ。……のだめちゃんのこと、知ったのね」
事故っていうのは単なる噂だから、と説明する母の言葉に、ひとまず俺は安心した。
けれど――。
「復帰するのは、難しいかもしれない」という母の声が耳に届いて。
わけがわからなくなった。
「復帰が難しいって……。何か、知ってるのか!?」
教えてくれと頼む俺に、しばらく考えるように黙っていた母は静かに言った。
「のだめちゃんは、コートダジュールにいるわ。……私と一緒に」


391 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:31:29 ID:Ost7713A
4.透明な服に身を包み

ド・レ・ミ、と口の中でつぶやいてみる。
音たちは空気に溶けて、すぐに消えてしまった。
追いかけても、もう届かない。
まるで誰かさんみたいだ、と思った。

初めて出会ってから、いつも背中を追いかけてた。
少しでも、追い付きたくて。置いていかれたく、なくて。
疲れて立ち止まったりすることもあったけれど。
差し出された手を拒絶することもあったけれど。
一緒にパリへ留学することになった時、だからすごく嬉しくて。
毎日が、すごく幸福だった。

それなのに。
繋いだ手を離したのは私。

それでも。
私がピアノを弾いているなら。
ずっとピアノを弾き続けていけるなら。
きっと音楽で繋がっていることはできる。

そう、思っていたのに。

これは私の音じゃない。
ずっと気付かないフリをしてきた間に、深まった、溝。
ピアノはもう、その声を私に響かせてはくれない。


392 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:32:47 ID:Ost7713A
5.You say goodbye, I say hello

懐かしいわね、と母は昔家族で住んでいたことのある俺の部屋を眺める。
俺はコーヒーの入ったカップを2つ、リビングのテーブルに用意して、
母に座るよう促した。

深夜の電話でとにかく説明しろ今から行くと必死だった俺に、冷静に話をしたいからと
朝方母は自分から出向いてくれた。その顔にはいつもの快活さがなく
僅かに影を落としている。
それはこの部屋に残る思い出のせいなのか、それとも……。

「ごめんなさいね。あなたもうすぐ公演を控えてるっていうのに……。
 真一を巻き込むつもりなんて、本当はなかったんだけど」
のだめちゃんからも口止めされてたし、と母は視線を落とす。
そんなことはどうだっていい、と俺は首を横に振った。
「それで、アイツは……?」
落ち着いて話をしようとトーンを落とすが、声が震えた。
そんな俺の様子に少し微笑いながら、母はポツリ、ポツリと事の詳細を話し始めた。


393 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:34:05 ID:Ost7713A
「最初はね、小さなことだったの。オケと音あわせをしてる時に、彼女が少し
 首をかしげるようにして。
 気付いたステファンが、メグミ、どうかした? って聞くと
 なんでもないです、って笑って首を振って。
 しばらくは普段と変わりなく演奏してたらしいのよ。
 その後、休憩を取って――」

そこまで話してから、一つ息をふうっと吐いて、続ける。
「時間になってもなかなか戻ってこない彼女を皆が心配し始めた頃。
 扉の前で、真っ青になって立っている彼女がいて。
ピアノ、弾けませんって言ったそうなの。
吃驚したステファンが駆け寄って理由を訊ねても、ただ首を振って
弾けません、音がわからないんですって繰り返すだけで。
そのまま、倒れてしまったの」

「私も連絡を受けたときは驚いたわ。慌ててNYまで駆けつけて。
 とにかく休養させようってことになって」
コートダジュールの別荘に連れて来たのよ、と言って母は俺の顔を見た。
どうして、なんて疑問は、もう無かった。
1年前の出来事が未だに彼女の心を蝕んでいるなんてことは容易に想像がつく。

けれども、納得なんてしない。
俺はクローゼットを開けて出掛ける準備をする。
「ちょっと! どこに行く気!?」
突然の俺の行動に、母は驚きの声を上げる。
「決まってるだろ! あの馬鹿女に会いに行く!!」


394 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:35:23 ID:Ost7713A
6.明けぬ夜に

ピアノを弾きたいと、NYに渡ったはずなのに。
いつのまにか。
ピアノを弾かなくちゃいけない、に変わっていって。
私の音が、どんどん、どんどん、見えなくなった。

それでも。
懸命に音を追いかけて。
手が届かなくても、私から離れていってしまっても。
懸命に、音を、追いかけて。
音楽を楽しむ気持ちが、だんだん、だんだん、無くなっていった。

そこにはただ、絶望だけがあって。

――3ヶ月。それがタイム・リミットだ。
けれど僕は君がNYに必ず戻ってくると、信じて待ってるから。

どうして頷くことができるだろう。
だって私はNYで一度も「演奏」をしていない。
ただ自分の気持ちを誤魔化すためにピアノを弾いて。
大きな拍手にひとり足を竦ませていただけだ。

カチャリと扉の開く音がして。
私はのろのろと首をドアの方向へ曲げる。
征子サンが帰ってきたのかなと思った私の瞳には。

一番会いたくない、けれどもすぐにでも触れたいヒトが映った。


395 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:36:31 ID:Ost7713A
7.嘘つき

相変わらず、飛行機は苦手だ。

ニース空港まで1時間、その間毛布に包まってガタガタ震える俺に、母は笑った。
「そんなに嫌なら、電車にすればよかったのに」
「……5時間もかけてられるか。すぐにでもあの馬鹿を殴ってやらないと
 気が済まねぇ」
素直じゃないわね、と母は呆れた顔をした。

部屋を出た後、ド・ゴール空港へ向かう俺を母は引き止めた。
とても話が出来る状態じゃない、そっとしておいてあげて、と。
ほっといてその後どうなる!? その結果が今じゃないのか!?
俺はもう2度と後悔なんかしたくねーんだよ!!!
怒鳴りつける俺に母は目を丸くしていたが、やがて力強く頷くと
一緒にタクシーに乗り込んだ。
この人も1年前から何か思うところがあったのかもしれない。

別荘に到着したのはまもなく昼になる頃だった。
俺は母に案内されて、1つの扉の前に立つ。
この中に彼女はいるわという母の声に、ゆっくりと息を吸って。
そっとドアノブに手を掛けた。


396 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:38:06 ID:Ost7713A
のだめはぽつんとピアノの前に座っていて。
ドアの開く音にゆるゆると向けられた目は大きく見開かれ。
俺が一歩足を踏み入れると、その肩を僅かにびくりと震わせた。

「……久しぶり」と声を掛け、足を止める。
「お前が嫌なら、これ以上近づかない。だから聞いてくれ」
しばらく間をおいてから、俺は続けた。

「1年前のこと、たぶんお前と同じように、俺もいろいろ考えた。
 もし、あの時、笑って送り出せていたなら。
 もし、あの時、走り去ったお前を追いかけていたなら。
 もし、あの時、……自分の気持ちを素直に伝えられていたなら。
 もっと違う未来があったのかもしれないって」
黙ったまま人形のように動かない彼女に、俺は語りかけるように言う。
「でも、そんなこといくら思ってみても仕方が無いんだよ。
 間違えてしまったことは、もう2度と取り返せない――」
「それでも!」
叫ぶような声で、のだめは俺の言葉を遮る。
「のだめは自分が許せません。……違うんです」そう言ってうなだれる。
「ほんとは、わかってたんです。先輩の気持ち。
 のだめの邪魔にならないようにって、いつも思ってくれてた。
 それなのに、その手を離したのは――」
「そんなのはどっちだっていいんだ。一方が悪いなんて関係じゃないだろ?
 大事なのは……」
そこで言葉を区切って、俺はのだめの側へ足を運び、その細い身体を抱きしめた。
「めいっぱい後悔した後、どうするかってことだろーが」


397 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:39:00 ID:Ost7713A
腕の中で嗚咽が聞こえ、俺は彼女の頭をポンと撫でる。
「もう一度、新しく繋げばいい。今度は絶対離さないように。俺はそう思ってるけど?」
コンチェルトの約束だってあるしな、と言うと、
「……キ」と小さな声が聞こえた。
「何か言った?」
「うぅ……、先輩のウソツキ。近づかないって言ったクセにー」
「嫌?」
ニヤリと笑うと、首をぶんぶん振りながら、うわーん先輩はあいかわらずカズオデスー!
子供のように、泣いた。

ひとしきり泣いた後、のだめは真っ赤な目を擦りながらポツリと呟くように言った。
「……でも、のだめピアノが」
「ばーか」
俺はのだめにでこピンして笑う。
「お前が聴こうとしてないだけだ。じゃなきゃ誰があんな高い評価受けるかよ」
それでも尚疑いの目を向ける彼女に、真剣な顔をして言った。
「信じられないなら、俺の音を聴け。全部、お前にやるから」


398 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:40:26 ID:Ost7713A
8.Because you say love me

私は今、パリの懐かしいアパルトマンにいる。

先輩の、半ば強引に引っ張る手をどうにか離さないように小走りで
コートダジュールの別荘を出るときに、荷物のことを思い出してあわてた。
「全部、あとで届けてあげるから」
征子サンは腕を組んだままにこやかに手を振り、私は引きずられるままに
ただペコリと頭を下げた。

先輩は躊躇する私を当然のように部屋に向かえ入れ、「好きなように使え」と言った。
生成りのソファーに、たくさんの本が並べられている本棚。
四人がけのテーブルに、お気に入りのマグが入ったカップボード。
そして、ちょっとだけ染み付いたタバコの香り。
よく知るままのその様子に、鼻の奥がツンとして。
「何泣いてんだ」と笑われた。

彼は今、シャトレ劇場で演奏している。

5日間の日程で行われるコンサート。そのすべての日付がそれぞれ印刷されたチケットを
手渡しながら、先輩は言った。
「聴きに来い。待ってるから」
こんな時期に私をここまで連れてきてくれたことに吃驚して。
彼の言葉をすごく嬉しく思って。
けれど、私の足はどうしても、コンサートホールに向かなかった。


399 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:41:10 ID:Ost7713A
結局3日間、ホールに顔を出すことはなかった私を、先輩が責めることはなく。
疲れて帰ってきたはずなのに、ただ優しく微笑んで。
「おやすみ」と言って私をベッドに送り出し、自分はソファーにその身を横たえる。
私はソファーでいいからと訴えても、笑って首を振るだけで。
何をやってるんだろう、と一人呟いた。

朝というには遅い時間に起き上がってリビングに行くと、すでに先輩の姿はなく。
テーブルにはいつものように朝ごはんが出来上がっていた。
私はもそもそと食事をしながら、時計の針を見つめる。
あと、7時間。

ぼんやりと過ごしていても、私の視線は時計を捕らえ。
やがて日が翳り始めて窓から見える街並みが赤く染まる頃。
私はコートを掴んで外に出た。


400 名前:あなたの音…/842[sage]:05/03/01 20:41:59 ID:Ost7713A
劇場の前にある広場で、いつものように私の足が止まる。
開場時間になると、人々は流れを作って中に入っていき。
私は劇場に背を向けてベンチに腰掛けた。
やっぱり、怖い。足が竦んで、動けない。
寒さだけではない理由から震える両手に息を吹きかけていると。
「ココが、キミの指定席かい? のだめチャン」
後ろから声を掛けられた。

「……ミルヒー」
振り返って顔を見ると、彼はニコニコと微笑んでいて。
「先輩の演奏、もう始まってますヨ」
と言う私の言葉に首を振って、昨日聴きましたカラと言った。
「のだめチャン、チアキの音楽を聴いてあげて下サイ」
私の隣に腰を下ろして、ミルヒーはぽつりと言う。
「彼の音は、キミへの想いがいっぱい溢れているヨ」
聴いてるこっちが恥ずかしくなるくらいにネ、と片目を瞑った。
「でも、……怖いんデス」
「怖い?」
「これでもし、のだめの音がわからないままだったら……」

アハハハハッ、とミルヒーは私の言葉を笑い飛ばす。
「そんなコトは絶対にナイヨ。だってキミの音もまたあそこにある」
そうして指差した先は、シャトレ劇場。
首を傾げる私に、キミならわかるはずだヨと優しい眼差しを向けた。
「キミ達は不器用で、見ていてハラハラするケド、少し羨ましいネ」

立ち去るシュトレーゼマンの背中を見ていた私に。
ほんの一瞬、先輩の指揮するオーケストラの音が届いたような、気がした。



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